私人の公金の取扱、クレジットカード等の納付について|公務員の金銭会計

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私人の公金の取扱、クレジットカード等の納付について|公務員の金銭会計

1 私人の公金の取扱について

地方自治法第二百四十三条の規定により、普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがある場合を除くほか、公金の徴収若しくは収納又は支出の権限を私人に委任し、又は私人をして行わせてはならないこととなっています。
これは、公金は広い意味で住民財産であることから、取扱い上の責任を明確にし、公正な確保が要求されるためです。しかし、公金の中には、私人に公金を取り扱わせたほうが便宜的でもある場合があります。そこで、同条では、私人に公金を取り扱わせても責任関係が不明確とならず、公正な取扱いが可能なものを法律又はこれに基づく政令によって掲げることとし、この範囲において例外的に私人に公金の取扱いを認めることとしています。

 

(1) 私人が取り扱うことができる公金の範囲

@ 次の歳入は、その歳入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認められる場合に限り、私人にその徴収又は収納の事務(※、※2)を委託することができます。これにより、施設使用料、自転車駐車場使用料、住民票の写し等交付手数料(いわゆる「コンビニ交付」を委託。)、レンタサイクル使用料、自転車撤去手数料、廃棄物手数料等の収納事務を私人に委託することができます(地方自治法施行令第百五十八条第一項)。
ア 使用料
イ 手数料
ウ 賃借料
エ 物品売払代金
オ 寄附金(※3)
カ 貸付金の元利償還金
※ 徴収の事務の委託とは、調定から収納までを委託します。ただし、督促状の発行、延滞金等の徴収及び滞納処分並びに納入通知処分に係る処分はできません。具体的には委託された公金の収入に係る調定、納入の通知書の発行及び収入の受け入れ事務を行います。また、納入の通知書の発行者は、その委託を受けた者となり、収納の際の領収印は、その委託を受けた者の印鑑を捺印させることとなります。このため、徴収の事務の委託とは、歳入徴収者や金銭出納員等の権限の委任に近いものとなっています(行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日自治丁行発第 93 号))。
※2 収納の事務の委託とは、事実上の公金の収納事務をいいます。また、収納の際の領収印は、日付の外、収納事務委託者の顕名及び受託者名が表示された印を押印させます。
※3 寄附金とは、平成 23 年の地方自治法施行令の改正により新たに加えられたものです。この改正は、いわゆる「ふるさと納税」に係る寄附金の創設等に伴い、全国からの寄附について、コンビニエンスストアなどでも収納の委託の事務ができるようにしたものです(地方自治法施行令第百五十八条第一項、地方税法第三十七条の二第一項第一号・第三百十四条の七第一項第一号)。
※4 歳入の徴収又は収納を委託できる歳入の種類などは、条例、規則等でその範囲を拡大することはできません(行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日自治丁行発第 93 号))。
A 普通地方公共団体の歳入のうち、地方税は、その歳入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認められる場合に限り、その収納の事務を適切かつ確実に遂行するに足りる経理的及び技術的な基礎を有する者として、次に掲げる会計規則等に規定する基準を満たしている者にその収納の事務を委託(※)することができます。これは、特にコンビニエンスストア等でこれらの収納の事務を取り扱うことができるようにするために設けられたものです。これにより、市民税、軽自動車税等の収納事務を私人に委託することができます(地方自治法施行令第百五十八条の二第一項)。
※ 他の委託と違い、地方税は、収納の事務のみ委託できるものであることに注意してください。また、収納事務の委託の範囲の解釈は@※2と同趣旨となります。
ア 委託する事務又はこれに類する事務について相当の知識及び経験を有していること。
イ 事業規模が委託する事務を遂行するために十分であると認められ、かつ、安定的な経営基盤を有していること。
ウ 収納金に係る事項を帳簿(電子計算機を使用して作成するものを含む。)によって正確に記録し、遅滞なく事務処理を行う体制を有していること。
エ 個人情報の保護に関して適正な管理体制を有していること。

 

B 次の歳入は、収入の確保及びその納付義務者の便益の増進に寄与すると認める場合に限り、政令の定めるところにより、私人にその徴収又は収納の事務について委託することができます。これは、特にコンビニエンスストア等でこれらの収納の事務を取り扱うことができるようにするために設けられたものです。これにより国民健康保険料、介護保険料等の収納事務を私人に委託することができます(国民健康保険法第八十条の二、介護保険法第百四十二条の二及び高齢者の医療の確保に関する法律第百十四条及び児童福祉法第五十六条第三項)。
ア 普通徴収の方法による保険料の徴収又は収納の事務(国民健康保険法第八十条の二、介護保険法第百四十二条の二及び高齢者の医療の確保に関する法律第百十四条)
国民健康保険料及び後期高齢者医療保険料は徴収の事務を、介護保険料は収納の事務をそれぞれ委託するものとなります。
イ 保育所若しくは幼保連携型認定こども園又は家庭的保育事業等に係る保育料の収納の事務(児童福祉法第五十六条第三項)
※ 国民健康保険料及び後期高齢者医療保険料は歳入の徴収を、介護保険料及び保育料歳入の収納の事務をそれぞれ委託することができます。また、歳入の徴収であっても、契約により、委託の範囲を収納の事務と同範囲とすることは可能です。また、徴収の事務の解釈は@※と、収納の事務の解釈は@※2と同趣旨となります。
※2 歳入の徴収又は収納を委託できる歳入の種類などは、条例、規則等で拡大できません(行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日自治丁行発第 93 号))。

 

(2) 私人に歳入の徴収又は収納の事務を委託しようとし、又は委託した場合の事務

@ 事前の会計管理者との協議について(会計規則第四十三条第一項)
私人に歳入の徴収又は収納の事務を委託しようとするときは、あらかじめ会計管理者と協議しなければなりません。
この協議は、その事務の委託を初めて行う場合は、会計室出納係と事前協議を行い、協議が整った後この委託に係る告示を行う際に、文書決裁の中に会計管理者並びに会計室出納係係長及び主査を協議者に含め決裁を行ってください。
また、前年度に引き続き委託を実施する場合であって、委託内容に変化がない場合は、事前協議を省略して、文書決裁を行うことができます。

 

A 告示及び公表について(地方自治法施行令第百五十八条第二項及び第百五十八条の二第六項、国民健康保険法施行令(昭和三十三年政令第三百六十二号)第二十九条の二十三第一項、児童福祉法施行令(昭和二十三年政令第七十四号)第四十四条の二第一項、介護保険法施行令(平成十年政令第四百十二号)第四十五条の七第一項並びに高齢者の医療の確保に関する法律施行令(平成十九年政令第三百十八号)第三十三条第一項)
私人に歳入の徴収又は収納の事務を委託したときは、市長がその旨を告示し、かつ、当該歳入の納入義務者の見やすい方法により公表しなければなりません。

 

なお、この文書決裁をする際の決裁ルート及び決定関与者区分は、原則として次のとおり設定し、決裁を回付してください。

(承)主管係主査⇒(承)主 管 係 長⇒(承)主 管 課 長⇒(承)主 管 部 長⇒(協)出納係主査⇒(協)出 納 係 長⇒(協)会計管理者⇒(文)文書係主査⇒(文)文 書 係 長⇒(文)総 務 課 長⇒(協)総 務 部 長⇒(承)副 市 長⇒
(決)市 長

※ 決定関与者区分の略称の意味
(承)=承認者・(協)=協議者・(文)=文書審査者・(決)=決定権者

 

ア 告示文について
(ア) 告示の意義とその注意
告示とは、法規の規定又は権限に基づいて行った決定若しくは処分等を広く一般に周知させるために公表する形式をいいます。このうち、私人の歳入の徴収又は収納の事務の委託の告示は、一定の事実を知らせる種類の告示となります。
告示は、法規により告示をすることが定められているため、定められた手続に基づいて告示を行わないと、告示をしたことにはなりません。このことから、根拠法令等を良く確認し、間違いのないように告示をしてください。

 

(イ) 告示文例について
告示文の文例は、次の内容を踏まえ、次頁に掲げる参考の告示文例のとおりとなります。
この委託の告示に係る告示文の文章は、法規に特に定めはありません。このため、文例は、過去の例等及び次の内容を踏まえて示しています。
・ 委託した公金について(公金の名称、その根拠)
・ 委託の種類について(徴収の事務の委託又は収納の事務の委託の別)
・ 委託した時に告示するため、その委託の期間について
・ 納付義務者の取引の安全を図るため、委託を受けた者の名称等について
文章作成時は、法規で定められた既定の文章が無い場合は、告示の根拠となる法規の規定の語句をそのまま引用せず、判りやすい表現に言い換えてください。また、告示する根拠となる規定、告示の内容となる根拠となる規定を本文中に表示すると文章が長くなり、分かり難くなるため、それらの規定は、法令番号を省略して告示の最後に表示するようにしてください。
文章作成をする場合は、参考の告示文例に必ずしも従う必要はありません
が、他の文章を検討する場合は、文書事務の手引等を参考にし、正確かつ納付義務者に分かりやすい文章を心掛けてください。
また、納付義務者の便宜を踏まえ、委託を受けた者の名称から容易に取扱店舗などを推測できない場合などは、必要に応じ、適宜屋号や取扱店舗などを加えてください。

 

【参考】告示文例(文字は 12 ポイント以上で作成してください。)

○○市告示第××号
○○条例第○条に規定する○○手数料の収納事務を次のとおり委託するので、告示します。

 

令和○年○月○日
                           ○○市長 ○ ○ ○ ○

 

1 委 託 期 間 令和○年○月○日から令和○年○月○日まで
2 委託事業者 所在地 ○○市○―○―○
        名 称 ○ ○ ○ ○ 株式会社
        代表者 代表取締役社長 ○○ ○○

 

(根拠規定)○○条例(昭和○年○月○○市条例第○号)第○条
      地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 243 条
      地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)第 158 条第1項及び第2項

 

※ 手数料等公金の名称は、その名称だけでは、納付義務者に分かり難い場合は、分かりやすく文章を工夫してください。また、複数の公金が対象となる場合は、適宜「3委託内容」の項を追加するなどして判りやすく告示してください。

 

イ 公表文について
(ア) 公表の意義とその注意
公表とは、私人の歳入の徴収又は収納の事務の委託の公表については、その意義は告示となんら変わるものではなく、一定の事実を知らせる意義があります。しかし、地方自治法施行令では、具体的には規定はしていないものの、告示に加え「納付義務者の見やすい方法により公表」すべきと規定されているため、告示とは違う方法であって、納付義務者の見やすい方法により公表すべきであると考えます(地方自治法施行令第百五十八条第二項)。
このことについて、行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日(自治丁行発 93 号))では、「新聞、地方公共団体の公報及び広報誌等に掲載して行うものである。」
としています。つまり「公金を実際に取り扱う受託者の窓口に直接表示する方法」、「広報に掲載して行う方法」、「公式ホームページに掲載して行う方法」などにより公表することが考えられます。
公表は、法規により公表をすることが定められているため、定められた手続や趣旨に基づいて公表を行わないと、公表したことにはなりません。このことから、根拠法令等を良く確認し、間違いのないように公表してください。

 

(イ) 公表文例について
公表文の文例は、次に掲げる参考の文例のとおりとなります。
この委託の公表に係る公表文の文面は、法規に特に定めはありません。このため、参考の公表文例の文章は、告示と同程度の内容を例示しています。
文章作成をする場合は、参考の公表文例に必ずしも従う必要はありませんが、他の文章を検討する場合は、告示文に限らず文書の手引等を参考にし、納付義務者に判りやすい文章を心掛けてください。
また、告示と同様納付義務者の便宜を踏まえ、委託を受けた者の名称から容易に取扱店舗などを推測できない場合などは、必要に応じ、屋号や取扱店舗な
どを加えてください。

 

【参考2】公表文例1(受託者の窓口等に掲示する場合。文字は 12 ポイント以上で作成してください。)

 

○○条例第○条に基づく○○手数料の収納事務を次のとおり委託するので、公表します。

 

令和○○年○月○日
                        ○○市長 ○ ○ ○ ○

 

1 委 託 期 間 令和○年○月○日から令和○年○月○日まで

 

2 委託事業者 所在地 ○○市○―○―○
        名 称 ○ ○ ○ ○ 株式会社
        代表者 代表取締役社長 ○○ ○○

 

3 根拠規定 ○○条例(昭和○年○月○○市条例第○号)
地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 243 条
地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)第 158 条第1項及び第2項
○○市会計事務規則(昭和○年○月○○市規則第○号)第○条

※ 手数料の名称を表示する際は、その名称だけでは、納付義務者に分かり難い場合は、適宜補記するなど分かりやすく工夫してください。また、複数の公金が対象となる場合は、委託内容などの項を追加するなどし、列記するなど適宜工夫してください。

 

【参考3】公表文例2(広報又は市公式ホームページに掲載して公表する場合)

○○手数料の収納事務の委託について
○○手数料の収納事務を、令和○年○月○日から令和○年○月○日まで、○○○○株式会社(○○市○-○-○)に委託したので、地方自治法施行令の規定により公表します。問(◎◎課)◎◎係?0000-0000

※ 手数料の名称を表示する際は、その名称だけでは、納付義務者に分かり難い場合は、正式名称に拘らず、又、適宜補記するなど分かりやすく文章を工夫してください。

 

(3) 再委託の禁止

歳入の徴収又は収納の事務の再委託は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがある場合を除く外、「再委託ができるという法令上の明確な根拠がない限り許されない。」(地方自治法逐条解説(第一法規株式会社))と解釈されます。そのため、再委託とならないよう注意する必要があります。
地方公共団体が行っている歳入の収納の事務の委託であって、一見再委託に見える事務については下記のQ&Aを参考にしてください。(地方自治法第二百四十三条)。

 

1 Q&A コンビニ交付は再委託に当たるのではないでしょうか。
2 Q&A コンビニ収納と再委託

 

(4) 委託を受けた者が歳入の徴収又は収納を実際に行った場合の事務

@ 徴収し、又は収納した歳入の取扱い
委託を受けた者が徴収し、又は収納した歳入は、その内容を示す計算書(※)を添えて、公金取扱金融機関に即日又は翌日に払い込まなければならないものとします(地方自治法施行令第百五十八条第三項、国民健康保険法施行令第二十九条の二十三第二項、児童福祉法施行令第四十四条の二第二項、介護保険法施行令第四十五条の七第二項、高齢者の医療の確保に関する法律施行令第三十三条第二項)。
※ 計算書には、記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、電磁的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を含みます

 

※2 即日又は翌日に計算書を添えて払込みをさせる理由は、行政実例で「委託を受けた私人が歳入の徴収又は収納を行った時点で、普通地方公共団体に対する納付義務者の納入の義務は、消滅する」こととなるため、早い段階で納入の事実を把握する必要があるからです(行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日(自治丁行発第 93 号))。
※3 徴収又は収納の事務の委託を受けたものの収入の会計年度所属区分も、市が直接調定し、又は収納したものとみなして、地方自治法施行令第百四十二条に規定する会計年度所属区分に応じて判断します。
※4 徴収又は収納の事務の委託を受けた者が、その収納した現金を紛失等した場合は、その者が金銭出納員等の権限の委任に近い委託であるとはいえ、地方自治法の規定による賠償責任は負うことはありません。ただし、民法上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負うこととなります(地方自治法第二百四十三条の二、行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日自治丁行発第 93 号))。
※5 「徴収又は収納の事務の委託を受けたものが保管している収入から生じる利子等は、普通地方公共団体の収入となります」(行政実例(昭和 38 年 12 月 19 日自治丁行発第 93 号))。この趣旨は、「地方自治法逐条解説」(第一法規株式会社)では、委託を受けた者が受け入れた収入は、その納付を受けたときから公金としての性格を有することとなり、「その後は当該地方公共団体の公金として財務規則等に従って管理されるものである。」としていることから、「その委託を受けた者の預金口座に預金しておくことは、地方公共団体の公金たる現金の管理の一部分をなすものと考えられるので、そこに生じた利子は当該地方公共団体に帰属すべきものと考える。」と解説しています。また、この収入の歳入予算は、財政課との協議となりますが、地方自治法逐条解説によれば、「諸収入-預金利子-預金利子歳計現金等利子」とするのが適当であると解説しています。
※6 ※5後段にある「当該地方公共団体の公金として財務規則等に従って管理されるものである。」との趣旨から、その委託を受けた者の預金口座の種別については、ペイオフ完全実施に伴い、原則決済用普通預金とすべきことはいうまでもありません。

 

A @に関わらず即日又は翌日に払い込むことのできない歳入の取扱い
次の歳入の払込日は、会計管理者と協議の上、その払い込みの日をそれぞれの委託契約で定めています。この場合であっても@※にある趣旨を踏まえた対応をすべきことは言うまでもありません。
ア 有料粗大ごみ処理券及び有料ごみ処理券に係る廃棄物処理手数料を徴収する事務の委託を受けた者が徴収した廃棄物処理手数料
イ 地方自治法施行令第百五十八条の二第一項の規定により市税を収納する事務の委託を受けた者が収納した市民税
ウ 国民健康保険法第八十条の二の規定により国民健康保険料を徴収する事務の委託を受けた者が徴収した国民健康保険料
エ 介護保険法第百四十四条の二の規定により介護保険料を収納する事務の委託を受けた者が収納した介護保険料
オ 高齢者の医療の確保に関する法律第百十四条の規定により後期高齢者医療保険料を徴収する事務の委託を受けた者が徴収した後期高齢者医療保険料

 

(5) その他委託する歳入の徴収又は収納の事務の処理について必要な事項について

ア 歳入の徴収又は収納の事務の委託の委託手数料の支払について(地方自治法施行令第百六十四条)
委託を受けたものが収入した歳入は、原則そのまま市の歳入予算に払い込ませ、反対に市は別に予算化している委託手数料を歳出予算から支出することが原則ですが、必要があれば、委託を受けたものが収入した歳入から、委託手数料相当額を控除し、その差額を市の歳入予算に払い込ませることができます。この支払方法を、「繰替払」といいます。
しかしながら、このままとすると歳入予算と歳出予算とを混交することとなることから、総計予算主義の原則に違反してしまいます。
このため、委託をした者が繰替払をしたときは、金銭出納員は、その委託をした者から、原則領収書その他証拠となる書類を提出させなければなりません(会計管理者との協議により、特に提出させる必要がないと認めるときはこの限りでありません。)
この上で、繰替使用計算書を使用し、収支命令者に提出するものとします。繰替使用計算書の提出を受けた収支命令者は、振替収支命令書により、直ちに繰替使用額の補てんの手続を執ることとなります。この補てんとは、委託手数料を歳出予算から支出し、歳入予算に収入することをいいます。この場合、振替収支命令書によって振替整理することとなります。
なお、繰替払をするときは、事前に会計室に協議した上で実施してください。

 

イ その他委託する歳入の徴収又は収納の事務の委託について必要な事項の定めについて
(1)から(4)までのほか、委託する歳入の徴収又は収納の事務の処理について必要な事項は、委託契約で定めるものとします。

 

(6) 委託に係る歳入の徴収又は収納の事務の検査

@ 使用料等の歳入について
歳入の徴収又は収納の事務を私人に委託した場合、会計管理者が、必要があると認めるときは、当該委託に係る歳入の徴収又は収納の事務について検査することができます(地方自治法施行令第百五十八条第四項)。

 

A 地方税の歳入について
普通地方公共団体の歳入のうち、地方税について私人に委託した場合、会計管理者は、その受託者について、定期及び臨時に地方税の収納の状況を検査し、その結果に基づき、受託者に対して必要な措置を講ずべきことを求めることができます。
また、監査委員はこの検査について、会計管理者に対し、報告を求めることができることとなっています(地方自治法施行令第百五十八条の二第三項から第五項)。

 

B (1)Bの歳入について
普通地方公共団体の歳入のうち、(1)Bの歳入について私人に委託した場合において、必要と認めるときは、普通地方公共団体は、当該委託に係る歳入の徴収の事務について検査することができます(地方自治法施行令第二十九条の二十三第三項、児童福祉法施行令第四十四条の二第三項、介護保険法施行令第四十五条の七第三項、高齢者の医療の確保に関する法律施行令第三十三条第三項)。

 

2 指定代理納付者(クレジットカード等)の納付について

(1) 指定代理納付者の取扱い

歳入徴収者は、会計管理者とあらかじめ協議した上、指定代理納付者を指定することができます。指定代理納付者を指定すると、その歳入に係る納付義務者が、クレジットカード、電子マネーなど(以下この項において「クレジットカード等」といいます。)を提示等し、市がそれを承認することにより、当該指定代理納付者に当該歳入を支払うことができます。
しかしながら、その場では実際に市は現金を受領することができないため、市が別に指定する期日までに当該指定代理納付者が当該歳入を支払った場合に限り、クレジットカード等を提示等し、市がそれを承認した日に、その歳入に係る納付があったものとみなされる仕組みとなっています。
つまり、クレジットカード等の決済を行った日を「領収日(承認日)」とし、指定代理納付者が、市にその歳入を納付した日を「納付確定日」とし、当該地方公共団体は納付を確認し、「納付確定日」に、当該「領収日(承認日)」を遡って有効と扱います。この外、指定代理納付者が扱える歳入の範囲は特に定められていません(地方自治法第二百三十一条の二第六項及び第七項)。

 

図 指定代理納付のイメージ

 

(2) 指定代理納付者の指定

指定代理納付者を指定しようとするときは、会計管理者(会計室出納係)にあらかじめ協議する必要があります。
指定に当たっては、契約書で、納付義務者から納付があった後、市に指定代理納付する日を指定する必要があります。また、当該指定代理納付する日までに指定代理納付者が納付できなかった場合、延滞金が生ずることとなりますが、その支払義務は当該指定代理納付者が負うことになりますが、これは契約で定めなければなりません。この外、その他の不測の事態なども同時に定める必要があります。
その後、指定には告示、公表を必要とします。これらは歳入の委託の例により行います。
変更し、又は取消しがあった場合も同様となります。
この外、指定代理納付者は、次に掲げる要件のいずれにも該当するものに限られることに注意してください。
1 納付事務(納付義務者にかわって歳入を納付する事務をいいます。2において同じです。)を適切かつ確実に遂行することができる財産的基礎を有すること。
2 人的構成等に照らして、納付事務を適切かつ確実に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。
3 収納金に係る事項を帳簿によって正確に記録し、遅滞なく事務処理を行う体制を有していること。
4 個人情報の保護に関して適正な管理体制を有していること。
5 1から4までに掲げるもののほか、会計管理者が必要と認めること。

 

(3) 納税証明書や領収書の交付などについて

地方公共団体が指定代理納付者による納付を承認した時点では、納付が行われた旨の納税証明書や領収書は交付できません(「地方自治法施行令の一部を改正する政令等の公布について」(平成 18 年 11 月 22 日付総務省自治行政局行政課長通知)・「クレジットカードを利用した地方税の納付について」(平成 18 年3月 13 日付総務省自治税務局企画課長通知))。

 

(4) 市で指定代理納付者による納付を導入する場合に必要なこと

(1)から(3)までの外、実際に指定代理納付者を指定する場合は、次の内容についても主管課で良く検討をし、いずれも該当する場合に、会計管理者と協議をし、話を進めることとなります。
@ 決済手数料や他の方法との比較などを踏まえ、費用対効果があるもの
A 個人情報の取扱いについて十分留意されているもの
B 承認日時点で、実際に納付がされていない場合でも問題がない歳入であるもの

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