商事債権とは?民事債権との違いと商法上の時効などを解説
商行為とは
民法では、債権の消滅時効期間は、原則として10年であるが(民法167条T)、商法では、商行為によって生じた債権の消滅時効期間は、原則として5年としている(商法522条)。
そこで、商行為とは何かが問題となる。
商行為には3種類あって、@)絶対的商行為(商法501条)、A)営業的商行為(商法502条)、B)附属的商行為(商法503条)の3つである。
絶対的商行為とは、商法501条に列挙されている商行為、例えば、手形に関する行為や取引所における取引行為などをいう。
営業的商行為とは、営業として、つまり営利の目的をもって反復継続して行う商法502条に列挙されている行為、例えば、営業として行う運送、印刷、出版に関する行為などをいう。
附属的商行為とは、商人がその営業のためにする行為、例えば、商人がその営業のために設備資金や運転資金を借りる行為などをいう。
この附属的商行為にあたるかどうかは、その者の商人性の有無が問われるのであるから、結局、商行為に該当するかどうかは、商人性の有無も併せて検討しなければならないことになる。
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商人とは
商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう(商法4条T)。商行為とは何かが問題となっているのに、これでは問をもって問に答えているようで、わかりにくいが、要するに商売をやっている人は商人とみてよい。
店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者などは、商行為を行うことを業としていなくても商人とみなされる(商法4条U)。
会社(株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう(会社法2条@))の場合、その事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とするとされている(会社法5条)。会社はすべて商人とみてよい。
商人資格の取得時期は必ずしも営業自体を開始したときでなく、その準備行為、例えば店舗の借入、資金の調達など、それによって営業の意思が実現されたときである(最判昭33.6.19は、「特定の営業を開始する目的で準備行為をしたものは、その行為により営業を開始する意思を実現したもので、これにより商人たる資格を取得する。」と判示している。)。
以上要するに、商売をしている人若しくは会社がその事業(営業)として若しくはその事業(営業)のために行う行為は全て商行為となる。
一方的商行為
商法3条1項は、「当事者の一方のために商行為となる行為については、この法律をその双方に適用する。」と規定している。それ故、自治体は商人ではないが、相手方のために商行為となる行為については商法を適用することになる。したがって、借受人にとって自治体から借入れが商行為となるときは、自治体の貸付金は商事債権となる。
また、同条2項は、「当事者の一方が2人以上ある場合において、その1人のために商行為となる行為については、この法律をその全員に適用する。」と規定している。したがって、主たる債務が商事債権の場合は保証債務も商事債権となり、保証債務の消滅時効期間は5年ということになる。