私債権と公債権の消滅時効とは|定期金はどうなる?自治体の債権管理
民法の消滅時効期間は原則10年であるが、自治法上は5年である。
以下、民法、自治法の消滅時効期間について説明する。
1 民法の規定
(1)原則
債権の時効期間は10年である(民法167条T)(債権又は所有権以外の財産権は20年である(167条U))。
(2)特則
a)民法が定める特則
民法には、10年より短い期間を定めたものがある(民法168条ないし174条その他の特別規定)。
そのうちの1つに定期金債権がある(民法168条)。定期金債権とは、年金債権のように、一定の金銭その他の代替物を定期に給付させることを目的とする債権である。一個の基本債権であって、定期に一定の給付を請求する支分権を生ずるものである。これに属するものは、年金債権、恩給債権、定期の扶助料債権などである。
分割払いの債権は定期金債権か。
この債権は、確定した一個の債権の内容を分割して支払うものであって、この定期に支払うべき債権を生ずる基本債権に該当するものではないから、本条にいう定期金債権ではない(通説・判例である(大判明40.6.13)。)。
また、民法には、定期給付の債権についての特則がある。定期給付債権とは、賃借料、給料のように、1年以内の定期に支払われる債権という意味である。これに属するものは、前記定期金債権の支分権、即ち、年金、恩給、扶助料の他、利息、賃借料、給料などがある。
定期給付の債権についての時効は5年である(民法169条)。
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b)民法以外の法律が定める特則
商行為によって生じた債権(商事債権)についての原則を定めた商法522条がその1つである。商法その他の法律には、商事債権であっても5年よりも短い消滅時効を定めた特別規定がある(商法566条、手形法70条、民法170条ないし174条等)。
(3)判決等で確定した権利の消滅時効
確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年とする(民法174条の2T前段)。既に確定判決でその存在することが確認された権利について短期の消滅時効を認める根拠は全くないからである。
裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても同様である(同条同項後段)。
2 自治法の規定
地方公共団体が有する金銭債権及び地方公共団体に対する金銭債権は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行わないときは、時効により消滅する(自治法236条T)。
私債権については、民法、商法等の民事法が適用され(上記「時効に関し他の法律に定めがあるもの」に該当する。)、同条同項の適用がない。地方公共団体に対する私法上の金銭債権についても同様である。したがって、同条同項は、公債権及び地方公共団体に対する公法上の金銭債権についてのみ適用がある。但し、会計法30条に定める国の金銭債権、地方税法18条に定める地方税の徴収金に係る債権、土地改良法39条4項に定める土地改良区の賦課金等、「時効に関し他の法律に定めがあるもの」は、それらの規定が定めるところによる。
3 時効期間の判断方法
上記次第で、時効期間を判断するには、先ず、当該債権が公債権であるか、私債権であるかを判断する必要がある。更に、公債権である場合には、当該債権の発生根拠となる法律に時効期間について特別の定めがあるか否かをチェックする必要がある。私債権である場合には、それが民事債権であるか、商事債権であるかの判断をしたうえ、民法、商法等に特別の定めがあるか否かをチェックしなければならない。