資金前渡とは|意味、読み方、資金前渡官吏、概算払いの違いを実例で解説

資金前渡とは|意味、読み方、資金前渡官吏、概算払いの違いを実例で解説

資金前渡とは|意味、読み方、資金前渡官吏、概算払いの違いを実例で解説

このページの目次

 

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(1) 資金前渡の意味

資金前渡(読み:しきんぜんと)は、債権者や債務額の確定や及び履行期の到来のうち、一部又は全部が未確定又は未到来である支払である場合などであって、金融機関によらず、直ちに現金払をするのでなければ事務取扱に不便であり、又は支障をきたすような経費について、支出の特例として認められた支払方法となります。
実務を行う職員を資金前渡官吏(読み:しきんぜんと・かんり)と呼ぶこともあります。

 

(2) 資金前渡を受けられる者

資金前渡を受けられる者は、課長、室長、館長及び保育所育の園長などとなります。
ただし、首長が特に必要があると認めたときは、これらの者以外の職員又は他の地方公共団体の職員を指定することができます。
なお、地方自治法施行令では、当該普通地方公共団体の職員とされ、その職員の範囲は、法律上特段の制限はなく、行政実例では、非常勤職員も含まれる(※、※2)とされています(地方自治法施行令第百六十一条)。
※ 行政実例(昭和 40.6.23 自治行第 73 号)
※2 非常勤職員についても個別に辞令を発令すれば資金前渡を受ける事ができる職員となることができます(自治省通知(昭和 38.12.19 自治丁行発 93))。

 

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(3) 資金前渡が認められる経費

@ 外国で支払をする経費

海外出張者が外国において支払う経費をいいます。出張前の準備費用など国内で支払う経費は含みません。

 

A 遠隔の地又は交通不便の地域で支払をする経費

行政実例では、「遠隔の地」とは、地理的、距離的に遠隔した地域をいい、「交通不便の地域」とは、距離的には遠隔でなくても交通の便に欠ける地域をいいます(行政実例(昭和25.5.15))。

 

B 諸払戻金及びこれに係る還付加算金

 

C 報償金、謝礼金その他これに類する経費

その性質上債権者をあらかじめ特定しがたい謝礼金、弔慰金、見舞金などをいいます。

 

D 自動車損害賠償責任保険料等保険料

 

E 官公署に対して支払う経費

「官公署」とは、国の省庁、国会、裁判所、地方公共団体などを差し、公社、公団などは含まれません。

 

F 供託金

 

G 事業現場その他の場所で直接支払いを必要とする経費

「事業現場その他の場所」とは、式典、講習会その他の会合又は催物の場所などをいいます。

 

H 非常災害のため即時支払を必要とする経費

 

I 即時支払をしなければならない物件の購入、修繕、借入れ及び役務に要する経費

その場で直ちに支払いをしなければ、当該物件の購入ができず、その結果、行政目的を達成することができない場合や現場で消費する食料品、電車、バスの回数券の購入や小修繕の役務の調達などがあります。

 

J 国民健康保険の出産育児一時金及び葬祭費

 

K 生活扶助費、生業扶助費その他これに類する経費

生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)及び中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)に係る扶助等をいいます。

 

L 即時支払を必要とする貸付金

生活一時資金貸付金などをいいます。

 

M 交際費

自治省通知では、「交際費は一定金額を定めて定例的に資金前渡する方法は適当ではないが、必要がある場合には、所定の手続により資金前渡の方法によるべきである。」(※)とされています。
※ 自治省通知。昭和40年5月26 日

 

N 講習会又は研究会の参加費その他これに類する経費

 

O 報奨金

 

P 有料道路又は駐車場の利用に要する経費

 

Q 接待又は接遇に要する経費

 

R @からQまでに掲げるもののほか、常時必要とする経費

 

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(4) 資金前渡の方法

@ 毎月必要とする経費又は特定の期間ごとに必要とする経費の前渡

毎月必要とする経費は、毎月分の所要額を予定して、その範囲内において資金前渡します。
ただし、会計管理者が認めた経費は、必要期間分をまとめて前渡できます。このような場合は、あらかじめ会計室に協議してください。
また、これらの経費は、事務上差支えのない限り、分割して行わなければなりません。

 

A 随時必要とする経費の前渡

随時必要とする経費は、その都度資金前渡します

 

(5) 前渡金の管理

資金前渡を受ける者(以下「資金前渡受者」といいます。)は、その現金を確実な金融機関に預金しなければなりません。
ただし、次に掲げるものは現金で保管できますが、その保管には細心の注意が必要です。
@ 直ちに支払いを要する現金
A 一万円未満の現金
B 常時一万円を超える現金が必要な場合で、課長が定める額

 

(6) 資金前渡受者の届出

資金前渡受者は、債権者として押印の必要があることから、その使用する印鑑を会計管理者に届け出なければなりません。
この届出書は、収支命令者の届出書と兼用となっております。

 

資金前渡受者の印鑑ですが、所属によりその職員の職として公印又は職印を保有している場合もありますが、資金前渡による公金の取扱いは、職員個人について取り扱わせることとなることため、私印を届出し、使用する(※)ものとします。
※ 「資金前渡による公金の取扱いは、職員個人について取り扱わせることを原則とするものです。この観点からみると、その資金の領収印は資金前渡職員個人の私印を使用すべきものと言えます。」(地方財務実務提要(ぎょうせい)第二巻P3,392)

 

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(7) 前渡金の支払

資金前渡受者は、債権者から支払の請求を受けたときは、法令又は契約書等に基づき、その請求は正当であるか、資金前渡を受けた目的に適合するかどうかを調査して、債権者へその支払をし、領収書を提出させなければなりません。
ただし、領収書を提出させることが困難な場合は、「支払証明書」をもって代えることができます。

 

@ 領収書について

領収書は、その金額に応じて、次のとおり取り決められています。

 

ア 5万円以上の領収書の必須項目

1件の領収金額が5万円以上の場合は、レシートや屋号のみの領収書では、領収書として認めていません。

 

タイトル

「領収書」と表記してあること。

 

領収金額

資金前渡受者が実際に支払った金額(債権者の領収金額)

 

領収年月日

資金前渡受者が実際に支払った日(債権者の領収日)

 

支払の相手方

法人の場合
・ 所在地及び法人名
・ 代表者の職名、氏名及び代表者印(※)

 

個人商店の場合
・ 所在地及び屋号(店名などをいいます。)
・ 個人名及びその印又は屋号の印
ここでいう印とは、原則スタンパー(ゴム印、ネーム印を含みます。)、印刷による印影や刷り込み印影は認められません。

 

宛名

「資金前渡受者 殿」又は資金前渡受者の役職名

 

内容

件名及び品名

 

収入印紙
適法な収入印紙が貼付され、かつ、消印されていること。

 

※ 「代表者印」とは、法人の実印をいい、その設立登記時に法務局に登録する印鑑をいいます。その形状は丸(印)で、外枠に法人名が、内枠に代表の役職名が入ります。
※2 「法人印」とは法人の認印をいい、社判という場合もあります。その形状は角(印)で、法人名が入ります。
※3 領収書の記載事項に訂正がある場合は、必ず領収者の印で訂正がされていることが条件です。ただし、領収金額の訂正は認められません。

 

イ 5万円未満の領収書の必須項目

1件の領収金額が5万円未満の場合であって、取引の相手方がレシートや屋号のみの領収書(※)を、領収書として交付することが通常である場合は、領収書として取り扱っています。
※ 屋号のみの領収書とは、ゴム印か印刷によって商店名、氏名、住所などが表示されたものをいいます。

 

領収金額

資金前渡受者が実際に支払った金額(債権者の領収金額)

 

領収年月日

資金前渡受者が実際に支払った日(債権者の領収日)

 

支払の相手方

法人名又は屋号

 

内容

件名及び品名

 

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A 支払証明書

支払証明書とは、@の要件を満たした領収書又はレシート(Aにおいて「領収書等」といいます。)を債権者側から受けられなかった場合や求められない特別な事情がある場合などに、資金前渡受者自身がその支払いを証明するものとなります。

 

しかしながら、この支払証明は、その金額を債権者に支払ったという客観的な証拠となりません。
そのため、その他何の書類も受領せず支払証明書で精算に臨んだ場合であって、受領に関する争いが生じたときに、支払証明者にその責任がかかることも考えられます。
このため、出来る限り領収書等を受けることとし、それができない場合は、支払証明書にその支払を証明することのできる書類を添付するようにします。
また、支払証明書の作成をする場合、次の点に注意して作成してください。

 

ア 領収書等がないとしても、資金前渡受者が債権者に対し、その金額を支払ったことが推定できるその他の書類を添付します。
イ 領収書等がないとしても、資金前渡受者が債権者に対し、その金額を支払ったことが証明(推定)できるその他の書類を添付します。
ウ 支払の相手方は、債権者を特定できるように、住所、氏名、団体名などを記載します。
エ 支払者は、実際に支払を行った職員の職氏名を記載します。
オ 領収書を提出できない理由を明確に記載します

 

B ポイントサービスの利用禁止について

前渡金で消耗品等を購入する際に、昨今の商慣行により、そのサービスの一環として、ポイントサービスを実施している店舗などがあります。
ポイントサービスとは、その店舗等により定められた条件により付与されるもので、一定の条件によりポイントを貯めることができ、一般的にそのポイントと引き換えに割引を受け、又は無料で商品と交換するなど特典を受けることができます。

 

しかしながら、この特典を受けることは、その条件により不当利得等に当たる場合があります。

 

また、特典を受けなくても、住民から「個人的に不当な利得を得るのではないか?」という疑念を抱かせる場合もあり、いずれの場合も、公務員倫理上問題となる可能性があるので、個人のカードでの支払は、絶対に行わないでください。

 

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(8) 前渡金に係る契約の履行の検査

資金前渡者が資金の前渡を受けて契約するときは、その所属職員に検査をさせます。
この検査がされたか否かを会計室で審査する場合は、前渡金の精算書に添付する領収書にある「前渡金支払内訳書」の確認及び立会の欄に押印することで確認します。
また、この検査は、通常次に掲げる内容を確認し、又、調査することで行われ、合格した場合は当該確認及び立会の欄に、それぞれ確認者及び立会者がその印を押印します。(押印はシャチハタ印でも可能。確認と立会とは別々の職員。)
@ 購入した品物の品質や数量等の確認
A 相手方からの請求が正当であるかどうかの調査
※ 市側が金額を決定する講師謝礼などの場合以外、全て確認・立会が必要です。

 

(9) 前渡金の精算

資金前渡受者は、以下の表のとおりその前渡金の種類に応じ、当該精算の期限までに精算しなければなりません。
また、残金が生ずる場合、それを戻入し、繰越しし、又は追加資金の前渡を受けることができます。
精算の期限は、会計室へその精算書が到着する日をいいます。このため、精算可能な時点で、速やかに精算書を起票するようにします。
また、精算の期間に休日は含まず、末日が休日に当たる場合は、その翌日となります。

 

毎月分 必要期間分 分割 随時
精算の期限 翌月1日から5日まで 必要期間終了日の翌日から5日以内 支払期日の翌日から5日以内 用件終了日の翌日から5日以内に作成
残金の繰越し 翌月に繰越し可能 精算し繰越し可能 次回に繰越し可能 原則は不可
追加資金前渡 その都度精算すれば可能 その都度精算すれば可能 不可 不可

 

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(10) 資金前渡の制限

前渡金は、原則として精算が終わっていない場合は、それと同一の事項について、重ねて資金前渡を受けることはできません。
ただし、外国で支払いをする経費、遠隔の地・交通不便の地で支払いをする経費若しくは非常災害のため即時支払いを必要とする経費又は緊急やむを得ない場合は、この限りでありません。

 

(11) 給与取扱者に対する資金前渡

給与は、地方公務員法第二十五条や労働基準法第二十四条の規定により、職員に直接通貨で支払わなければならないとされています。
このため、自治体による給与(退職手当を除きます。)、旅費及び児童手当の支払は、支払方法を「窓口払」とし、精算なしの資金前渡の方法によって支給してます。
また、この給与等の事務を取り扱う者を「給与取扱者」として指定しています。
なお、給与取扱者を指定又は変更があったときは、会計管理者へ通知しなければなりません。

 

(12) 資金前渡に係るその他の注意事項

前渡を受けた金額の範囲を超えて支出することはできません。前渡金は、支出負担行為の際に決定した使途と金額に制約されます。
このため、金額が不足する場合は、その資金前渡を取り消して、改めて必要な金額の資金前渡を受けなければなりません。
このとき、絶対に職員個人のお金を加えて支払うなど立替払は禁止されています。
立替払は、支払手続経由の原則に反するばかりか、無断で自治体に債務負担をさせることとなり、重大な違反行為となります。

 

(13)実務上よくあるQ&A

資金前渡とは|実務上よくあるQ&A 〜公務員の財務会計事務解説〜を参照してください。

 

(14)概算払いとの違い
支出の特例とは|資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払、口座振替払を参照してください。

 

 

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