歳入の納付方法と収納事務|公務員の金銭会計事務
1 歳入の納付方法について
歳入の納付方法は、納付義務者が、納入の通知書又は納付書(以下「納付書等」といいます。)を公金取扱金融機関又は金銭出納員まで持参し、現金で納付して行われます。しかし、歳入の確実な確保と納付義務者の利便性向上を図るため、次に掲げるような他の納付方法も制度化されています。
(1) 口座振替による納付
(地方自治法第二百三十一条の二第三項・第二百三十二条の五第二項、地方自治法施行令第百五十五条)
法令上普通地方公共団体への納付は、原則現金です。しかし、その例外として、納付義務者の便宜のため、公金取扱金融機関に預金口座を設けている納付義務者からの申し出があれば、その公金取扱金融機関に依頼し、納付義務者の保有する公金取扱金融機関の預金口座から、市の預金口座に振り替えて納付させることができます。
・分割又は継続的に納付するものでない場合
納付義務者は、公金取扱金融機関に、納入の通知書その他の納入に関する書類を提示して、自らが開設する口座から口座振替をさせることができます。
・分割又は継続的に納付するものである場合(口座振替払といった場合は通常はこれ)
納付義務者は、公金取扱金融機関に、年間の引落額の通知など納付すべき金額をあらかじめ確認できるものを提示して、自らが開設する口座から口座振替をさせることができます。この場合、市はその公金取扱金融機関にあらかじめ納入の通知書を送付し、その口座から、定期的に市の口座へ振り替えすることとなります。
納付義務者の申し出は、市又は該当する公金取扱金融機関に市指定の依頼書を提出する必要があります。
また、納付義務者が、この納付方法を取り止める旨の申し出を行うときは、同様に取消届を市又は該当する公金取扱金融機関に提出させなければなりません
(2) 証券による納付
(地方自治法第二百三十一条の二第一項、地方自治法施行令第百五十六条)
普通地方公共団体の歳入は、原則現金に限られ(※)ています。しかし、納付義務者の便宜のため、現金の代用として証券を使用して納付することができます(地方自治法第二百三十一条の二第三項)。
※ 現金に限るとした根拠は、証紙や証券によることができるとした、地方自治法第二百三十一条の二第一項及び地方自治法施行令第百五十六条第一項の反対解釈によるものです。
※2 現金の代用とすることができる有価証券と取扱方法
現金の代用である以上、その証券は確実に現金化されなければなりません。そのため、使用できる証券とその取扱方法を次のように限定しています。
@ 現金の代用としてすることができる証券
ア 持参人払式小切手(※)又は会計管理者若しくは指定金融機関等を受取人とする小切手(地方自治法施行令第百五十六条第一項第一号)
小切手のうち、使用できるものは、次の条件を満たした小切手となります。
(ア) 手形交換所の交換参加地域を支払地としたもの(市長が認めた場合は除きます。※2)(地方自治法施行令第百五十六条第一項第一号の普通地方公共団体の長が定める区域をいいます(※3)。)
(イ) 振出日から起算して7日を経過していないもの(※4)
(ウ) 小切手の裏面に納付する納付義務者の住所・氏名及び押印(印は銀行取引印に限ります。)がなされたもの。ただし、やむを得ない場合は、押印を省略で
きます(※5)。
(エ) 先付小切手(振出日が納付日から見て未来の日付の小切手をいいます。以下同じです。)でないもの
換金するには、収納金の払込みの際に、金銭出納員は、他の収納金と公金取扱金融機関に納付すべき納付書とを合わせて提示し、小切手の換金と同時に
払込みするものとします。
しかしながら、ただし、当該公金取扱金融機関から不渡りであるとして小切手の返還を受ける場合があります。この場合は、会計室出納係にご相談ください。
※ 持参人払式小切手とは、一般的な小切手の方式をいい、その小切手に支払の相手先を記載せず、かつ、支払先を依頼する部分に、持参人へ支払うよう依頼する旨の文書が記載された小切手をいいます。
※2 手形交換所の交換参加地域を支払地としたものとは、手形交換所に参加する金融機関をいい、具体的には一般社団法人全国銀行協会の全国の手形交換所等一覧の都道府県の款の参加金融機関名の項にある各金融機関をいいます。ただし、令和4年を目安に電子交換所が設立され、電子的に決済が行われる予定となっています。その際には、この手形交換所の概念が無くなります。
※3 「普通地方公共団体の長が定める区域」とは、行政実例(昭和 38 年 12 月 19日)により、会計規則等に定めています。具体的には、「…手形交換所の交換参加地域を支払地としたものとする。ただし、市長が認めた場合はこの限りでない。」とような規定です(地方自治法施行令第百五十六条第一項)。
※4 振出日から起算して7日を経過していないものとは、振出日が12 月 10 日となっていた場合、小切手の実際の受取日が 12 月 16 日までであれば受取可能となります。
※5 銀行渡りの小切手(正式には「線引小切手」といいます。※6)が提示された場合、現金化に、その小切手が指定する銀行、支店等での預貯金口座の口座振込によることとなり、その現金化に一定の時間を要することとなります。しかし、一般社団法人全国銀行協会の「当座勘定規定(ひな型)」第 18 条では、小切手の裏面に住所・氏名及び押印(銀行取引印に限ります。)があれば、線引小切手として取り扱わないものと規定しているため、市では、早急な現金化を求める趣旨で、裏書された小切手を求めることとしています。
※6 「線引小切手」とは、小切手の表面に2本の平行線が引かれた小切手をいいます。これは手書きやゴム印等でも効力は変わりありません。また、2本の平行
線でなく「銀行渡り」や「BANK」などの文言であっても同様です。一般的に小切手帳の交付を受けた場合は、事故防止のため、その交付元の銀行から、あらかじめ全ての小切手葉に線引きをしておくことが指導されています。
イ 無記名式の日本国債(※)若しくは地方債(※2)又はその利札(※3)(地方自治法施行令第百五十六条第一項第二号)
無記名式の日本国債若しくは地方債又はその利札(以下この章において「国債等」といいます。)は支払期日前にも一定の基準に基づき現金化することが可能ですが、現金の代用とすることができる国債等は、支払期日の到来したものに限られます。
また、現金の代用とすることができる額は、その利子に課税される額を控除した額を納付額とすることができます。
しかしながら、日本国債は平成 15 年1月から、地方債も平成 18 年1月から、その債権やその債権に係る利札を含めて電子化されているため、現物が交付されることはありません。また、その譲渡も譲渡するものの管理口座から譲渡されるものの管理口座に口座振替の方法により譲渡されるため、現物があった時代よりも普通地方公共団体の支払いに利用されることは、ほとんどなくなっています。
このことから、国債等により支払いを希望する納付義務者があった場合は、その対応方法について、会計室出納係にあらかじめ協議してください。
※ 国債又は日本国債とは、日本国政府が発行する債券であり、国債ニ関する法律(明治三十九年 法律第三十四号)に基づいて発行される無記名式のものをいいます。ただし、財務大臣の定める国債(引揚者国庫債券など)は記名式により発行されることとなります。
※2 地方債とは、普通地方公共団体が発行する債権であり、地方自治法第二百三十条及び二百三十五条の三の規定に基づいて発行される債権をいい、地方財政法により規制が有ります。国債と違い、記名式又は無記名式で発行されます。
※3 利札とは、クーポンとも呼ばれる利付債券に附随する無記名証券をいいます。しかし、電子化により、国債等から利札という独立した現物が交付される訳ではありません
ウ 振替払出証書及び為替証書(地方自治法施行令第百五十六条第一項第一号)
その他金銭の支払を目的とする有価証券であって小切手と同程度の支払の確実性があるものとして総務大臣が指定するもの(※)として、次に掲げる(ア)及び(イ)の有価証券(以下「為替証書」といいます。)が現金の代用として指定されています(地方自治法施行令第百五十六条第一項)。
※ 地方自治法施行令第百五十六条第一項第一号の規定に基づき総務大臣の指定する有価証券(平成十九年総務省告示第五百四十四号)により指定されるものをいいます。
(ア) 郵政民営化法(平成十七年法律第九十七号)第九十四条に規定する郵便貯金
銀行(実際には株式会社ゆうちょ銀行をいいます。)が発行する振替払出証書振替払出証書は、郵便貯金銀行に開設された、送金するものの貯金口座から現金を払い出し、市へ当該証書を郵送する支払方法の一つです。
(イ) 郵政民営化法第九十四条に規定する為替証書
為替証書とは、郵便為替証書の略称となります。郵便貯金銀行の発行する普通為替証書及び定額小為替証書をいいます。
普通為替証書は、500 万円以下の金額を送金するものが、郵便貯金銀行又は郵便局の貯金窓口に送金額の現金及び所定の料金を添えて申し込みます。
定額小為替証書は、金額の上限はありませんが、50 円、100 円、150 円、200 円、250 円、300 円、350 円、400 円、450 円、500 円及び 1,000 円の 12 種類から送金額に応じたものを選択し、その送金額と1枚当たり 100 円の料金とを添えて申し込みます。
(ウ) 換金期限
振替払出証書及び為替証書の換金期限は、発行された日から起算して6か月以内とされています。これらの証書自体は、再発行をすることにより換金期限を延長することもできますが、会計規則等の規定により、発行の日から起算して 175 日を経過しているものは、受領拒絶することが通例です。
(エ) 払込方法
金銭出納員は、振替払出証書及び為替証書により納付義務者から支払いを受けた場合、会計規則等に規定する収納金の払い込みの際に、他の収納金と合わせて、指定金融機関等に納付すべき納付書と合わせて提示し、換金と同時に払い込みをします
エ その他(地方税法第十六条の二)
約束手形及び先付小切手は、原則現金の代用として使用できません。ただし、次に掲げる市民税等地方税においてのみその納付又は納入の委託を受けることができます(地方税法第十六条の二)。
(ア) 徴収の猶予、職権による換価の猶予又は申請による換価の猶予に係るもの
(イ) 納付又は納入の委託をしようとする有価証券の支払期日以後に納期限の到来するもの
(ウ) 滞納に係るもの((ア)を除きます。)で、その納付又は納入につき納付義務者が誠実な意思を有し、かつ、その納付又は納入の委託を受けることが市の地方税の徴収上有利と認められるもの
また、証券の取立て(取立ての取り消しを含む)に費用を要するときは、その納付義務者がその費用の額に相当する金額を負担します。このため、これらを現金の
代用として使用する場合は、納付義務者へ十分に説明をした上で受け入れるようにしてください(地方税法第十六条の二第一項後段)。
A 現金の代用として証券を受領した場合の領収書の表示について
会計規則等では、歳入金を収納したときは、原則領収書を納入者に交付することとなります。この際、現金の代用として証券による納入があったときは、納入の通知書又は納付書の各片に「証券受領」と表示するものとします。また、その金額が収納された金額の一部であるときは、その表示の近くに納入された証券金額を記載するものとします。
B 現金の代用として受領した証券が不渡りとなった場合について
ア 公金取扱金融機関から直接不渡証券の返還を受けた金銭出納員の事務処理金銭出納員は、現金の代用として受領した証券を、公金取扱金融機関から不渡証券として返還を受けたときは、その納付義務者に、証券不渡通知書で速やかに通知し、その証券を当該納付義務者に返還するとともに、先に交付した領収書を返還させるものとします。
また、それが収納された金額の一部であるときは、併せてその不渡金額を控除した額の領収書を、先に交付した領収書と引換えに新たに交付します。また、歳入徴収者は直ちに「証券不渡分」と表示した納付書を納入した納付義務者に交付し、相当分の現金を納入させるものとします。
イ 会計管理者の不渡証券の事務処理
会計管理者が、指定金融機関から証券不渡報告書を受けたときは、当日の収入金額から不渡金額を控除するとともに、証券不渡金額控除通知書により、指定金融機関及び歳入徴収者にその旨を通知します。
ウ 歳入徴収者及び金銭出納員の不渡証券の事務処理
イの証券不渡金額控除通知書で通知を受けた歳入徴収者は、直ちに「証券不渡分」と表示した納付書を納入した納付義務者に交付し、相当分の現金を納入させるものとします。また、その金銭出納員はアに準じて、証券を返還するとともに、その不渡金額を控除した額の領収書を、先に交付した領収書と引換えに新たに交付するものとします。
(3) 証紙による納付
(地方自治法第二百三十一条の二第一項・第二項)
普通地方公共団体の歳入は、原則現金に限られます。しかし、納付義務者の便宜のため、使用料又は手数料の徴収に限り、条例等の定めるところにより、その例外として証紙(※)による収入の方法によることができます。(地方自治法第二百三十一条の二第一項)。
※ 証紙とは、普通地方公共団体に一定の金額を納付したことを証明する紙片を意味するものです。証紙による納付は、納付義務者がその債務を履行(※2)するために、現金の代用として証紙を納付することをいいます。
※2 当該債務を履行とは、証紙を納付した時に行われたものと整理されます。また、歳入は、実際に普通地方公共団体が証紙の売りさばき代金を収納した時に、歳入があったものとされます。