専決処分に関する適用上の問題点|自治体の債権管理

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専決処分に関する適用上の問題点|自治体の債権管理

条例で定めておけば、専決処分により金額が一定額以下の債権については議会の議決なしに和解が可能である。

 

以下、適用上の問題点について述べる。

 

1 専決処分にする場合、履行延期の特約等についての自治令171条の6の要件を満たす必要があるか。

 

条例は法令の範囲に違反しない限りにおいて定めることができることになっているので(自治法14条T)、自治令171条の6に反する専決処分をすることができないとも考えられるが、自治法96条1項12号は和解について議会が議決する場合には、自治令171条の6の要件を満たす必要はないと考えられる。そうであれば、市町村長がなした専決処分は議会が議決したのと同様に扱われるのであるから(自治法180条T参照)、自治令171条の6の要件に拘束されないと解する。

 

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2 債権額が一定金額以下であれば、どのような案件についても適用できるか。

 

もともと自治令の規定の不都合(要件が厳格すぎて実情にあわない。)(*)を回避し、合理的かつ適正な債権管理を遂行するために条例を定めるわけであるため、自ら適用には限度がある。自治法96条1項12号が和解をなすについては議会の議決を要するとした趣旨、自治令が履行期限の延期の特約について厳格な要件を定めている趣旨、財産管理の基本原則である「公平性の原則」からして全く無制約であるということはできない。

 

自治令171条の6TAに定める「債務者が当該債務の全部を一時に履行することが困難」であるときについて、相応の収入や資産があっても、債務者が多額の負債を抱えており、弁済すべき債務全般にわたって約定どおりの弁済ができない場合もこれに該当すると解するのであれば、多くのケースは履行延期の特約等の規定の適用が可能であり、専決処分の規定はあまり意味を持たないことになる。

 

具体的な適用基準については、上記趣旨等を考慮のうえ、各所管において、各貸付金の性質等に応じ、適用の基準を定めることが望ましい。但し、厳格すぎる基準を定めたのではもともとの立法趣旨に反することになる。もし、適用がないとすると、法的手続きを採らなければならないから、「費用対効果」をも考慮に入れたものとすべきである。

 

債務者に弁済意欲が認められるときは、収入状況や負債状況を勘案したうえ、無理のない弁済計画を立てることが可能であれば、基本的に応ずる方向で検討されるべきである。多くのケースでは、費用対効果の点を考慮に入れると、法的手続きを採るよりも徴収上有利であり、合理的であると考えられるからである。和解を成立させる際に債務名義を取得するなどの保全措置を講ずることができるので(これに応じなければ和解しない。)、滞納整理が進むだけでなく、債権保全上も得策である。大いに活用するとよい。

 

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3 裁判外の和解(示談)にも適用がありますか。

 

自治法96条1項12号の解釈としては、裁判外の和解にも適用があると解されており、訴えの提起、和解及び損害賠償額の決定に関する市町村長の専決処分について訴訟手続等により請求する場合に限定しておらず、示談にも適用があると解する。仮に、示談について適用がないとしても、その場合、裁判所の手続きである即決和解等の手続きに付すればよいのであるから、使い勝手にそれほど大きな影響はない。

 

4 債権の一部を放棄する場合にも適用になるか。

 

訴訟等における和解では、債権の存否が争われている場合に、債権の一部を放棄して妥協を図ったり、債務者の支払能力に疑問がある場合などに、確実な弁済を受けるため、一定金額を一括で支払うかわりに、その支払いをしたときは残額を免除するなどの和解がなされることがある。

 

しかし、自治令の免除の規定(171条の7)は、要件が厳格すぎて殆ど使えない。

 

そこで、実効的な債権回収という見地から、専決処分の規定を利用することにより、免除の規定にとらわれない、もっと弾力的な対応ができないであろうか。

 

この点については、専決処分による場合は、免除の規定に拘束されないと考える。しかし、その適用要件は、免除の規定の趣旨に照らし、上記2よりも一層厳格でなければならないと考える。

 

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