担保提供の請求とは?代担保などの事務を解説|自治体の債権管理
債務者に信用不安が生じたときは、しっかりとした担保をとって債権を保全しておきたいものである。ここでは、債権保全の必要がある場合に行う担保提供の請求について説明する。
1 法令の確認
地方公共団体の長は、債権を保全するために必要があると認めるときは、債務者に対し、担保の提供(保証人の設定を含む。)を求めなければならない(自治令171条の4U)。
条文上、強制徴収公債権については除外されているので、適用があるのは非強制徴収公債権と私債権である。
同条同項も公債権、私債権、双方に適用がある。但し、実際上、強制徴収公債権については殆ど適用がない。
2 保証人の変更
(1)主たる債務者について債権保全の必要が生じた時は、上記規定により債権者は保証人を立てることを請求する必要があるが、この請求に応じさせるには、契約で債務者に保証人を立てる義務が定められていることが必要である。
貸付けの場合、貸付時に保証人を立てることになっているので、保証人が付いていないというケースは殆どないものと思われる。上記規定の適用を検討する必要性が生じると思われるのは、次に述べる保証人に弁済資力がない場合である。
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(2)主たる債務者が保証人を立てる義務を負っている場合、保証人が弁済の資力を有しなくなったときは、保証人としての要件を欠くことになる(民法450条T)。その場合、債権者は、その保証人を自らが指定したものでない限り、主たる債務者に別の保証人を立てることを請求できる(同条U)。
主たる債務者がその請求に応じることができない場合は、代担保(物的担保)を保証人に代えて供することもできる(民法451条)。
主たる債務者が資格ある保証人を立てることができず、また、代担保を提供しない場合は民法137条3号にいう「担保を供しないとき」にあたり、期限の利益を喪失させることができる。
上記次第であるから、主たる債務者の信用が低下し、債権の保全の必要が生じたときは、保証人の支払能力を改めて見直し、必要があれば、上記措置を講じ、債務者がこれに応じなければ期限の利益を喪失させる必要がある。
但し、貸付契約上、借受人が保証人を付ける義務を負っていることが前提である。貸付金については、上記のような場合にも借受人に保証人を立てる義務を負わせているか否か明確でない。
3 物的担保の請求
同様に、主たる債務者について前記債権保全の必要が生じたときは、債権者は物的担保を設定することを契約に基づき請求できる。しかし、抵当権を設定することとなっている貸付けの場合、貸付時に抵当権を設定しているので、改めて請求する必要がある場合は殆どないものと思われる。
ところで、債務者が担保をき滅させ、損傷させ、又は減少させたときは期限の利益を喪失させることができる(民法137条A)。
抵当権を設定している場合であって、主たる債務者の信用が低下し、債権の保全の必要が生じたときは、同条同号に該当する事実がないかどうか改めて担保目的物を見直してみるとよい。