強制執行の種類とは?債権届出の催告書などの流れを解説

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強制執行の種類とは?債権届出の催告書などの流れを解説

1 強制執行とは

 

強制執行とは、裁判所の力を借りて、強制的に債権の内容を実現する手続きである。債権や対象財産の種類によって様々な手続が定められている。

 

金銭債権の強制執行の場合は、基本的に、@)債務者の財産を差押え、A)それを競売等を行って金銭に換え、B)その金銭から配当を受けるという順序で行われ、手続きのパターンは共通する。

 

これに対し、非金銭債権の強制執行の場合は、動産や不動産の引渡し・明渡し請求か、作為・不作為請求か等によって、執行手続は様々である。

 

2 金銭債権の強制執行の種類と特色

 

金銭債権の場合、強制執行の対象となるのは原則として債務者の全財産であるが、その財産の種類によって次の3種類に分けられる。

 

(1)不動産執行

 

土地、建物等の「不動産」を対象として、強制競売と強制管理の方法によって行われる。不動産執行は、換価金額が大きいというメリットがあるが、時間と費用がかかり、すでに他の抵当権等の優先する担保権が付されている場合は、配当が回ってこないというデメリットがある。

 

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(2)動産執行

 

書画骨董品、商品、家財道具、株券、社債等の「動産」を対象として裁判所に所属する執行官が実施する。動産執行は、早く簡便に行えるというメリットはあるが、高額なものがあれば別として、家財道具や什器類は総じて換価金額が小さく実効性に乏しいことも多い。

 

(3)債権執行

 

預金、給与、家賃、売掛金、その他(特許権等)のものを対象として裁判所が実施する。確実な金銭債権が見つかれば簡易・迅速な回収につながるが、それらを発見するのが困難な場合が少なくない。

 

3 債務名義

 

債務名義とは、強制執行によって実現される請求権が存在することを公証する法定の文書である。債務名義の存在は強制執行の要件となる。

 

債務名義は、民執法22条に列挙されており、主に次のようなものがある。

 

@)確定した判決

 

A)仮執行宣言の付いた判決

 

B)仮執行宣言の付いた支払督促

 

C)執行認諾文言の記載のある公正証書

 

D)確定判決と同一の効力を有するもの(和解調書 調停調書等)

 

4 執行文の付与

 

債務名義には、執行文を付与してもらう必要がある。執行文とは、債務名義記載の請求権が、債務者に対して現に執行できるものであることを公証する文言で、裁判所書記官や公証人に対して申し立て、判決や公正証書等の債務名義正本の末尾に付記してもらう。

 

5 送達証明書の添付

 

強制執行の開始には、債務名義が債務者に送達されていることが必要であることから、裁判所や公証役場に申請して送達証明書をもらい強制執行申立書に添付する。

 

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6 裁判所のホームページ

 

「東京地方裁判所民事第21部lnformation21」というホームページがある(「東京地方裁判所民事第21部」をキーワードとして検索する。)。申立てにあたって必要な情報が詳しく掲載されているので、是非、利用されたい。

不動産執行〜強制競売〜

1 意義

 

強制競売とは、債権者が判決等の債務名義を取得して、それに基づいて債権者が不動産執行の申立てをすることにより目的不動産を差し押さえて債務者の財産の処分権を奪った後、売却し、その代金から債権の回収を図る手続きである。

 

2 手続きの概要

 

(1)申立て

 

1)担保余力の有無の確認

 

無剰余競売の場合には、執行申立が無駄になる可能性があるので、申立て前に担保余力を確認する。

 

2)申立書

 

不動産強制競売申立ては、「強制競売申立書」を提出して行う。記載事項は次のとおりである。

 

a)債権者、債務者及び代理人の表示

 

b)債務名義の表示

 

c)強制執行の目的とする財産の表示及び強制執行の方法

 

d)請求権の一部について強制執行を求めるときは、その旨及び範囲

 

3)添付書類等

 

a)不動産登記簿謄本(1ケ月以内のもの)

 

@)土地・建物の一方の申立ての場合でも両方共必要

 

A)物件が敷地権付区分所有建物である場合、敷地たる土地の登記簿謄本も必要

 

B)物件が区分所有建物の底地の共有部分で敷地権登記がされていない場合、底地の登記簿謄本のほか共同人名票又は共有者証明書も必要

 

C)目的不動産が更地である場合、その旨の上申書が必要

 

b)代理人指定書

 

c)資格証明書(債務者が法人の場合、代表者事項証明書や商業登記簿謄本などの全部事項証明書)

 

d)公課証明書又は非課税証明書及び写し(執行官・鑑定人用2部)

 

e)債務者の住民票

 

f)物件案内図(住宅地図など、執行官・鑑定人用2部)

 

g)公図及び写し(原寸大にコピー、執行官・鑑定人用2部)

 

h)建物図面及び写し(原寸大にコピー、執行官・鑑定人用2部)

 

i)債務者・所有者の住民票

 

j)債権者一覧表・宛名ラベル

 

k)不動産競売の進行に関する照会書3部

 

l)事件進行に有益な資料各3部

 

@)地質調査報告書

 

A)地積測量図

 

B)対象外建物に関する資料

 

C)建物の土地利用権原に関する資料

 

D)物件を占有している債務者・所有者以外の法人の商業登記簿謄本

 

E)土壌汚染の有無についての調査データ

 

m)目録

 

@)当事者

 

A)請求債権

 

B)物件

 

4)申立費用

 

a)印紙

 

4,000円

 

b)郵便切手

 

郵便切手の額・内訳は各裁判所により異なる。

 

c)登録免許税

 

登録免許税が必要となっているが、自治体による申立てであれば不要(登録免許税法4条T)。

 

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d)予納金(東京地裁の場合)

 

2,000万円未満        60万円

 

2,000万円以上5,000万円未満 100万円

 

5,000万円以上1億円未満   150万円

 

1億円以上          200万円

 

5)管轄

 

不動産所在地を管轄する地方裁判所(民執法44条)

 

(2)発令

 

手続的に問題がなければ申立ての翌々日に競売開始決定が発令される(民執法45条)。

 

裁判所から登記所へ差押えの登記嘱託がなされる(民執法48条)。

 

差押登記が行われると差押えの効力が生じ、以後債務者による不動産の処分が禁じられる。但し、債務者の使用収益は許される(民執法46条U)。

 

(3)配当要求終期の決定・公告

 

配当要求の終期の公告が裁判所の掲示場その他裁判所内の公衆の見やすい場所に掲示される(民執法49条)。

 

配当要求の終期は、目的不動産が売却されるまでは3ケ月毎に更新されていくので、債権者はその間においては申立てをすることができる。

 

(4)債権届出

 

配当要求の終期の決定がなされると、債権届出の催告を受ける(民執法49条U)。

 

債権届出の用紙は、催告書に同封されているので、その用紙に記入すればよい。

 

(5)現況調査・評価

 

執行官による不動産の現況調査、不動産評価人(不動産鑑定士)による評価がなされる(民執法57条、58条)。

 

執行裁判所は、執行官の現況調査報告書、評価人の評価書に基づいて売却基準価額を決定する(民執法60条)。

 

(6)物件明細書の作成

 

現況調査報告書、評価人の評価書等から不動産の売却条件が確定し、執行裁判所が物件明細書を作成する(民執法62条)。

 

物件明細書は、現況調査報告書及び評価書とともにその写しが一般の閲覧に供される。

 

(7)売却

 

売却方法は、裁判所が裁量によって決めるが(民執法64条)、通常「期間入札」の方法が採られ、日刊新聞等で売却広告がなされる。入札期間内に売却基準価額以上で最高の価額を入札した者が「売却許可決定」によって買受人に決まる。

 

買受人が代金を納付すればその時に競売不動産の所有権を取得する(民執法79条)。

 

(8)配当等

 

買受人が売却代金を納付すると不動産の所有者となり、債権者が1人である場合や2人以上でも全債権者の債権・執行費用を全額弁済できる場合には、弁済金交付(売却代金の債権者への交付)がされる(民執法84条T)。

 

これに対し、2人以上の全債権者の債権・執行費用を弁済できない場合や租税債権者から交付要求等があった場合は、一定の基準にしたがって配当手続(分配手続)が行われる(民執法84条T)。

 

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(9)配当期日等の呼出し及び計算書提出

 

配当期日又は弁済金交付日は、代金納付日から原則として1ケ月以内の日に指定される。

 

配当期日が指定されたときは、裁判所書記官から各債権者に対し、債権の元本・配当期日までの利息・遅延損害金・執行費用の額を記載した計算書を1週間以内に提出するよう催告される。この催告書は配当期日呼出状と一体になっている。

 

計算書は裁判所の送付する書類を使用して届け出ればよい。

 

(10)配当金の受領

 

配当金や弁済金の交付等の具体的事務は裁判所書記官が担当する。債権者が配当金や弁済金の支払いを受けるには、裁判所から交付される配当金等の支払請求書を裁判所書記官に提出する。

 

なお、配当期日に裁判所に出頭せず、銀行口座に振り込み送金を受ける場合には、支払請求書に口座番号を記載して請求する。

 

 

不動産執行〜強制管理〜

1 意義

 

不動産に対する強制執行の一種で、家賃・地代等の不動産の収益をもって債務の弁済にあてる執行方法である。強制管理により、債務者は不動産の収益機能を奪われる。

 

強制管理の申立てができるのは、債務名義を有する者及び仮差押債権者に限定される。

 

2 特徴

 

不動産の収益は、個別の債権執行により差押えをして換価できる場合もあるが、強制管理によると、債権者は不動産の収益に対し個別の執行をする煩を免れながら満足を得ることができるという利点がある。

 

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3 手続きの概要

 

(1)申立て

 

a)申立書

 

不動産強制管理の申立ては、「不動産強制管理申立書」を提出して行う。記載事項は次のとおりである。

 

@)債権者、債務者及び収益の給付義務を負う第三者並びに代理人の表示

 

A)債務名義の表示

 

B)強制執行の目的とする財産の表示

 

C)請求権の一部について強制執行を求めるときは、その旨及び範囲

 

D)請求債権の表示

 

実務上は、申立書本文に、当事者目録、請求債権目録及び物件目録を綴じ込み一体として作成する。

 

b)添付書類

 

@)代理人指定書

 

A)資格証明書(債務者や第三者が法人の場合、代表者事項証明書や商業登記簿謄本などの全部事項証明書)

 

B)執行力のある債務名義の正本

 

C)送達証明書

 

D)不動産登記簿謄本

 

E)公課証明書

 

c)申立費用

 

印紙代や郵便切手の額・内訳は各裁判所に問合せされたい。

 

d)管轄

 

不動産所在地を管轄する地方裁判所(民執法44条)。

 

(2)申立て後の手続きの流れ

 

裁判所が、強制管理開始決定により、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し収益の処分を禁止し、及び収益の給付義務を負う第三者があるときは、その第三者に対し収益を管理人に給付すべき旨を命じる(民執法93条)。

 

裁判所は、開始決定と同時に、管理人を選任する(民執法94条)。

 

管理人は不動産を管理し、賃料等を取り立て、租税・公課、強制管理に要する費用を控除した残額について債権者に配当を実施する(民執法95条、107条)。

 

 

債権執行

1 意義

 

債務者が第三債務者に対して有する債権を差し押さえて、第三債務者から直接支払を受けることにより債権の回収を図る強制執行手続である。債権執行の対象債権としては、預貯金、給料・賞与、地代・家賃、売掛金や貸付金等がある。

 

債権は、特に確実な金銭債権が判明している場合は、簡易・迅速な回収が可能となる点で強制執行の対象としては大変貴重なものである。

 

なお、生活保護費、失業給付金、給料の一部等、債務者の生活保障のために差押えが禁止されている債権(民執法152条)があることに留意しておく必要がある。

 

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2 手続きの概要

 

(1)申立て

 

a)申立書

 

債権執行の申立ては、執行裁判所に「債権差押命令申立書」を提出して行う。記載事項は次のとおりである。

 

@)債権者、債務者、代理人及び第三債務者の表示

 

A)債務名義及び請求債権の表示

 

B)金銭債権執行の目的となる財産(差押債権)の表示

 

C)求める強制執行の方法

 

金銭債権執行を求める旨記載する。

 

実務上は、申立書本文に、当事者目録、請求債権目録及び差押債権目録を綴じ込み一体として作成する。

 

b)添付書類

 

@)執行力ある債務名義の正本

 

A)送達証明書

 

B)代理人指定書

 

C)資格証明書(債務者や第三債務者が法人の場合、代表者事項証明書や商業登記簿謄本などの全部事項証明書)

 

D)目録

 

当事者目録、請求債権目録及び差押債権目録の余部。

 

添付数は、債権者、債務者及び第三債務者がそれぞれ1名のときは各目録について5部である。いずれかが1名増えるごとに各目録を1部ずつ追加する。

 

E)第三債務者に対する陳述催告の申立書

 

債権差押命令申立とともに、通常は同時に陳述催告の申立ても行う(民執法147条。)。陳述催告の申立てとは、第三債務者に対して差押債権の存在等について回答を求める申立てである。陳述催告の結果、第三債務者から、裁判所を介して、債権者に、陳述書が送付される。この陳述書には、債権の有無、債権の額、支払意思の有無、支払いを拒む場合その理由等が記載される。

 

c)申立費用

 

@)印紙

 

1人の債務者に対して1通の債務名義で申し立てる場合4,000円。

 

同一債務者に対して複数の債務名義で1通の申立書で申し立てる際には1債務名義ごとに4,000円が必要である。

 

なお、第三債務者の数は手数料に影響しない。

 

A)郵便切手

 

裁判所により額・内訳は異なるので、各執行裁判所に問い合わせされたい。

 

d)管轄

 

債務者の住所地を管轄する地方裁判所(民執法144条)。

 

(2)申立後の手続き

 

a)債権差押命令の発令

 

申立てを受けた執行裁判所は、適式な申立てであれば債権差押命令を発令し、債務者と第三債務者(預金なら銀行、給料なら勤務先の会社)に送達する。差押えの効力は第三債務者への送達があったときに生ずる(民執法145条)。

 

この差押え命令によって、債務者は差押債権の取立てや譲渡等の処分が禁止され、第三債務者もその弁済等が禁止される。

 

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b)取立て

 

債権者は、債務者への差押命令の送達後1週間が経過すれば、差押債権を自ら取り立てることができる(民執法155条T)。

 

しかし、第三債務者が供託した場合は、配当(他の債権者と差押えが競合する場合)か弁済金交付という手続きで供託金が分配されることになる。

 

また、第三債務者が任意に支払わない場合には、第三債務者を被告として取立訴訟を提起することになる。

 

c)転付命令の申立て

 

上記以外の方法として、債権者が差押債権をそのまま取得する「転付命令」を申し立てるという方法がある(民執法159条)。転付命令が発令されると、他の債権者が差押えをする隙がないので差押債権を独占できる。

 

もっとも、これにより、差押債権は「券面額」で債権者に移転し、独占的に差押債権を取得できる反面、その後になって取得した債権が実は「不良債権」だったとしても、元の請求債権はすでに弁済したものとみなされるので(民執法160条)、改めて行使することはできないというリスクがある。

 

したがって、転付命令は差押債権が銀行預金債権である等、第三債務者の資力に不安がない場合に利用すべきである。

 

動産執行

1 意義

 

動産を差押え、換価する強制執行手続で、執行機関は執行官である。

 

動産は、特別に高価なものは別として、一般に換価価値が低いものが多いことから、大量ないし高額な商品、現金、貴金属等がある場合は別として、実施に当たっては、費用対効果を十分に見極める必要がある。

 

なお、債務者の最低生活の保障等の観点から差押えを禁止している動産もある(民執法131条)。

 

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2 手続きの概要

 

(1)申立て

 

a)申立書

 

動産執行申立ては、「強制執行申立書(動産)」を執行官に提出して行う。記載事項は次のとおりである。

 

@)債権者、債務者及び代理人の表示

 

A)債務名義の表示

 

B)目的動産の表示

 

C)強制執行の方法(動産執行)

 

D)債権の一部について強制執行を求めるときは、その旨及び範囲

 

E)差し押えるべき動産が所在する場所

 

b)添付書類等

 

@)代理人指定書

 

A)資格証明書(債務者が法人の場合、代表者事項証明書や商業登記簿謄本などの全部事項証明書)

 

B)債務名義の正本

 

C)送達証明書

 

D)動産所在場所の地図(住宅地図など)

 

c)申立費用

 

@)印紙

 

不要

 

A)郵便切手

 

不要

 

B)予納金(東京地裁の場合)

 

基本額:1,000万円以下  3万5,000円

 

1,000万円超過  4万5,000円

 

加算額:執行場所2ケ所以上又は分割債権の場合は基本額の倍額

 

差押えした場合は1万5,000円程度追納あり

 

d)管轄

 

目的動産の所在地の執行官

 

(2)申立て後の手続きの流れ

 

a)差押え

 

申立て後、執行官と面接をして執行日を決め、同日に執行官が所在場所に出向き、執行債権額(請求債権+執行費用)に達するまでの動産を差し押える(民執法122〜124条)。差押財産の特定はその場で執行官が決める。

 

b)売却(換価)

 

差押えが終了した後、別の期日に執行官が差し押えた動産を、通常、競り売りの方法で売却する(民執法134条)。しかし、競り売りに参加する一般人はほとんどおらず、債務者が買受人をたてたり、債権者やその手配した道具屋などが買い取るのが通常のようである。

 

c)配当等

 

執行官が、差し押えた動産を換価し、その売得金の交付を受けると、弁済金の交付又は配当の手続きが行われる(民執法139条)。

 

債権者が1人である場合又は債権者が2人以上であっても売得金で全ての債権者の債権及び執行費用の全部を弁済できるときは、執行官は債権者に弁済金を交付する。多くの場合は、債権者が1人であるので、この手続きになる(民執法139条T)。

 

配当手続も、法律で定まっているが、動産執行で配当手続がなされることは珍しい。

 

d)取下げ

 

動産を差し押えた時点で、債務者が任意に債務を弁済したとき、差し押える価値のある動産が執行場所に存在しなかったときには、動産執行の申立てを取り下げる。

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