還付未済額、収入未済額、過年度収入等の意味と処理方法を簡単に解説
収入未済額の取り扱い
(1) 収入未済の意味とは
当該年度に調定した歳入で、その年度の出納閉鎖日まで収入されなかったものを収入未済といます。
収入未済額の算出方法は以下のとおりです。
収入未済額 = (調定額−不納欠損額) − (収入済額−還付未済額)
=? 調定額−不納欠損額? −? 収入済額+還付未済額
=? 調定額−収入済額−不納欠損額+還付未済額
収入未済が生じたときには、その未済額を翌年度に繰り越し、以下この例に従って未済がなくなるまで、毎年度繰り越さなければなりません。
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(2) 収入未済額の通知(電子的通知)
収入未済額を繰越すには、財務会計システムで収入未済額繰越決定書を作成することにより、基本的には6月下旬までに会計管理者に通知しなければなりません。
この際、年度は翌年度とします。
収入未済額繰越決定書を作成すると、翌年度の歳入簿の調定額欄に記帳されます。
歳入不納欠損額決定書と同じく、別途原議を作成することは構いません。
還付未済額の取扱い
(1) 還付未済の意味とは
還付未済とは、過誤納金としての還付決定を行ったが、その年度中に還付できなかったものです。
出納閉鎖時の歳入簿の「過誤納額」欄の累計額が還付未済額となります。
還付未済額は、翌年度の歳出科目「償還金利子及び割引料」から支出します。
(2) 還付未済額の通知
還付未済があるときには、決算書にその額を反映させるため、歳入簿で額を確認したうえ財務会計システムで還付未済額通知書を作成し、6月20日までに会計管理者に送付しなければなりません。
(3) 還付未済額の決算上の取扱い
決算書上、還付未済額は収入済額に含まれています。
しかし、還付未済額は納入義務者に還付するものであり、本来は収入済額に含めるべきものではありません。
そこで、還付未済額があるときには、調定額から収入済額と不納欠損額を引いたものに還付未済額を加えたものを収入未済額としています。
歳入歳出決算事項別明細書では、還付未済額があるときにはその科目の備考欄に金額が記 載されます。
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過年度収入
(1)過年度収入とは
出納は5月31日をもって閉鎖されますが、徴収の権利が消滅するわけではありません。
債権が消滅するまでは、継続して収入を確保していかなければなりません。
出納閉鎖後に収入される、前年度以前の収入未済金については、これをすべて当年度の歳入とします。
これを過年度収入といいます。
また、歳出の誤払い又は過渡しに係る戻入金で、出納閉鎖後に収入されたものも同様です。
過年度収入は、会計年度独立の原則の例外の一つです。
(2)? 過年度収入の歳入科目
@ 前年度以前の収入未済金
通常、当年度と同じ歳入科目に収入します。
過年度収入用の科目を特に定めている場合には、その科目に収入します。
A 前年度以前の歳出に係る戻入金
通常は「雑入」に収入します。過年度収入用の科目を特に定めている場合には、その科目に収入します。
過誤納金の取扱い
(1) 過誤納金とは
過納納金とは、「過納金」と「誤納金」の総称として用いられる言葉です。
過納とは、納入義務者から正当に納付すべき金額を超えて収入したことをいい、誤納とは、錯誤により正当な納入義務者でない者から収入したことをいいます。
(2)? 過誤納金についての一般的事務処理
@ 過誤納額の通知(電子的通知)
歳入に過誤納があったときには、直ちに会計管理者に通知しなければなりません。
これについては、財務会計システムで過誤納額登録書を作成することにより、通知したものとみなされます。
これは、納入義務者に戻出(還付)すべき過誤納金について、正規の歳入金額とは区別して歳入簿に記帳することにより、過誤納の管理と正しい決算を行うためです。
なお、雑部金については過誤納額の通知をする必要はありません。
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A 戻出(還付)の処理
ア 還付決定原議の作成
歳入を戻出(還付)するときは、支出の手続の例により、収入した歳入から還付しなければなりません。
過誤納金の還付は、還付ではあってもあくまで支出行為です。
従って、支出の手続と同じく、支出負担行為に相当する決定(還付決定原議の作成・決裁)をし、支出命令書によって処理します。
なお、還付決定原議は、支出決定原議と異なり、財務会計システムで作成することができません。
よって、手書きにより作成します。
イ 支出命令書(歳入還付命令書)の作成
財務会計システムで歳入還付命令書を作成します。
その際、システムに過誤納額を登録していないと命令書を作成することができません。
また、過誤納額の範囲内でしか命令書を作成することができません。
命令書を作成すると、その金額と同額が、自動的に歳入簿の「過誤納額」から減額されます。
B 減額調定
還付命令書を作成しても調定額は自動的に減額されませんので、還付対象額について調定がなされている場合には、調定決定書を作成して別途減額調定をしなければなりません。
(3)? 資金前渡による還付処理
窓口等での随時の還付に対応すべく、資金前渡を受けてあらかじめ還付用資金を用意しておくことができます。
この場合、還付金額が事前に決まっていないことから、過誤納額の通知は本来、1ヶ月分の還付額が確定した時点、つまり精算と同時に行うべきですが、通常の還付処理と同じく命令書作成前に過誤納額登録書を作成します。
事務の流れは以下のとおりです。
@ 過誤納額登録書の作成
A 還付決定原議の作成
B 歳入還付命令書(資金前渡・精算あり)の作成
C 精算書の作成
なお、精算残金を翌月に繰越す場合には、精算書を作成する前に「差引請求額」と同額の過誤納額登録書を作成する必要があります。
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(4) 出納閉鎖後の処理
出納整理期間経過後は、過誤納の対象金を収入した歳入からは還付することができませんので、翌年度の歳出として「償還金利子及び割引料」に予算措置して支出します。
(5)? 過誤納金の充当
過誤納金の充当とは、納入者に還付すべき過誤納金が生じた場合、その過誤納金を還付しないで、納入者の納入すべき同じ科目の徴収金に充当することをいいます。
この充当をするには、法令の根拠規定を必要とします。
また、充当する徴収金の納期限が経過していることが必要です。
過誤納金の充当は、地方公共団体がその意思で一方的にすることができ、また、しなければならないとしています。
これにより、支払義務の履行と徴収金の確保とを同時に行うことができます。
充当の処理は、振替収支命令書によって行います。
その効力は、その徴収金の法定納期限と過誤納金の生じた時とのいずれか遅い時(充当適状時)に遡って生じます。
→ 【地方税法】第17条の2(過誤納金の充当)
納入済通知書の送付換え
住民税の特別徴収分などでは、納入義務者が他の自治体に納付すべきものを誤って納付し、その結果銀行等から誤った納入済通知書が送付されることがあります。
会計室から他の自治体の納入済通知書の送付を受けた場合には、財務会計システムで送付換通知書(3部)を作成し、そのうちの2部に納入済通知書を添えて、直ちに会計室に返送します。
会計室では、送付換通知書に基づいて収入計上額からその額を控除するとともに、指定金融機関を通して他自治体に納入済通知書を転送しています。
歳入不納欠損
(1) 歳入不能欠損とは
すでに調定した歳入を収納することができなくなった場合、自治体としてこれを欠損扱いにすることを歳入の不納欠損処分といいます。
この処分は、法令や条例の定めにより納入義務が消滅した債権(金銭債権)に対して行うものであり、単に徴収不能というだけで安易に行うことのできるものではありません。
債権は自治体の貴重な財産であるので、不能欠損処分は十分な徴収の努力の結果として決定するものでなければなりません。
(2) 不能欠損処分の条件(概略)
@ 時効の成立(自治法第236条)
ア 公法上の債権
・地方税(地方税法) ・国民健康保険料(国民健康保険法)
イ 私法上の債権(民法、商法)
A 債権の免除(自治法240条、地方税法)
B 議会の議決による権利の放棄(自治法第96条)
C? 徴収権の消滅(地方税法、道路法、河川法)
D その他(破産法、会社更生法)
(3) 歳入不納欠損額の通知(電子的通知)
歳入不納欠損を決定したときには、財務会計システムで歳入不納欠損額決定書を作成することにより、歳入不納欠損の額を会計管理者に通知しなればなりません。
歳入不納欠損額決定書は、調定決定書と同じく決定原議の作成とシステムへのデータ登録(電 子的通知)を同時に行うことのできる帳票です。
しかし、重要案件の処理等において、別途原議を作成することは構いません。
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