訴訟の流れとメリット・デメリットとは|自治体の債権管理

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訴訟の流れとメリット・デメリットとは|自治体の債権管理

訴訟とは

1 意義

 

訴訟とは、広くは、裁判所が、紛争、又は利害の衝突を強制的に解決調整するために、対立する利害関係人を当事者として関与させて行う法的手続をいうが、通常は、訴えの提起から判決確定にいたる裁判手続を指す。

 

2 特徴

 

訴訟の最大の特徴は、強制的で最終的な解決方法ということである。自主的な納付交渉はもちろんのこと、調停や和解等においても、債務者がそれを受け入れなければ強制することはできない。

 

しかし、訴訟では、債務者が裁判所の出頭要請等を無視すれば、債権者の主張する請求原因を認めることが擬制されて欠席の敗訴判決がでる可能性が高くなり、当事者が納得するしないにかかわらず、最後には判決という形で必ず決着がつけられる。

 

訴訟のメリットとしては次の点があげられる。

 

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@)債務者の態度・協力のいかんにかかわらず判決による決着がつけられる。

 

A)勝訴判決が下されれば債務名義となり強制執行ができる。また、これにより任意の弁済も期待できる。

 

B)時効中断の効力が生じる。

 

C)裁判の途中においても訴訟上の和解を行うことができる。

 

また、逆にデメリットとして次の点があげられる。

 

@)費用、時間等のコストが他の方法より大きい。

 

A)強行手段であるが故に債務者との関係が悪化すること。

 

B)敗訴により債権を失う可能性がある。

 

3 訴訟を選択すべき場面

 

支払督促において債務者から異議を述べられることが確実な場合、請求金額が多額な場合、債務者が裁判所へ出頭して調停に応じる見込みのない場合等には、債権額と執行費用の採算性を考慮したうえで、訴訟を選択すべきである。

 

訴訟手続の流れ

1 訴えの提起

 

(1)訴状(正本1通+副本(被告の数))

 

訴訟は、債権者が原告として裁判所の民事事件受付窓口に訴状を提出(郵送も可)することから始まる。訴状の記載事項は次のとおりである(民訴法133条)。

 

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a)当事者

 

原告の住所氏名及び原告の送達先、被告の住所氏名を記載する。地方公共団体は法人格を有しているので(自治法2条T)、自治体が原告となる場合は、単に「○○市」等と記載すれば足りる。代表者の欄は首長が代表権を有することが法定されているので(自治法283条、147条)、代表者市長○○と記載する。

 

b)請求の趣旨

 

求める訴訟の内容、例えば貸金請求であれば、「被告は原告に対し、金100万円及びこれに対する平成18年1月1日から年5分の割合による金員を支払え。」と記載する。

 

c)請求の原因

 

請求を基礎付ける原因、すなわち貸金であれば、交付した金員の額、交付した日時、返還約束の存在、利息の約束の存在、弁済期の到来、について簡潔に記載する。

 

(2)添付書類

 

a)代理人指定書

 

b)資格証明書(被告が法人の場合、代表者事項証明書や商業登記簿謄本などの全部事項証明書)

 

c)証拠書類の写し

 

(3)費用

 

a)印紙

 

請求金額に応じた収入印紙。

 

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b)郵便切手

 

予納する郵券の額は、各裁判所によって異なるが、東京地方裁判所では当事者1名ずつであれば、6,400円、一人増えるごとに2,080円追加して予納させる扱いとなっている。

 

 

(4)管轄

 

まず、簡易裁判所と地方裁判所のいずれに訴えを提起するかは、訴訟物の価額によって定まり、140万円以下の請求は簡易裁判所、140万円をこえる請求は地方裁判所の管轄となる(裁判所法33条T@)。

 

どこの裁判所に提起するかについては、原則として、被告の住所地又は本店所在地を管轄する裁判所となる(民訴法4条)。

 

もっとも、上記の例外として、財産権上の訴えは義務履行地を管轄する裁判所に提起することができるので(民訴法5条@)、持参債務(債権者の住所地で履行する債務)については債権者の住所地を管轄する裁判所に訴えを提起できる。自治体の有する債権は、持参債務がほとんどであると思われる。

 

なお、双方が合意すれば、その合意した裁判所を管轄裁判所とすることもできる(民訴法8条)。

 

2 事件配点と期日の決定

 

裁判所は、その訴状が適式かを審査し、不適式であれば補正命令が出る。適式であれば、配点される裁判所が決まり(例えば、○○地方裁判所民事第○○部×係など)、通常1ケ月以内に第1回の口頭弁論期日が指定される(民訴法139条)。

 

期日には、種類によって、口頭弁論期日と、進行協議期日、証拠調べ(証人尋問、本人尋間)期日、公示催告期日、和解期日、判決期日があり、このうち、法廷で行われるのが口頭弁論期日、証拠調べ期日、判決期日である。

 

 

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3 送達

 

訴状が適式であれば、被告に訴状が送達される。送達については、郵便局員又は、執行官が名宛人(被告本人、被告会社の主たる営業所)に送達する「交付送達」(民訴法101条)が原則であるが、名宛人の家族、名宛人会社の社員に送達する「補充送達」(民訴法106条T、U)、名宛人らが受領を拒んだ場合の「差置送達」(民訴法106条V)、裁判所の書記官自身が裁判所で名宛人に手渡す「簡易送達」(民訴法100条)がある。

 

しかし、所在不明、転居その他により、送達されない場合には、就業場所送達(民訴法103条U)、代表者送達、付郵便送達(民訴法107条T@)、公示送達(民訴法110条T)などの特別な送達がなされる。これらの場合、裁判所から調査命令が下るので、調査報告書を作成してそれぞれの送達の申立てをすることになる。

 

4 答弁書の提出

 

送達が完了すると、審理の開始となる。

 

被告には、裁判所から答弁書の催促状が送られるので、一定の期日までにこの答弁書を提出することが義務づけられる(民訴法162条)。

 

答弁書には、事件の番号と、原告被告の氏名、配点された裁判所を記載し、「請求の趣旨に対する答弁」「請求の原因に対する認否反論」を記載して、裁判所宛1通(正本)、原告(但し、原告が数人いる場合はその数だけ)宛1通(副本)を作成して提出する。

 

被告に訴状が送達されていながら、答弁書を提出しないと、争わないものと看做され(民訴法159条)、裁判所は、通常、訴訟を終結して判決を言い渡す。

 

5 第1回口頭弁論期日

 

第1回の口頭弁論期日においては、原告は、訴状の陳述を行う。事実上は、裁判官が「原告は、訴状を陳述しますね。」「被告は答弁書を陳述しますね。」などと言って、訴状、答弁書の内容を一言一句述べることはしない。その後、裁判所は、訴状や答弁書の内容に不足や疑義があれば、それぞれに準備書面で追加の主張を行わせる。

 

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6 準備書面

 

このあとは、原告被告ともに「準備書面」、つまり、自分が主張する内容を記載して主張の交換を行う。当事者が主張すべきものは、まず、その主張を支える事実である。「事実」には、@)債権など権利の発生・変更・消滅という法律効果を判断するに必要な主要事実(要件事実ともいう。)、A)この主要事実の存否を推認するのに役立つ事実である間接事実、B)証拠の信用性に影響を与える補助事実がある。証人が偽証で有罪判決を受けたなどと主張することがこれにあたる。

 

裁判で勝訴するには、@)の主要事実を主張すべきであるが、主要事実を証明する手段がないときなどには、A)の間接事実を積み上げて、これを立証することになる。また相手方提出の証拠の証拠力を弱めるために、B)の補助事実を主張することは有用である。

 

これらの主張を記載した準備書面は、原則として、期日の前に提出することになっており、通常裁判官がその期限を指定する。

 

7 証拠

 

上記の主張を裁判所に認定してもらうために各当事者は、その主張する事実を証明しなければならない。「証明」とは、その事実の存在について裁判所に確信を得させることをいう。証明の対象となる事項は、上記の事実(主要事実、間接事実、補助事実)である。但し、相手方が認めた事実(自白)、公知の事実、職務上顕著な事実は証明の対象とはならない(民訴法179条)。

 

証拠には文書などの物証と人証がある。

 

物証については、証明しようとする内容を記載した証拠説明書とともに提出することとされている。

 

物証のうち、書証については、原寸でA4判の大きさの紙にコピーして提出することになっている。

 

人証には、証人と、当事者(原告や被告本人や会社の場合は代表者)がある。いずれも誰をどのように尋問するかについての証拠申出書を提出することが必要である。そして裁判所がこれを採用して、期日を決めて取調べをすることとなる。

 

これ以外に、鑑定(専門的知識・経験則を利用して事実判断を行う鑑定人が裁判所の命令で、その事実判断の報告を行うこと)、検証(事物の形状・性質について裁判官がその五官作用を利用して事実判断を行うこと)によって事実を認定する場合もある。いずれも鑑定申立書、検証申立書を作成して申立てを行う。

 

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8 判決

 

裁判所は判断をするに必要な主張、証拠がそろったところで、判決期日を決めて、判決を下す。民事の判決においては判決期日に主文だけを宣告するため、具体的内容は、交付を受けた判決書を見て確認することになる。

 

9 控訴

 

第1審判決に不服がある場合は控訴期間(判決が双方当事者に送達された日から2週間。民訴法285条)内に控訴できるが(民訴法281条)、ほとんどの主張、証拠提出は第1審でなされているので、控訴審では、追加された新たな主張、証拠を見て判断される。

 

もっとも、主張、証拠は適時提出主義が採用されているので、第1審までに提出しなかった場合には、時機に遅れた攻撃防御方法として却下される可能性もある(民訴法157条)。

 

10 上告

 

控訴審判決に不服がある場合は上告できるが、最高裁判所への上告は、憲法違反がある場合など極めて限定されている(民訴法312条)。しかし、原審が最高裁判所の判例に相反する判断をしたとき、その他法令の解釈上重要な事項を含む場合には、上告受理の申立てをして、上告審がこれを受理すれば、審理がなされることになる。

 

上告又は上告受理の申立ては、控訴審の判決の送達を受けてから2週間内にしなければならない。また、上告人又は上告受理申立人に上告提起通知書又は上告受理申立通知書が到達した日から50日以内に上告理由書又は上告受理申立理由書を送付しないと上告又は上告受理申立ては却下されることとなる(民事訴訟規則194条)。

 

 

第1審判決後の対応

債権者の訴訟終了後の対応は、判決の内容、債務者の対応により次のとおりとなる。

 

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1 債権者が勝訴し債務者が控訴した場合

 

控訴期間(判決が双方当事者に送達された日から2週間。民訴法285条)内に敗訴した債務者が控訴した場合は、判決は確定せず、さらに控訴審で審理がなされることになる。

 

但し、証拠上債権の存在が明らかな場合、控訴審の審理は1回程度で結審することが多く、1審判決が覆される可能性も少ない。

 

なお、控訴審手続中においても和解は可能であり、控訴審においても勝訴が見込まれる場合であっても、債務者と改めて話合いの場をもち、任意の履行可能性を探るべきである。

 

2 債権者勝訴判決が確定した場合

 

控訴期間が経過しても控訴がない場合は、判決が確定し、強制執行が可能になるので強制執行手続きに入る。

 

但し、債権の存在が判決で確定したという事実を前提として、強制執行に入る前に債務者と改めて話合いを持つという選択肢を残しておくことも1つの方法である。強制執行をしないですむメリットがあるからである。

 

3 債権者勝訴判決に仮執行宣言が付された場合

 

判決主文に仮執行宣言(この判決は仮に執行することができる。との文言)が付いている場合は、判決確定前や控訴された場合でも強制執行(仮執行)ができるので、債務者に財産隠匿・処分のおそれがある場合には、直ちに仮執行宣言に基づく強制執行に入るべきである。

 

仮執行宣言は、強制執行が遅れることから債権者を救済する制度であって、金銭給付判決ではこれが付されるのが通常である。ただし、控訴審において1審判決が変更されると失効し、債務者に金銭の返還等を要することになる。

 

4 債権者が敗訴した場合

 

判決内容を検討し、事実認定等に不服がある場合は、控訴提起の手続き(控訴状を1審裁判所に提出)を採る。控訴審でも勝訴の見込みがないとして控訴を断念した場合は、欠損処理の可否について検討する。

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