自治体の債権の時効について知っておこう|地方自治法236条の解説

自治体の債権の時効について知っておこう|地方自治法236条の解説

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自治体の債権の時効について知っておこう|地方自治法236条の解説

時効は、一定期間継続した事実の状態によって、係る権利の変動を生じさせる制度です。

 

消滅時効

@ 消滅時効とは、権利を行使できるにも関わらず、これを行使しないという状態が一定期間継続することにより、権利が消滅することです。
A 消滅時効は、権利を行使できる時から進行し(民法第166条第1項)、確定期限がある債権は期限到来の時から、期限の定めのない権利は権利が成立した時から時効が進行します。

 

時効期間

地方自治法では、自治体を一方の当事者とする金銭会計の時効を5年と定めています。

 

ただし、他の法律に定めがある場合には、その法律(例えば、民法、商法など)の定めるところによります。

 

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時効の援用と時効の利益の放棄

@ 時効の援用とは、時効の利益を受ける者が時効の完成を主張することです。

 

時効の利益の放棄とは、時効の利益を受ける者が時効の完成後に、その利益を受けない旨を意思表示することです。
A 自治体の場合、公法上の債権債務については、時効の援用 を必要としません。

 

また、時効の利益を放棄することもできません(【自治法】第236条〔金銭債権の消滅時効〕第2項、【地方税法】第18条〔地方税の消滅時効〕第2項、【同法】第18条の3〔還付金の消滅時効〕第2項)。

 

従って、時効完成期間が満了したときは、債権債務は当然に消滅します。

 

※時効の援用は、「裁判所は、時効の主張をした場合にかぎり、これを取り上げ、裁判することができる。」という意味です。 → 【民法】第145条(時効の援用)

 

B 一方、私法上の債権債務については、時効の援用が必要です(民法第145条)。

 

時効の利益を放棄することができます。

 

時効の中断

時効の中断とは、権利者が権利を主張したり、義務者が相手方の権利の存在を認めるなどの事由により、その事由発生時までに進行していた時効期間がその効力を失うことです。

 

中断した時効は、中断事由が終了したときから、新たに進行します(【民法】第157条)。

 

@?? 時効の中断事由
中断の事由には、請求*1、差押、仮差押*2、仮処分、承認があります(【民法】第147条)。

 

*1請求 → 訴えの提起、支払命令、和解、調停、破産手続参加の申立て
*2仮差押 → 金銭債権の将来の強制執行を保全するために、暫定的に債務者にその財産の処分を禁止する民事保全の手続

 

A 時効の中断事由に係る特例
ア 自治体が行う納入の通知と督促は、民法第153条(催告)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有します。

 

この時効の中断効力は、私法上か公法上かを問わず、自治体のすべての債権に適用されます(【自治法】第236条(金銭債権の消滅時効)第4項、【地方税法】第18条の2(時効の中断及び停止)第1項)。

 

イ ただし、時効の中断は、最初の納入の通知と督促に限られ、再度の通知と督促には効力がありません。

 

督促後相当の期間を経過しても、なお履行がないときは、強制執行等の措置をとるべきです(昭和44年2月6日【行政実例】)。

 

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時効の停止

時効の停止とは、時効の完成を一定期間猶予することです。

 

天災事変が起こるなど時効中断の措置を講ずることができない場合に認められます。

 

時効に関する地方自治法236条の規定

【自治法】(金銭債権の消滅時効)
第236条 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行わないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
2 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄できないものとする。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
3 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項(前項に規定する事項を除く。)に関し、適用すべき法律の規定がないときは、民法(明治29年法律第89号)の規定を準用する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
4 法令の規定により普通地方公共団体がする納入の通知及び督促は、民法第153条(前項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。
【通知】本条第1項の「他の法律」には民法を含む(昭和38年12月19日)。
【注釈】「納入の通知」とは、自治法第231条及び自治令第154条第2項の規定によりするものをいいます。
【通知】本条第4項の「督促」には、法令の規定によりする私法上の債権に係る督促を含む(昭和38年12月19日)。
【行実】法令の規定により普通地方公共団体がする督促は、最初のものに限り時効中断の効力を有すると解釈される。督促後相当の期間を経過しても、なお、履行がないときは強制執行等の措置をとるべきである(昭和44年2月6日)。

 

時効に関する会計法の規定

【会計法】第30条(金銭債権の消滅時効)
金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、5年間これを行わないときは、時効により消滅する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。

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