出納整理期間とは|わかりやすく過年度支出・収入、滞納繰越を解説
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会計年度
(1)会計年度とその独立の原則
会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わります。
各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって充てます。
会計年度の収入支出は、他の年度にまたがってはなりません。これが「会計年度独立の原則」です。(自治法第208条1項 会計年度及びその独立の原則)
歳入と歳出の会計年度所属区分は、自治令第142条(歳入の会計年度所属区分)、第143条(歳出の会計年度所属区分)に定められています。
(2) 総計予算主義の原則
一会計年度における一切の収入を「歳入」といい、一会計年度における一切の支出を「歳出」といいます。
予算は、歳入と歳出を混合しないで、歳入はその全額を歳入予算に計上し、歳出はその全額を歳出予算に計上します。(自治法第210条 一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。)
例えば、物品の購入代金と所有する物品の下取り代金との差額による支出の例が挙げられます。
自治法第210条は、一会計年度における一切の収入と支出は、すべて予算に計上すべきことを規定しています。
いわゆる「総計予算主義の原則」です。
従って、この場合は、購入する物品の代金は歳出から支出し、所有する物品は不用品に組み替えたうえで売却代金を歳入に収入しなければなりません。
ただし、自動車などは物品の交換に関する規程の規定に基づき、下取りによる買換えをすることができます。
この場合は、下取りを前提とした歳出予算と物品交換契約が必要です。 (自治法第237条 財産の管理及び処分)
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出納整理期間
(1)出納整理期間
地方公共団体は、現金の出納を整理する便宜のため、会計年度経過後の一定期間を設けて、未収金、未払金の整理を行えるように定めています。この期間が「出納整理期間」で、4月1日から5月31日までです。
出納整理期間は、現金の出納そのものの整理をする期間なので、この期間中に既に経過した年度の歳入調定や支出負担行為を行うことはできません。
出納整理期間は、5月31日までに支出すればよいということではありません。3月31日までに支出を完了することが原則です。それが行えない場合の特別な措置と考えるべきです。
さらに、この時の支払に係る事務手続の時間を考え、収支命令書の送付期限を翌年度の4月20日までとしています。
送付期限を越える場合は、その支出命令書の支払が確実に行われるように充分な注意と監視が必要です。そこで、会計管理者は、「収支命令書送付予定一覧表」により、報告を求めることができます。
(2)出納閉鎖
出納整理の終期日である5月31日を「出納閉鎖期日」(出納閉鎖の日)と言います。以降は、前年度に属する現金の出納はいっさいできなくなります。(自治法235条の5 出納の閉鎖)
出納閉鎖の日までに整理を終わらない収入、支出があった場合には、次年度における過年度収入、過年度支出として処理することとなります。
5月31日が日曜日であっても、その日をもって出納は閉鎖します。なお、旧年度に属する収入金が6月1日以降に領収された場合は、新年度の歳入として整理することになります。
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会計年度独立の原則に対する例外
会計年度独立の原則をすべてに適用すると、かえって不利益、不経済を生じることがあります。
そのための例外を定め、財政の効果的な運用を図っています。
(1)継続費の逓次繰越
その履行に数年度を要することがあらかじめ明確な支出予算は、その総額及び年割額をあらかじめ予算に定めることで、毎会計年度の年割額に係る支出予算の金額のうち、その会計年度内に支出が終わらなかったものは、継続年度の終わりまで逓次繰越しして支出することができます。
これを「継続費の逓次繰越し」といいます。
継続費を翌会計年度に繰り越したときは、長は、継続費繰越計算書(地方自治法施行規則(昭和二十二年内務省令第二十九号)別記様式)を調製し、次の会議において議会に報告します。
また、継続費の継続年度(当該継続年度経過後に事故繰越しがなされた場合は、その会計年度)が終了したときは、長は、継続費精算報告書(地方自治法施行規則別記様式)を調製し、当該終了した会計年度に係る決算の認定をする議会において議会に報告します。
【地方自治法】
(継続費)
第212条 普通地方公共団体の経費をもって支弁する事件でその履行に数年度を要するものについては、予算の定めるところにより、その経費の総額及び年割額を定め、数年度にわたって支出することができる。
2 前項の規定により支出することができる経費は、これを継続費という。
【地方自治法施行令】
(継続費)
第145条 継続費の毎会計年度の年割額に係る歳出予算の経費の金額のうち、その年度内に支出を終わらなかったものは、当該継続費の継続年度の終わりまで逓次繰り越して使用することができる。この場合においては、普通地方公共団体の長は、翌年度の5月31日までに継続費繰越計算書を調製し、次の会議においてこれを議会に報告しなければならない。
2 普通地方公共団体の長は、継続費に係る継続年度(継続費に係る歳出予算の金額のうち地方自治法第220条第3項ただし書の規定により翌年度に繰り越したものがある場合には、その繰り越された年度)が終了したときは、継続費精算報告書を調製し、地方自治法第233条第5項の書類〔主要な施策の成果を説明する書類など〕の提出と併せてこれを議会に報告しなければならない。
3 継続費繰越計算書及び継続費精算報告書の様式は、総務省令で定める様式を基準としなければならない。
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(2)繰越明許費
予算成立前からその性質上又は予算成立後の事由により、年度内にその支出を終わらない見込みのある支出予算は、予算の定めるところにより、翌年度に限り繰り越して使用することができます。これを「繰越明許費」といいます。
年度内に繰越明許費の繰越処理をしたときは、その翌年度5月31日までに「繰越明許費繰越計算書」(地方自治法施行規則別記様式)を調整し、次の会議において議会に報告します。
【地方自治法】
(繰越明許費)
第213条 歳出予算の経費のうちその性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについては、予算の定めるところにより、翌年度に繰り越して使用することができる。
2 前項の規定により翌年度に繰り越して使用することができる経費は、これを繰越明許費という。
【地方自治法施行令】
(繰越明許費)
第146条 地方自治法第213条の規定により翌年度に繰り越して使用しようとする歳出予算の経費については、当該経費に係る歳出に充てるために必要な金額を当該年度から翌年度に繰り越さなければならない。
2 普通地方公共団体の長は、繰越明許費に係る歳出予算の経費を翌年度に繰り越したときは、翌年度の5月31日までに繰越計算書を調製し、次の会議においてこれを議会に報告しなければならない。
3 繰越計算書の様式は、総務省令で定める様式を基準としなければならない。
(3)事故繰越
年度内に支出負担行為をしたもの(当該支出負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に基づき、これに関連して支出するものを含みます。)で、避けがたい事故により、その年度内に支出が終わらない支出予算は、当該支出に充てるために必要な金額(やむを得ない事情により、当該金額に未収入の財源がある場合は、未収入特定財源の金額)を翌年度に繰り越して使用することができます。
これを「事故繰越し」といいます。
年度内に事故繰越しの手続をした場合は、その翌年度5月31日までに「事故繰越計算書」(地方自治法施行規則別記様式)を調整し、次の会議において議会に報告します。
【地方自治法】
(予算の執行及び事故繰越し)
第220条第3項 繰越明許費の金額を除くほか、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。ただし、歳出予算の経費の金額のうち、年度内に支出負担行為をし、避けがたい事故のため年度内に支出を終わらなかったもの(当該支出負担行為に係る工事その他の事業遂行上の必要に基づきこれに関連して支出を要する経費の金額を含む。)は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。
【地方自治法施行令】(予算の執行及び事故繰越し)
第150条第3項 第146条〔繰越明許費〕の規定は、地方自治法220条第3項ただし書〔事故繰越し〕の規定による予算の繰越しについてこれを準用する。
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(4)過年度収入
会計年度内に調定し、納入通知書等を発したにも関わらず、当該会計年度の出納閉鎖期日までに納入されなかったもののうち、当該出納閉鎖期日の翌日以後に収入されたものは、過年度の収入とし、翌会計年度以降の収入とせざるを得ません。
その収入の処理を特に「過年度収入」といいます。
しかしながら、その会計年度の出納閉鎖期日までに収入しなければならないにも関わらず、結果として収入できなかった場合は、会計規則等の規定により、その出納閉鎖期日後の6月上旬までに収入未済の繰越しを行います。
これは、既に過年度収入となってしまった収入が収入できなかった場合も、又、同様です。
この場合、その収入が収入されるか、又は法規の規定により歳入欠損(※)となるまで、その収入されなかった金額を同様に順次繰越しし続けます。
※ 歳入欠損とは、法規の規定により、時効、免除、放棄等により、もはやその収入を収入することができなくなった場合に行われます。
歳入欠損する場合は、その欠損に係る決裁を受けた後、会計規則等の規定により直ちに歳入不納欠損額を会計管理者に通知することとなります。
【地方自治法施行令】(過年度収入)
第160条 出納閉鎖後の収入は、これを現年度の歳入としなければならない。前条〔誤納金等の戻入〕の規定による戻入金で出納閉鎖後に係るものについても、また同様とする。
(5)過年度支出
その会計年度内に支払うべきもの(当該会計年度内において、支出負担行為、納品、完了検査等までが終わっているものや歳入還付すべきことが決定しているもの(※)をいいます。)を、何らかの理由により、当該会計年度の出納閉鎖期日までに支払ができなかったものは、過年度の支出とし、翌会計年度以降の支出とせざるを得ません。
その支出の処理を特に「過年度支出」といいます。
しかしながら、その会計年度内に支払うべきものは、その出納閉鎖期日までに支払わなければならないのはいうまでもありません。このような状況に該当するものは、恒常的に過年度支出をするもの(※2)を除き、過年度支出の予算が組まれていないのであれば、その点を財政課に事前に相談の上、支出するようにします。
※ 歳入還付すべきものについて、その還付すべき会計年度の出納整理期間までに還付することができなかった場合は、過年度支出とは別に会計規則等の規定により、新会計年度の6月上旬までに会計管理者へ還付未済額の通知をする必要があります。
※2 恒常的に過年度支出をするものとは、国民健康保険料や介護保険料の還付金など、その事業の形態等から通常の事務として恒常的に過年度支出をせざるを得ないものであって、あらかじめ財政課と協議し、過年度支出する科目が指定されているものをいいます。
【地方自治令】(過年度支出)
第165条の8 出納閉鎖後の支出は、これを現年度の歳出としなければならない。前条〔誤納金又は過納金の戻出〕の規定による歳出金で出納閉鎖後に係るものについても、また同様とする。
(6)歳計剰余金の繰越し
一会計年度において実際に収入した金額から実際に支出した金額を差し引いた金額を「歳計余剰金」といいます。
これが生ずることとなったときは、繰越財源(繰越明許費、継続費の逓次繰越しの財源に充てるべき金額等)を除いて、翌年度の歳入に編入しなければなりません。ただし、条例又は普通地方公共団体の議会の議決に定めるところにより、歳計余剰金の全部又は一部を翌年度に繰り越さず、基金に編入することもできます。
【地方自治法】(歳計剰余金の処分)
第233条の2 各会計年度において決算上剰余金を生じたときは、翌年度の歳入に編入しなければならない。ただし、条例の定めるところにより、又は普通地方公共団体の議会の議決により、剰余金の全部又は一部を翌年度に繰り越さないで基金に編入することができる。
(7)翌年度歳入の繰上げ充用
会計年度経過後に、歳入が歳出に不足するときは、翌年度の歳入を繰り上げてこれを充てることができます。
これを翌年度歳入の「繰上充用」といいます。
これは、赤字決算を避けるためのやむを得ない予算であって、通常は行われない処理となります。
【地方自治法施行令】(翌年度歳入の繰上充用)
第166条の2 会計年度経過後にいたって歳入が歳出に不足するときは、翌年度の歳入を繰り上げてこれに充てることができる。この場合においては、そのために必要な額を翌年度の歳入歳出予算に編入しなければならない。
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