公務員の債権管理を分かりやすく解説!時効、催告、請求、公債権など

公務員の債権管理を分かりやすく解説!時効、催告、請求、公債権など

スポンサードリンク

公務員の債権管理を分かりやすく解説!時効、催告、請求、公債権など

時効が成立しているかの判断方法

債務者の所在が判明している場合は、まずは時効が完成していないものとして扱います。
債務者に面会を求めたり、電話による催告などで、弁済を促します。
それに応じて債務者が一部弁済したり、支払猶予を求めてきた場合は、それが時効中断となるからです。
一方債務者の所在が不明の場合は、決裁権者を交えて、場合によっては弁護士を入れて、検討する必要があります。
詳しくはこちら:時効が完成した場合、自治体は債務者に請求できるのか?

 

 

債務者が破産(免責決定)した場合の対応

破産手続が開始されると、一般債権者は破産手続によらなければ弁済を受けることができなくなります(破産法100条T)。
破産手続外で債務者から口座振替や振込によって入金になった場合は直ちに返還しなければなりません。
債務者に対する免責決定が確定した後、債務者からの支払いがなく、かつ何らの連絡もないときには、債権放棄の手続きを採ることになります。
詳しくはこちら:債務者が破産したとき自治体は請求できるのか?強談威迫にあたる場合

 

 

保証人がいる場合の債務の考え方

保証人の「保証債務」は、主たる債務とは別個独立債務となります。
そのため、主たる債務者に対する時効の中断は保証債務に影響を及ぼさないし、保証人に対する時効の中断は主たる債務に影響を及ぼさない、というのが原則です。
ただし、主たる債務者と保証人とは特殊な関係にあるので、相互に影響することに注意しましょう。
詳しくはこちら:保証債務の時効の起算点は?連帯保証人による時効中断と援用手続き

 

 

無資力要件を認定するための資料

免除や債権放棄、履行延期の特約等の適用要件は、「著しい生活困窮状態」、「無資力又はこれに近い状態」、「当該債務の全額を一時に履行することが困難」であるときですが、これらの要件は以下の資料に基づいて認定します。
(1)申請時に所持している現金の額(20万円以下の場合は記載不要)
(2)申請時に所持している預貯金の額(過去2年以内の取引きの明細がわかるように全ページの写し)
(3)公的扶助の受給(受給している場合には、受給証明書を提出)
(4)申請時の報酬・賃金の額(最近2ケ月分の給与明細、用意できない人の場合は課税(非課税)証明書を提出)
(5)仮に申請時に、勤務先から退職ないし役員退任した場合に支払われるであろう退職金又は退職慰労金の見込額(使用者又は申立代理人作成の退職金計算書を提出)
(6)貸付金、売掛金がある場合には、その額(相手の名前、金額、発生時期、回収の見込みの有無及び回収できない理由を記載する。)
(7)積立金等(社内積立、財形貯蓄、事業保証金)がある場合には、種類、金額、支払開始時期
(8)保険がある場合には、保険会社名、証券番号、解約返戻金の額(保険証券及び解約返戻金計算書の写しを提出)
(9)有価証券(手形・小切手、株券、社債)、ゴルフ会員権などを所有している場合には、種類、取得時期、担保差入れの有無、評価額(証券の写しを提出)
(10)自動車、バイクなどの車両を所有している場合には、車名、購入金額、購入時期、年式、所有権留保の有無、評価額(自動車検査証又は登録事項証明書の写しを提出)
(11)過去5年間において、購入価格が20万円以上の物(貴金属、美術品、着物など)がある場合は、品名、購入金額、取得時期及び現在の評価額(時価)
(12)過去2年間に処分した評価額又は処分額が20万円以上の財産があるときは財産の種類、処分時期、評価額、処分額、相手方、使途(処分に関する契約書・領収書の写し、不動産を処分した場合には、処分したことがわかる登記簿謄本を提出)
(13)不動産を所有している場合には、不動産の所在地、種類など(登記簿謄本を提出、オーバーローンの場合は定型の上申書とその添付資料を提出)
(14)相続財産があるときは、被相続人名、その者との続柄、相続時期、相続財産の内容
(15)事業設備、在庫品、什器備品等があるときは、品名、個数、購入時期、評価額(評価額の疎明資料を提出)
(16)その他、上記に該当しない財産(破産管財人の調査によって回収が可能となる財産、敷金、過払金、保証金等)があるときは、相手方、金額等
詳しくはこちら:無資力要件とは?認定資料は何が必要なのか

 

 

条例に定めがあれば、債権放棄に議決は不要

債権を放棄するには原則として議会の議決が必要です。
しかし「条例」に特別の定めがある場合には議会の議決は不要とされています(自治法96条TI)。
例えば、私債権管理条例で自治体の私債権は、以下の場合に放棄できるとされています。
@債務者が著しい生活困窮状態(生活保護法の適用を受け、又はこれに準じる状態をいう。)にあり、資力の回復が困難であると認められるとき
A破産法253条1項その他の法令の規定により債務者が当該債権につきその責任を免れたとき
B当該債権について消滅時効が完成したとき(債務者が時効の援用をしない特別の理由がある場合を除く。)
C強制執行等の手続きをとっても、なお完全に履行されない当該債権について、強制執行等の手続きが終了したときにおいて債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、弁済する見込みがないと認められるとき
D徴収停止の措置をとった当該債権について、徴収停止の措置をとった日から相当の期間(例えば1年以上)を経過した後においても、なお債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、弁済する見込みがないと認められるとき
詳しくはこちら:債権放棄の手続きとは?議決後の通知書と免除の流れの解説

 

 

法律に定めがあれば、債権放棄に議決は不要

「条例」に特別の定めがある場合には議会の議決なしで、債権放棄できると説明しましたが、
同様に「法律若しくはこれに基づく政令」に特別の定めがある場合も議会の議決は不要とされています(自治法96条TI)
例えば「自治法240条Vに基づく自治令171条の7による免除」はその1つです。
債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約又は処分をした債権について、当初の履行期限(当初の履行期限後に履行延期の特約又は処分をした場合は、最初に履行延期の特約又は処分をした日)から10年を経過した後において、なお、債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができる見込みがないと認められるときは、当該債権及びこれに係る損害賠償金等を免除することができることを定めています。
詳しくはこちら:債権の免除の条件と自治法の規定|無資力の定義と認定の条件

 

 

民事債権(時効10年)と商事債権(時効5年)の違い

民法では、債権の消滅時効期間は10年(民法167条T)、商法では商行為によって生じた債権の消滅時効期間は5年(商法522条)となっており、商行為とは何かが問題となります。
商法501条に列挙されている、手形に関する行為や取引所における取引行為など(絶対的商行為)
商法502条に列挙されている、営業として行う運送、印刷、出版に関する行為など(営業的商行為)
附属的商行為とは、商人がその営業のために設備資金や運転資金を借りる行為など(附属的商行為)
商行為かどうかを判断するには、商人性の有無も併せて検討する必要があります。
詳しくはこちら:商事債権とは?民事債権との違いと商法上の時効などを解説

 

 

民法と地方自治法の時効中断事由の違い

民法に定める時効中断事由は、次の3つです(民法147条)
1 請求(裁判上の請求、支払督促、和解及び調停の申立て、破産手続等の参加、催告(民法149条〜153条)、民事執行法上の配当要求)
2 差押え、仮差押え、仮処分
3 承認(その権利が存在することを知っている旨表示した行為。支払猶予の申込み、債務の一部弁済など)

 

一方自治法では以下のように規定されています。
「法令の規定により、地方公共団体がする納入の通知及び督促は、民法153条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する(自治法236条W)」
民法153条では催告は6ケ月以内に裁判上の請求、差押え、仮差押え、仮処分などをしない場合には時効中断の効力がないとされていますが、自治法ではこれを無視し、民法153条の規定にかかわらず、地方公共団体がする納入の通知及び督促について強力な時効中断の効力を認めています。
詳しくはこちら:時効の中断事由の種類とは?催告、請求など|自治体の債権管理を解説

公務員の債権管理を分かりやすく解説!時効、催告、請求、公債権など記事一覧

1 消滅時効が完成しているか否かの確認当該債権について、消滅時効が完成しているか否かを確認する。一部弁済は時効中断事由になるので、先ず、最終支払日をチェックする。最終支払日を起算点とすると時効が完成している場合であっても、その後の債務者との面会若しくは電話でのやりとりにおいて、債務者が支払猶予や分割納付を申し出ている場合もある。申し出ていたとすれば、それも時効中断事由になる(同上)。2 時効が完成...

1 破産手続中の請求破産手続が開始されると、一般債権者は破産手続によらなければ弁済を受けることができなくなる(破産法100条T)。したがって、破産者に支払いを請求してはならない。ところで、債務者が破産すると、保証人に請求することになる結果、債務者から自分が支払うので保証人には請求しないで欲しいと言われることがある。そのような場合、どのように対処したらよいのであろうか。前述のとおり、破産手続外で弁済...

1 時効期間主たる債務が商事債権であれば、保証債務も商事債権となる(商法3条U)。したがって、その場合の消滅時効期間は5年である(商法522条)。2 時効の中断時効の中断は、当事者及びその承継人の間においてだけ生ずる(民法148条)。保証人の保証債務は、主たる債務とは別個独立債務なので、上記規定により、主たる債務者に対する時効の中断は保証債務に影響を及ぼさない、逆に、保証人に対する時効の中断は主た...

1 資力要件免除や債権放棄、履行延期の特約等の適用要件として、@)「著しい生活困窮状態」、A)「無資力又はこれに近い状態」、B)「当該債務の全額を一時に履行することが困難であるときというのがあるが、これらの要件はどのような資料に基づいて認定すればよいのであろうか。これら認定資料は法規に特に定めがないので、各所管の運用に任されているが、公平性、適正性を担保するため、各所管において標準化することが望ま...

債権を放棄するには原則として議会の議決が必要であるが、条例に特別の定めがある場合には議会の議決は不要である(自治法96条TI)。免除の規定が殆ど利用不可能であることに鑑み、自治体ごとに上記法条を活用して条例に定めることにより、実質的に徴収不能に陥っている債権について、議会の議決を経ることなく、債権放棄することができるようにし、債権管理の合理化、効率化を図ることが望ましい。以下、債権放棄条例の一例を...

債権を放棄するには議会の議決を得ることが原則であるが、法律若しくはこれに基づく政令に特別の定めがある場合は議会の議決は不要である(自治法96条TI)。自治法240条Vに基づく自治令171条の7による免除はその場合の1つである。1 法令の確認(1)自治法、自治令の規定地方公共団体の長は、債権について、政令の定めるところにより、債務の免除をすることができる(自治法240条V)。この自治法の規定を受けて...

商行為とは民法では、債権の消滅時効期間は、原則として10年であるが(民法167条T)、商法では、商行為によって生じた債権の消滅時効期間は、原則として5年としている(商法522条)。そこで、商行為とは何かが問題となる。商行為には3種類あって、@)絶対的商行為(商法501条)、A)営業的商行為(商法502条)、B)附属的商行為(商法503条)の3つである。絶対的商行為とは、商法501条に列挙されている...

自治法は、納入の通知、督促について、時効中断に関し、特別の効力を認めている。ここでは、時効中断についての民法、自治法の規定について説明する。1 民法の規定民法に定める時効中断事由は、次に挙げる3つである(民法147条)。これらの行為が時効中断の効力を持つのは、権利者によって権利主張がなされ((1)と(2))、または義務者によって権利が承認され((3))、そのために時効の基礎たる事実状態の継続が破ら...

法律上又は事実上、徴収不能若しくは徴収困難であることが明らかになった債権については早々に管理の対象から外すことが妥当である。そのような場合、会計上、不納欠損処理を行うが、ここでは、どのような場合に欠損処理を行うのか、欠損処理の方法等について説明する。1 欠損処理が必要な場合(1)債権が弁済及びこれに準ずる行為(相殺、代物弁済等)以外の理由により消滅したとき私債権について時効の援用があったとき、公債...

民法では、時効の効果を発生させるには時効の援用が必要であるが、自治法では、時効の援用は不要としており、放棄もできないとしている。以下、時効の援用、放棄に関する民法、自治法の規定について説明する。1 民法の規定(1)援用権の性質民法は、時効完成によって権利を取得し、あるいは消滅するとしている(取得時効についての民法162条、消滅時効についての民法167条等)。他方、民法は「時効は、当事者が援用しなけ...

民法の消滅時効期間は原則10年であるが、自治法上は5年である。以下、民法、自治法の消滅時効期間について説明する。1 民法の規定(1)原則債権の時効期間は10年である(民法167条T)(債権又は所有権以外の財産権は20年である(167条U))。(2)特則a)民法が定める特則民法には、10年より短い期間を定めたものがある(民法168条ないし174条その他の特別規定)。そのうちの1つに定期金債権がある(...

自治法は、時効に関する原則を定める民法の特別法として、地方公共団体が有する金銭債権及び地方公共団体に対する金銭債権について、いくつかの特則を定めている。まずは民法に定める時効制度の概要について述べる。1 時効の意義時効とは、一定の事実状態、例えば、ある人が所有者であるような事実状態、ある人が債務を負担していないような事実状態などが永続した場合、この状態が真実の権利関係に合致するものかどうか、言いか...

債権管理の上からは取得時効は問題にならない。それ故、本章では、消滅時効に係る事項について説明する。自治法上の債権についても、消滅時効の起算点については民法の規定を準用することになっている。そこで、まず、消滅時効の起算点について説明する。1 原則消滅時効は権利を行使できる時から進行する(民法166条T)。公債権についてもこの規定が準用される(自治法236条V)。スポンサードリンク具体的には、履行期限...

1 意義債務名義を有する金銭債権の債権者の申立てにより、裁判所が債務者に対してその財産内容の開示を命じる制度である。強制執行手続に実効性を持たせるために、平成16年4月から制度化された。これまでは、強制執行の対象財産は、債権者が自分で調べる以外になく、これが見つからなかったり、債務者に隠匿された場合、債務名義を取得して強制執行を実施しようとしても効果が上がらないケースも少なくなかった。2 特徴財産...

支払督促の意義債権者の一方的な申立てに基づきその主張の真否について、実質的な審理をせず書類の審査だけで、簡易裁判所の書記官が支払督促を発する手続です。支払督促は、債務名義を簡易に入手するための手続きと位置づけられます。支払督促のメリットとデメリット支払督促のメリットとして次の点があげられます。@)請求金額の制限がない。A)裁判所に出頭する必要がなく、簡易・迅速・安価に債務名義を取得することができる...

少額訴訟とは少額訴訟とは、少額の金銭請求について、審理手続を簡易化して迅速な裁判を実現する手続きです。通常訴訟と異なる部分について、民訴法に特則が定められています(民訴法第6編)。少額訴訟のメリットとデメリット少額訴訟のメリットとして次の点があげられます。@)手続きが簡易・迅速で、裁判は原則として1回で終了し(民訴法370条T)、その場で判決がなされる(民訴法374条)。A)通常訴訟と異なり、支払...

訴訟とは訴訟の意義訴訟とは、広くは、裁判所が、紛争、又は利害の衝突を強制的に解決調整するために、対立する利害関係人を当事者として関与させて行う法的手続をいいます。通常は、訴えの提起から判決確定にいたる裁判手続を指します。訴訟の特徴訴訟の最大の特徴は、強制的で最終的な解決方法ということです。自主的な納付交渉はもちろんのこと、調停や和解等においても、債務者がそれを受け入れなければ強制することはできませ...

1 個人民事再生手続の概要(民事再生手続の特則であること)経済的に破綻状態にある個人が経済生活の再建を図る方法の一つとして、個人債務者の再生手続を定めた「民事再生法等の一部を改正する法律」が成立し、平成13年4月1日から施行された。上記改正法は、通常の民事再生手続の特則として、@)小規模個人再生に関する特則(以下「小規模個人再生」という。)、A)給与所得者等再生に関する特則(以下「給与所得者等再生...

1 民事再生とは民事再生とは、民事再生法によるすべての個人・法人を対象とする再建型の法的整理手続である。民事再生法(以下「民再」という。)は、小規模個人再生、給与所得者等再生、住宅資金貸付債権に関する特則を設けており、ここではこれらの特則の適用のない通常の民事再生手続について説明する。通常の民事再生は、法人、個人の事業者が破綻状態若しくはそれに近い状態となったときに事業を再生する法的手法として利用...

意義調停とは、裁判所の非公開の調停室において、裁判官または5年以上の弁護士経験者から選任される民事調停官(非常勤裁判官と呼ばれる)と民事調停委員2人で組織される調停委員会の仲介により、当事者双方の話し合いで一定の合意をすることにより紛争を解決する手続きである。特徴調停のメリットとして次の点があげられる。@)調停申立ての手数料(印紙額)は、訴え提起の手数料よりも少額である。A)請求金額の制限がない。...

1 意義即決和解(訴え提起前の和解)とは、裁判上の手続き(訴訟、調停等)を採る前に、当事者双方が裁判所に出頭して、予め当事者間で合意した和解条項について裁判所の判断を求め、裁判所による和解勧告で和解をする手続きである。2 特徴即決和解のメリットとして次の点があげられる。@)即決和解の申立手数料は請求金額の多寡にかかわりなく一律2,000円で足りる。A)請求金額の制限がない。B)金銭の支払請求に限ら...

1 破産手続の概要破産は、債務者が経済的に破綻した場合に、裁判所の監督のもと、破産管財人が債務者の財産を管理し、それを換価処分して全ての債権者に公平に配当し清算する手続きである。裁判所から破産手続開始決定が出ると、債務者は破産者となり、破産開始時に存在した全ての財産の管理処分権を失い、破産管財人が管理処分することになる。債務者にこれと言った資産がないときは換価処分する手続が不要であり、管財人の報酬...

債務者に信用不安が生じたということは、債権を回収できなくなるおそれが増大したことを意味する。そこで、何か財産があれば直ちにこれを押さえておく必要がある。ここでは、その場合に有効な法的手段となる仮差押えについて説明する。仮差押えは保全処分の1つであり、保全処分一般に関することについても若干触れることとする。1 法令の確認地方公共団体の長は、債権を保全するため必要があると認めるときは、債務者に対し、仮...

受任通知の内容の確認受任通知を受領したら、先ず、それを読み、内容を確認します。必要があれば弁護士に電話するなどして、債務者の状況(負債総額、債権者数など)、債務整理に至った事情、今後の処理方針(任意整理、自己破産又は民事再生)などを聞いておけば、今後の対応の参考となる場合があります。履行期限の繰上げ弁護士から債務整理の通知が届いたということは、債務者が支払不能の状態に陥っていることを意味します。し...

債務者が支払不能の事態に陥った場合、他の債権者が先んじて強制執行の手続きを採ったり、債務者自らが破産を申し立てたりすることがある。また、支払不能とは別の理由で、債務者について財産の清算手続きが開始されることがある。ここでは、そのような場合に行う必要のある債権の申出について説明する。1 法令の確認地方公共団体の長は、債権について、債務者が強制執行又は破産手続開始の決定を受けたこと等を知った場合におい...

債務者に信用不安が生じたときは、しっかりとした担保をとって債権を保全しておきたいものである。ここでは、債権保全の必要がある場合に行う担保提供の請求について説明する。1 法令の確認地方公共団体の長は、債権を保全するために必要があると認めるときは、債務者に対し、担保の提供(保証人の設定を含む。)を求めなければならない(自治令171条の4U)。条文上、強制徴収公債権については除外されているので、適用があ...

債務者が履行を遅滞しているということは債務者に信用不安が生じているということである。信用不安が生じた場合、期限の到来を待っていたのでは回収できるものも回収できなくなってしまう。信用不安が生じた場合には、期限の利益を喪失させて残金を一括請求できるようにしたい。ここでは、期限の利益を喪失させる場合だけではなく、履行期限を繰り上げて一括請求できる場合について説明する。1 法令の確認地方公共団体の長は、債...

1 公正証書の意義公正証書とは、本来は、公務員が権限内において適法に作成する一切の証書(公文書)のことをいうが(民法施行法5条)、一般には、公証人が公証人法等の法令に基づいて、法律行為や権利に関する事実について作成した証書のことを指す。2 公正証書の効用公正証書は、高度の証明力を有し、また、強制執行認諾条項を記載した金銭債権については執行力を有し(建物の明渡請求などは不可)、公正証書に基づいて強制...

条例で定めておけば、専決処分により金額が一定額以下の債権については議会の議決なしに和解が可能である。以下、適用上の問題点について述べる。1 専決処分にする場合、履行延期の特約等についての自治令171条の6の要件を満たす必要があるか。条例は法令の範囲に違反しない限りにおいて定めることができることになっているので(自治法14条T)、自治令171条の6に反する専決処分をすることができないとも考えられるが...

履行延期の特約等(自治令176条の6。以下、単に「履行延期の特約」という。)には、所定の適用要件がある。以下に、適用上の問題点について述べる。1 回収の見込みが全くない場合についても履行延期の特約等の措置を講ずることができるか。債務者が無資力又はこれに近い状態にあるときであっても、いずれ支払ってもらうことが前提だから、無資力状態にあって、かつ将来にわたって回収の見込みがないときは、適用がないとも考...

1 目的財産調査は、次のような場合に必要となる。@)貸付けに応じてよいかどうか、即ち、与信審査のため。A)滞納のある債権について履行期限の延期や徴収停止、債権放棄の措置を相当とする場合に、その適否を判断するため。B)滞納のある債権について法的措置を相当とする場合に、強制執行の対象物を探すため。2 調査方法−上記@)、A)の場合その目的からして単に資産のみを調べればよいのではなく、資産から負債を控除...

1 債務の相続相続において、放棄又は限定承認の手続きが取られなかった場合(単純承認の場合)、被相続人の債務は、そのまま相続人が承継する(民法920条)。金銭債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその法定相続分の割合で相続する(大判昭5.12.4、最判昭29.4.8)。連帯保証人が死亡した場合も、各相続人がその法定相続分の割合で分割された連帯保証債務を相続する(最判昭34.6.19参照)。2 死...

納付交渉がうまくいかなかったり、債務者が納付について誠意を示さず、納付交渉にも応じない場合は、原則として法的手続きをとる他はありません。そこで、ここではどのような場合に強制執行等の法的手続きを採らなければならないのかを中心に説明します。1 法令の確認地方公共団体の長は、納期限までに納付しない者に対して督促をした後、相当の期間を経過してもなお履行されないときは、徴収停止又は履行延期の特約等の措置を採...

1 強制執行とは強制執行とは、裁判所の力を借りて、強制的に債権の内容を実現する手続きである。債権や対象財産の種類によって様々な手続が定められている。金銭債権の強制執行の場合は、基本的に、@)債務者の財産を差押え、A)それを競売等を行って金銭に換え、B)その金銭から配当を受けるという順序で行われ、手続きのパターンは共通する。これに対し、非金銭債権の強制執行の場合は、動産や不動産の引渡し・明渡し請求か...

履行延期の特約や専決処分の規定を適用できる場合は、合意を成立させることができます。以下、その場合に留意すべき事項について説明します。1 適用要件の審査(1)申請書及び資料の提出上記規定は公平の原則に適合した運用がなされる必要があり、また、市町村民に対する説明責任の観点からも、その措置は合理的で誰もが納得できるようなものでなければなりません。それ故、上記措置を講ずるには、債務者から申請書を提出させる...

1 「貸金業者ガイドライン」とは金融庁は、監督対象である銀行・保険会社・証券会社等について、それぞれ「事務ガイドライン」を作成していて、「貸金業の規制等に関する法律」の規制対象となる、ノンバンク、商工ローン、消費者金融、クレジット等についてもガイドラインを作成しています。その内容は、登録や届出に関する事項、監督に関する事項、信用情報機関に関する事項、苦情処理に関する事項等多岐に及んでいますが、その...

1 内容証明郵便とは内容証明郵便は、誰から誰あてに、いつ、どのような内容の文書が差し出されたかを謄本によって郵便局が証明するものです。通常、郵便物が「配達された事実」を証明する配達証明と組み合わせて用います。2 使用する場合特定の宛先に対して、特定の内容の文書が特定の年月日に差し出されて配達されたことを証明する必要がある場合、即ち、債権管理の場面においては、請求や督促、時効の中断のための催告、債権...

担保不動産競売1 意義担保不動産競売とは、競売による換価代金から債権の満足を受ける手続きであり、抵当権実行の中心的な方法である。担保不動産競売については、強制競売に関する規定が準用され(民執法188条)、民事執行法に基づき基本的に同一の手続きでなされる。2 強制競売との相違強制競売には債務名義が要求されるが、担保不動産競売では不要である。また、@)抵当権の存在、A)被担保債権の存在、B)被担保債権...

債務者が行方不明になったり、法人である債務者が事業をやめてしまった場合などは事実上徴収ができなくなることが多いです。また、金額が少額で、訴訟等の手段を採ることが経済的合理性に欠けることもあります。そのような場合は、徴収停止の措置を採ることを検討します。1 法令の確認(1)自治令の規定履行期限後相当の期間を経過してもなお完全に履行されない債権について、法人である債務者がその事業を休止し、将来その事業...

債務者が書面又は電話による督促に応じて納付相談を申し出たときは、速やかに納付交渉に入ります。ここでは、納付交渉・納付相談(以下、単に「納付交渉」という。)について説明します。1 納付交渉の重要性納付交渉は、債務者に債務の履行を求め、あるいは、債務不履行の原因、納付意思、収入状況、財産状況の把握等、その後の債権管理を進めていく上で極めて重要です。督促や催告あるいは電話等の呼び出しに応じて,返済につい...

日頃から債務者の返済状況に注意を払い、債務者が履行遅滞に陥った場合には、回収のための措置を速やかに講じていく必要があります。その最初の手続きが督促です。1 法令の確認地方公共団体の長は、債権について、履行期限までに履行しない者があるときは、期限を指定してこれを督促しなければなりません(自治令171条)(*1)。同条は、自治法231条の3第1項に規定する歳入に係る債権については、その適用を除外してい...

償還方法を変更することに合意する場合(これはひとつの和解です。裁判外の和解は、しばしば示談と称される。)、当事者が民間同士であれば、通常、和解するについて何の法律上の制約はありません。しかし、自治体が保有する債権の場合には、法律上の制約があります。滞納金を分納したり、各回の償還金を減額する場合には、本来の履行期限を変更する必要が生ずる。履行期限を延期するためには、その要件を満たしていなければなりま...

1 完納した場合(1)代位a)法定代位弁済をすることについて法律上の利害関係を有する者(連帯保証人や物上保証人など)は、弁済によって当然に債権者に代位します(民法500条)。これを法定代位といいます。借受人本人以外の者が弁済したときは、債権は消滅するわけではなく、当該債権は弁済者に移転します。これを代位といいます。b)任意代位弁済について法律上の利害関係を有しない者(例えば、保証人になっていない借...

収納管理は、市町村と市町村民の間における金銭の授受を伴うものであり、極めて重要な業務ですので、以下、収納管理に関する法規について説明します。1 歳入の調定及び納入の通知地方公共団体の歳入を収入するときは、政令の定めるところにより、これを調定し、納入義務者に対して納入の通知をしなければなりません(自治法231条)。この規定は、公債権、私債権の双方に適用があります。したがって、私債権であってもこの手続...

債権管理の第一歩は、台帳管理、ファイル管理にあります。台帳やファイルの管理は各所管がそれぞれ債権の特性に応じて創意・工夫を重ねてきているところですが、その重要性に鑑み、一般的に留意すべき事項について紹介します。なお、ここで台帳・ファイルの管理とは、その作成、収集、保管、保存、廃棄、分類に関する事務を言います。1 台帳の管理(1)台帳管理に関する私債権管理条例、私債権管理規則の規定首長は、市町村の私...

1 保証人の意思確認の重要性融資を受ける主債務者については、契約に当たって本人が面談に来ていることが大半であり、意思確認や本人確認が容易なことに加え、本人名義の口座から返済が為されるなどの事後的な兆表もあるので、後日、当該本人から「自分は融資を受けていない(融資を受ける意思がなかった)」という主張がなされることは稀です。しかしながら、保証人の場合は上記のような事情がないのが通常であり、契約時に面前...

1 破産免責の意義「消費者金融」などからの借入れによって多重債務者となった個人が自己破産を申し立てた場合、破産手続きが終了してもその人格が消滅するわけではないので、破産手続終了後に当該破産者に対する請求ができてしまいます。しかしながら、これを認めると、破産者の経済的更生が困難になってしまうため、自然人の破産手続に関しては、「免責」制度が設けられており、破産者は、破産手続きによって配当を受けられなか...

期限の利益の喪失とは例えば、1月31日が支払期限の約束でお金を貸した場合、貸主は1月31日が到来しないと借主に対して返済を請求できない。このように、期限が未だ到来しないことによって当事者が受ける利益を「期限の利益」といいます(民法135条)。ところで、貸金の場合、特定の期限に貸金全額を一括で返済するという約束よりも、例えば「毎月末日に10万円ずつの10回払い(総額100万円)」というような分割返済...

貸付条例の多くは当該貸付けをなすに当たり連帯保証人を付けることを要求しています。また、例は少ないですが、抵当権の設定を要求していますものもあります。 連帯保証、抵当権はいずれも履行確保の手段として用いられる担保の一種です。そこで、ここでは、保証及び抵当権の設定に関する基本的な法律事項について説明します。1 (連帯)保証(1)保証人は、主たる債務者がその債務を履行しない場合にその履行の責めに任ずるこ...

公債権は公法上の原因に基づいて発生しますすが(法規や処分等)、私債権は私法上の原因に基づいて発生します(契約、不法行為、事務管理、不当利得)。市町村が保有する債権のうち、強制徴収公債権を除くと、その大部分が貸付債権です。それ故、以下では貸付債権に関する事項について説明します。1 貸付債権の法的性質(発生原因)市町村は多数の貸付条例を有しています。各貸付条例には、資格要件、貸付限度額、返済条件、貸付...

市町村の貸付条例やその施行規則は、貸付資格、貸付要件等、貸付けについての基本的な事項を定めていますが、貸付けを行う際の事務処理方法の多くの部分が各所管の運用に任されています。以下に、貸付業務に関する運用において、気を付けるべきポイントを紹介します。1 事前相談貸付けの申し込みを受け付けるにあたっては、事前に貸付けを希望する者との間で協議することが望ましいです。その際、パンフレットなどが用意されてい...

債権の意義1 自治体が管理の対象としている債権地方公共団体が財産として管理の対象としている債権は、金銭の給付を目的とする権利、即ち、金銭債権です(自治法240条T)。自治法において、地方公共団体の「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいいます(自治法237条T)。公法上の原因に基づいて発生する債権(以下「公債権」という。)と、私法上の原因に基づいて発生する債権(以下「私債権」という。)と...

自治体債権の管理に関する基本法規は自治法及び自治令です。なお、市町村は、私債権のみを規定対象とする私債権管理条例及び私債権管理規則等を制定していることが多いです。同条例、同施行規則も基本法規となります。1 債権管理に関する自治法、自治令の規定(1)債権管理の対象となる債権地方公共団体が財産として管理の対象としています債権は金銭債権です(自治法240条T)。(2)首長がなすべき措置地方公共団体の長は...

スポンサードリンク

トップへ戻る