督促と滞納処分|公務員の金銭会計

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督促と滞納処分|公務員の金銭会計

歳入徴収者は、歳入を収入しようとするときは、その歳入に係る法規その他の関係書類に基づいて、調定を行い、収支命令者をして調定決定書を起票させ、納入の通知を納付義務者に対して送付し、支払を促すことまでは解説しました(地方自治法第二百三十一条)
しかしながら、納入の通知に指定された納付期限までに納付されなかった場合は、期限を指定して納付義務者に対し、督促等収入の確保に必要な措置を執らなければなりません。このことについて、次のとおり督促と滞納処分について解説します。

 

1 督促について

(1) 督促の概念

督促とは、納付義務者が納入の通知に指定された納付期限を過ぎても、その債務を履行しない場合に、それぞれ期限を指定してその支払を促すことをいいます。その根拠は、公債権又は私債権によって違います。
また、督促の方法は、原則書面、又はその性質上書面により難い場合は、口頭、掲示その他の方法により行うものとされます。ただし、他の特別な法律(国民健康保険法、道路法など)に定めがある場合は、それによります(地方自治法施行令第百五十四条第三項)。

 

(2) 督促の根拠について

督促は、納入の通知による納付期限までに納付しない納付義務者があるときは、次の規定により、期限を指定して督促をするように定められています。
また、この督促に係る債権は、個別法などにより処理すべき地方税法の規定に基づく徴収金に係る債権、過料、証券に化体されている債権、電子記録債権、預金債権、歳入歳出外現金となるべき債権、寄附金に係る債権及び基金に属する債権を除くものとされます(地方自治法第二百四十条第四項)。

 

債権の別

根拠規定

公債権

強制徴収公債権 地方自治法第二百三十一条の三第一項
非強制徴収公債権 地方自治法第二百三十一条の三第一項
私債権 地方自治法第二百四十条第二項(同法第二百三十一条の三第一項に規定する歳入に係る債権を除きます。)及び地方自治法施行令第百七十一条

 

(3) 督促の方法について

督促の方法は、原則文書によるべきです(地方自治法第二百三十一条の三第一項・第五項から第十一項まで、地方自治法施行令第百七十一条、行政不服審査法第八十二条第一項、地方税法第三百二十九条)。
送付の様式も限定されていませんが、督促を受ける納付義務者等の個人情報などに配慮することはいうまでもありません。
また、郵便の手段についても、書留、簡易書留、内容証明、普通郵便などの方法が考えられますが、どのような手段によるべきかについては、限定されていません。必要に応じて適切な郵便の手段を選択すべきということになります。また、督促状は郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)による信書に当たるため、文書を送付することとした場合は、必ず信書として郵便等により適法に送付するようにしてください。

 

(4) 督促状を発すべき時期と督促状に指定すべき期限について

公債権も私債権も、督促状を発すべき時期の目安は次に掲げるとおりです。
・督促状を発すべき時期
納付期限後二十日目まで

 

・督促状に指定すべき期限
督促状の発行の日から十五日以内において定めた日

 

(5) 督促の効果

@ 時効の完成猶予及び更新
法令の規定により地方公共団体がする督促(及び納入の通知)は、時効の更新の効力を有するものとなります。ただし、これに当たり、他の特別の法律(地方税法等)で定めがある場合は、これらが優先して適用されることとなります(地方自治法第二百三十六条第四項)。
しかしながら、このように特別の効力が付与されているからといって再三にわたり督促(及び納入の通知)を行っても、事項の特別の効力を生じさせることはできません。
行政実例(昭和 44 年2月6日付自治行 12)では、法令の規定による納入の通知及び督促は、(それぞれ)最初のものに限り特別の効力を有すると解されています。

 

A 督促手数料及び延滞金等の徴収
督促した場合の督促の手数料、延滞料等に係る効果について次のとおり説明します。
ア 公債権の場合
公債権(別の特別の法規で定めるもののほか地方自治法の規定により、分担金、使用料、加入金、手数料及び過料その他の普通地方公共団体の歳入に係る債権をいいます。)について督促をした場合は、条例等の定めるところにより、督促の手数料及び延滞料を徴収できることとなっています(地方自治法第二百三十一条の三第一項・第二項)。
一般的な条例では、その規定の定めるところにより、督促状を発した場合に、その指定すべき期限の翌日から納付の日までの期間の日数に応じ、その金額(百円未満の端数があるときはこれを切り捨てます。)に規定する割合を乗じて得た金額に相当する延滞金額を加算して徴収することとなります。

 

イ 私債権の場合
私債権(地方自治法第二百四十条第一項に規定する債権であって、同法第二百三十一条の三第一項に該当する歳入を除きます。)は、督促手数料及び延滞金の徴収はできません。
しかしながら私債権による金銭債権の不履行は、民法上の履行遅滞に当たるため、督促の手数料及び延滞料と同趣旨の損害賠償として遅延損害金を請求できます。
遅延損害金は、民法の規定により、損害賠償の予定として損害賠償の額を契約書等にあらかじめ規定しておくことができます。これがあれば、その約定利率(制限利率以下の利率に限ります。)により遅延損害金を請求することができます(民法第四百二十条)。
契約書等に定めがない場合でも民法の規定により遅延損害を法定利率により算定し、これを加算して請求することができます(民法第四百十五条・第四百十九条第一項本文)。
遅延損害金の請求期間は、契約書等に定めがある場合はそれによりますが、一般的には、その納付期限の翌日から納付の日までの日数に応じ、その利率(約定利率又は法定利率)を乗じて得た金額に相当する遅延損害金を加算して請求します。

 

2 滞納処分について

(1) 滞納処分

督促をしても納付されないときは、次のとおり滞納処分をします。
@ 強制徴収公債権
督促をした場合であって、督促を受けた者がその指定した納付期限までに、その納付すべき金額を納付しないときは、その債権並びにこれに係る督促手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例(個別法に「国税徴収法の滞納処分の例」とあるときは、国税徴収法の滞納処分の例によります。)により強制執行することができます(地方自治法第二百三十一条の三第一項及び第三項)。
この強制執行は、裁判所の決定等を経ず、債務者の財産を差押え、公売等をとおしてこれを換価し、その代金を普通地方公共団体の債権に充当することができます。

 

A 非強制徴収公債権及び私債権
督促をした場合であって、相当の期間を経過してもなお履行されないときは、その債権並びにこれに係る督促手数料及び延滞金について、次に掲げる措置を執らねばなりません。ただし、法規の規定により履行期限を延長する場合その他特別の事情があると認める場合は、この限りではありません(地方自治法第二百三十一条の三第一項・第二百四十条第二項の規定による地方自治法施行令第百七十一条・第百七十一条の二・百七十一条の六)。

 

ア 担保の付されている債権(保証人の保証がある債権を含みます。)は、当該債権の内容に従い、その担保を処分、若しくは競売その他の担保権の実行(※)の手続をとり、又は保証人に対して履行を請求すること(※2)。
※ 担保権の実行とは、質権、抵当権等に係る担保権を行使することをいい、競売により行います。
※2 この履行の方法は、納付義務者に対する督促と同様に督促します。

 

イ 債務名義(※)のある債権は、強制執行(※2)の手続を執ること。
※ 債務名義とは、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十二条各号に掲げる文書をいいます。この文書は、請求権の存在及びその内容を公証するとともに、強制執行により、国が同法の規定による強制力をもって、相手方の財産の差し押さえ等により、当該請求権応じた金銭の支払を得ることができる執行力が付与されます。
※2 強制執行とは、支払義務のある相手側がその債務を約束通り履行しない場合に、民事執行法の規定により、債務名義を根拠として、国が強制力をもって当該相手方の財産を差し押さえる等により、強制的に支払いを実行させる制度となります。

 

ウ 担保、保証人又は債務名義がない債権は、訴訟手続(非訴訟事件の手続を含みます。)により履行を請求すること。

 

(2) 期限の利益の喪失

督促のほか、契約書等に期限の利益の喪失条項を設けている債権は、一定程度その定められた支払いを怠った場合は、期限の利益を喪失させ、納付期限が到来していない債権について、一括支払うよう請求することができます。
このような条項がある債権は、期限の利益を喪失させる旨の通知をする必要があります。
また、この通知により期限の利益が喪失した場合は、連帯保証人等に対してもその旨通知して、督促をすべきなのは言うまでもありません(地方自治法施行令第百七十一条の三)。
このことも一種の滞納処分となります。併せて検討する必要があります。

 

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