自治体の貸付債権とは?その発生原因と貸付の手続き方法を解説
公債権は公法上の原因に基づいて発生しますすが(法規や処分等)、私債権は私法上の原因に基づいて発生します(契約、不法行為、事務管理、不当利得)。
市町村が保有する債権のうち、強制徴収公債権を除くと、その大部分が貸付債権です。
それ故、以下では貸付債権に関する事項について説明します。
1 貸付債権の法的性質(発生原因)
市町村は多数の貸付条例を有しています。
各貸付条例には、資格要件、貸付限度額、返済条件、貸付手続等が定められており、貸付を担当する職員はこれらの規定に従って事務処理をしなければなりません。
しかしながら、貸付債権は当該貸付条例に基づいて発生するのではなく、民法上の金銭消費貸借契約に基づいて発生する私債権です。
貸付条例には、「貸付決定」、「貸付決定の取消」などの行政行為を表す文言が用いられていますが、貸付条例はいずれも市町村に借受人に対する特別な権限を付与していますわけではなく、市町村に優越的な地位を認めていますものとは解されません。
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上記行政行為的な文言は市町村の内部的な意思決定行為を表現していますに過ぎません。
2 貸付けの手続き
貸付けは各貸付条例及びその施行規則に則って実施されます。その手続きの概要は次のとおりです。
@)貸付申込書の受付
金銭消費貸借契約における申し込みにあたります。
A)審査
申込者からの貸付申込に対して承諾すべきか否かを判断する内部的な行為
B)決定
これも内部的な行為です。
C)決定通知書の交付
金銭消費貸借契約における承諾にあたります。前述したように、決定通知書の交付は行政処分ではありません。
D)借用書の受付け
市町村では、当事者双方が署名捺印する契約書ではなく、借受人から借用書を差し入れさせる方式を採用しています。借用書の交付を受けることにより金銭消費貸借契約の予約が成立します。
E)貸付金の交付
貸付金を交付することにより金銭消費貸借契約が成立します。