履行延期の特約等に関する適用上の問題点|自治体の債権管理
履行延期の特約等(自治令176条の6。以下、単に「履行延期の特約」という。)には、所定の適用要件がある。以下に、適用上の問題点について述べる。
1 回収の見込みが全くない場合についても履行延期の特約等の措置を講ずることができるか。
債務者が無資力又はこれに近い状態にあるときであっても、いずれ支払ってもらうことが前提だから、無資力状態にあって、かつ将来にわたって回収の見込みがないときは、適用がないとも考えられる。しかし、将来のことは誰もわからないのであるから、いずれ「著しい生活困窮状態にあり、資力の回復が困難であると認められる」として放棄するとしても、しばらく様子をみるということでよいと考える。
なお、全く支払能力がないわけではない場合、多くのケースでは分納の措置を採るのが妥当だと思われる。
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2 年賦払いを月賦払いに変更した場合に適用があるか。
履行延期の特約は納期限を延期する場合の規定であって、年賦払いを月賦払いに変更するのは、本来の償還期限を延期するものではないから、適用はない。したがって、それは運用上の問題であり、上記規定の要件を満たす必要はない。月賦払いの方が一般的には返済しやすいと思われるので、債務者から要請があればこれに応じるべきである。
3 最終納期限をこえる滞納金の分納や償還方法の組み替えは可能か。
償還期間をこえて履行延期の特約をすることは、償還期間の定めに違反するとの見解もある。
しかし、自治令171条の6は、市町村長に償還期間についての変更権限を付与したものと解される。実際上も、最終納期限をこえる履行延期の特約ができないとしたら、債務不履行に陥った多くの場合について、事実上、履行延期の特約ができないこととなり、不都合極まりない。
4 既に発生している滞納金について、当初の最終償還日までに納付が終了する方法で分納の合意をした場合にも適用があるか。
既発生の償還金については、本来支払うべき期限を延長しているのであるから、上記規定の適用があると解する。したがって、上記規定の要件を満たしていなければ、そのような合意はできない。