公務員が行う貸付業務のコツ|注意すべき点と事務の流れとテクニック

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公務員が行う貸付業務のコツ|注意すべき点と事務の流れとテクニック

市町村の貸付条例やその施行規則は、貸付資格、貸付要件等、貸付けについての基本的な事項を定めていますが、貸付けを行う際の事務処理方法の多くの部分が各所管の運用に任されています。

 

以下に、貸付業務に関する運用において、気を付けるべきポイントを紹介します。

 

1 事前相談

 

貸付けの申し込みを受け付けるにあたっては、事前に貸付けを希望する者との間で協議することが望ましいです。その際、パンフレットなどが用意されていると便利です。

 

事前相談の際、多くの所管が面接調査票やチェックシートその他の様式化した書面を用意して相談に当たっていますが、これは相談者から貸付資格や貸付要件にかかわる事実を短時間に要領よく聞き出すことに役立ちます。

 

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2 本人確認

 

(1)本人確認の必要性

 

貸付申込書や借用書に記載されている借受人とは別の人物が貸付金を受け取っていたということもあり得ます。保証人及び物上保証人が名義を冒用されたという事例も少なくありません。市町村では、貸付申込書を提出させる際、借受人や連帯保証人の住民票、印鑑証明書を提出させ、貸付申込書及び借用書は実印で押捺することを求めています。したがって、人違いの問題を生ずることは殆どないと思われますが、その可能性が全くないとは言えません。そうした事態を回避するため、上記資料を提出させるだけでなく、次のような方策を講ずることが望ましいです。特に、金額の大きい貸付金にあっては、必ず、実施すべきです。

 

(2)本人確認の方法

 

本人確認の方法としては、身分証明書、具体的には、運転免許証、保険証、パスポート、住基カードなどのような、本人にしか発行されない公的書類を要求するのが通常であり、特に、運転免許証や写真入り住基カード、パスポートのように写真の入ったものが望ましい。

 

これらの公的書類は、番号で特定できるので、面談時にこれらのコピーをとるか、最低限、番号を控えるなどして、後日調査の必要が生じた場合に備えることが必要となります。

 

保険証の場合には写真が添付されていないので、可能であれば、写真付きの社員証などを併せて確認するのが望ましい。

 

3 審査

 

(1)一般的審査事項

 

資金を貸し付ける場合、一般的には先ず返済能力が重要な審査項目となります。特に金額の大きい貸付金にあっては、審査は厳格に行うべきです。この場合、収入状況や資産状況だけではなく、負債の状況についてもよく聞いておく必要があります。そして、返済能力に不安がある場合には、原則として貸付けを保留とすべきです。

 

なお、当該貸付制度の目的及びその定め方にもよるが、市町村民の福祉を図るという観点から、貸付けの種類によっては、返済能力に不安があっても貸付けを実施する場合もあります。これはやむを得ない事例です。

 

貸付けの種類にもよるが、借受人の返済能力に不安があるときは、保証人の返済能力についても厳格に審査すべきです。

 

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4 決定通知書、借用書の記載事項

 

(1)送達に関する条項

 

公債権については、非強制徴収公債権を含め、その徴収に関する書類の送達については地方税の例によるとされ(自治法231条の3W)、通常の取扱いによる郵便又は信書便によって書類を発送した場合には、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定することになっています(地方税法20条W)。

 

ところが、私債権についてはこの規定の適用がなく、民法の原則に従うこととなり、意思表示は相手方に到達しないと効力を生じません(民法97条T)。そのため、債務者が住所を変更したり、行方不明になったりした場合は、支払いが滞っていても督促状が届かないし(したがって、時効の中断もできない。)、期限の利益を喪失させることもできず、不都合です。

 

市町村の貸付条例施行規則には届出義務の定めがあり、借受人又は保証人が住所を異動したときは首長に届け出なければならないことになっています。しかし、義務違反の場合の措置についての規定がないため、上記不都合を回避することができません。

 

そこで、借用書や決定通知に上記届出義務を怠った場合には、通常到達すべきときに送達があったものとみなす旨の規定を盛り込むべきです。こうした規定を盛り込むことは施行規則に規定がなくても可能です。

 

(3)担保を提供する義務に関する条項

 

債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、保証人が欠けた場合や保証人が弁済する資力を有しなくなったときは(例えば、保証人が破産したとき)、債権者は保証人を付け替えるよう請求できます(民法450条)。

 

市町村の貸付条例の多くが貸付けをする際には保証人を必要としており、借用書に保証人が自署捺印することになっています。金額が大きい貸付けの場合には、借用書の中に保証人が欠けたり、保証人としての要件を満たさなくなったときは、別の保証人を立てるよう請求できる旨の規定を入れておいた方がよい。この点を明記しておけば、債務者が別の保証人を立てることができないときは、期限の利益を失わせることができます(民法137条U)。

 

(4)個人情報に関する事項

 

ひとたび債務不履行が生じてからでは債務者から資産・負債の状況や収入状況情報を得ることはなかなか難しい。そこで、債務者本人以外の者から情報を入手する必要が生じますが、入手先が遵守すべき個人情報保護法、個人情報保護条例、他の法令に定める守秘義務による制約があって、債務者本人以外の者から情報を入手することに困難を伴うことが多いのも事実です。

 

そこで、貸付けをする際に、不履行があった場合には、債務者本人以外の者(保証人を含む。)から与信管理に係る個人情報を入手することについて同意する旨の、また、与信管理に係る個人情報の提出を求められた場合には、これに協力する旨の、そして協力を怠った場合には期限の利益を喪失させることができる旨の条項を設けておくことを検討すべきです。

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