民事調停の流れを分かりやすく解説|必要書類と手続きも併せてご紹介
意義
調停とは、裁判所の非公開の調停室において、裁判官または5年以上の弁護士経験者から選任される民事調停官(非常勤裁判官と呼ばれる)と民事調停委員2人で組織される調停委員会の仲介により、当事者双方の話し合いで一定の合意をすることにより紛争を解決する手続きである。
特徴
調停のメリットとして次の点があげられる。
@)調停申立ての手数料(印紙額)は、訴え提起の手数料よりも少額である。
A)請求金額の制限がない。
B)調停手続は原則として非公開とされているので、第三者に知られることなく交渉して債務名義を取得できる。
C)双方が納得するまで話合うことが基本なので、債務者の実情に合った解決ができる。
D)通常訴訟に比べれば、一般的に解決までの時間は比較的短くてすむ。
逆に、調停のデメリットとして、相手方が期日に出頭しなければ手続きが進行できず、また、相手方が出頭しても話合いがまとまらないときは不成立で終了するので、結局訴訟等の手続きを採らねばならない点があげられる。
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調停を選択すべき場面
裁判所へ出頭する見込みがあり、裁判所において支払条件の話合いをすれば任意に支払いに応じる可能性のある債務者に対しては、手数料が少額で済むこの手続きが適している。
手続きの概要
(1)申立て
a)申立書(正本1通+副本(債務者の数))
民事調停申立ては、「調停申立書」を提出して行う。記載事項は次のとおりである。
@)申立人、相手方及び代理人の表示
A)申立ての趣旨
支払いを求める金額など、申立人が求める解決の結論を記載する。
B)紛争の要点
調停の対象となっている法律関係(契約内容など)、それについてどのような紛争があり、どのようにして解決して欲しいのかを記載する。
b)添付書類
@)代理人指定書
A)資格証明書(債務者が法人の場合、代表者事項証明書や商業登記簿謄本などの全部事項証明書)
B)証拠書類(契約書、借用書等)
c)申立費用
@)印紙
請求金額に応じた収入印紙。
A)郵便切手
郵便切手の額・内訳は各裁判所により異なる。
d)管轄
相手方の住所、居所、営業所又は事務所を管轄する簡易裁判所であるが、当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所に申し立てることもできる(民事調停法3条。以下、民事調停法を「民調」という。)。
(2)申立後の手続きの流れ
a)期日の指定
調停申立書が受理されると、相手方に申立書副本と呼出状が送られ、第1回調停期日が決まる(通常1ケ月後位)。
b)調停期日
調停期日においては、調停委員が双方当事者から紛争の実情を聴取し、適当な解決案を双方に提示する。
c)調停成立
話合いがまとまると、裁判所書記官がその内容を調停調書に記載し、調停が成立する。調停調書は確定判決と同一の効力をもつ債務名義となり、債務者が調停内容を守らなかった場合には強制執行ができる(民調16条)。
なお、調停により返済条件を変更する際には、必ず期限の利益喪失条項を盛り込むべきである。
d)調停不成立
話合いがまとまらない場合は、調停は打ち切られ不成立となり(不成立となったときは1ケ月以内に訴えを提起しなければ調停申立ては時効中断の効力を失う(民法151条)。)、後は訴訟等を検討することになる。
なお、話合いがまとまらない場合でも、申立ての趣旨に反しない限度で、裁判所が「調停に代わる決定」(民調17条)を出すことがあり、当事者双方から2週間以内に異議が出なければ調停調書と同じ効力を持つことになる(民調18条)。