連帯保証人や第三者から代位弁済があった場合はどうする?自治体債権事務
1 完納した場合
(1)代位
a)法定代位
弁済をすることについて法律上の利害関係を有する者(連帯保証人や物上保証人など)は、弁済によって当然に債権者に代位します(民法500条)。これを法定代位といいます。借受人本人以外の者が弁済したときは、債権は消滅するわけではなく、当該債権は弁済者に移転します。これを代位といいます。
b)任意代位
弁済について法律上の利害関係を有しない者(例えば、保証人になっていない借受人の父親)も弁済できるが、債務者の意思に反して弁済することはできません(民法474条但書後段)。
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したがって、第三者が弁済する場合、債務者の意思に反しないかどうかを確認してから弁済を受けた方がよいが、確認してからでなければ弁済を受けることができないというわけではありません。通常は意思に反することはないから、債務者から事前に知らされていた場合(例えば、父親が代わりに払うと言っているが、絶対に受け取らないでくれと債務者から言われていた場合)、その他認識し得る事情から客観的にみて意思に反する場合以外は、弁済を受けても後に問題になることは殆どないものと思われます。
法律上の利害関係を有しない第三者も、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債務者のために弁済して債権者に代位することができます(民法499条)。これを任意代位といいます。
通常は、承諾しない理由はないから、よほどの事情がない限り承諾して差し支えありません。よほどの事情とは、代位者が過酷な取立てをすることが明らかですような場合が考えられます。法律上の利害関係がない者からの弁済を受領する義務はありません。それ故、市町村の公的立場からすれば、上記のような事情が認められるときは弁済受領を断った方がいいでしょう。
c)代位の効果
法定代位、任意代位を間わず、債権者が有していた債権は代位弁済者に移転し、代位弁済した者は債務者に求償することができます(民法501条)。この権利を求償権といいます。債権の移転に伴って、これに随伴する権利、即ち、担保権も移転します(同条)。
(2)証書等の返還
代位弁済によって全部の返済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければなりません(民法503条T)。債権者に対し、証書等を交付することにより代位者が求償権を行使するのを容易にしてやる義務を認めたものです。
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当市町村においては、貸付けの際、必ず借用書を徴収することになっており、保証人が完納したときは、借用証書は保証人に返還しなければなりません。法律上の利害関係を有しない第三者が完済したときも同様です。
なお、元利金の支払いが終わっても延滞金が残っている場合には、完納したことにはならないので、証書等の交付義務はありません。
(3)借受人に対する通知
任意代位の場合には、対抗要件としての債務者に対する通知や債務者の承諾が必要です(民法499条U)。それ故、代位弁済を受けた旨の通知を出すべきです。通知の方法は、不送達によるトラブルを避けるため配達証明付き郵便によるのが望ましいです。
これに対して、法定代位の場合は、法律上当然に代位し、対抗要件としての債務者に対する通知や債務者の承諾は不要です。したがって、保証人から代位弁済を受けた旨の通知は、民法上は不要ですが、二重弁済の防止にもなり、通知をした方がよいでしょう。
なお、借受人が所在不明などにより通知書が返戻となった場合は、通知書に所在不明などの理由を書いた付箋を付すなどしてファイルに保存しておくとよいです。
2 一部弁済した場合
(1)代位
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができます(民法502条T)。
債務者の返済が滞り、貸付金の償還金を保証人が納付した場合などがそうです(保証人が償還金を納付し続け、結局、保証人が最後まで支払った場合は上記「完納した場合」にあたる。)。
(2)証書への代位記入
債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は証書にその代位を記入し、かつ自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければなりません(民法503条U)。
しかし、保証人から償還金の納付のあった都度、証書に代位の記入をする必要は、実際にはありません。保証人の求償権を行使しやすくしてやることに趣旨がありますから、前述したように、誰が、いつ、いくら支払いをしたのかをきちんと台帳上管理していれば、保証人に対し、いつでも支払状況を開示できるので、証書に代位を記入する必要はありません。
(3)借受人に対する通知
完納した場合と同様です。