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個人である債務者が破産した場合における債務者に対する請求の可否は
1 破産手続中の請求
破産手続が開始されると、一般債権者は破産手続によらなければ弁済を受けることができなくなる(破産法100条T)。したがって、破産者に支払いを請求してはならない。
ところで、債務者が破産すると、保証人に請求することになる結果、債務者から自分が支払うので保証人には請求しないで欲しいと言われることがある。そのような場合、どのように対処したらよいのであろうか。
前述のとおり、破産手続外で弁済を受けてはならないのであるから、債務者からの弁済は受領してはならない。もし、口座振替や振込によって入金になった場合は直ちに返還しなければならない。
では、保証人に対する請求についてはどうするのか。
実務上は、破産法上、破産者から徴収できないことを破産者に説明し、保証人に請求せざるを得ないことを理解してもらうほかないと思われる。
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2 破産手続終了後、免責決定が確定するまでの間の請求
同時廃止事案のときには、破産手続は終了しているけれども未だ免責決定が確定していないという事態が生じる。
破産手続終了後は上記のような制約はない。但し、免責許可の申立てがなされている場合は、その申立てについての裁判が確定するまでは、強制執行等の個別執行は禁止されている(破産法249条)。したがって、請求すること自体は差し支えないし、債務者が任意に弁済するときは受領してよい。なお、弁済させるために債務者又はその親族に面会を強請し、又は強談威迫の行為をすることは刑罰を以て固く禁じられている(破産法275条)。
3 免責決定が確定した後の請求
破産免責が確定しても債務が消滅するわけではない。責任を免れるだけである(債務者の一般財産を引当てにできなくなるだけである。)。したがって、請求することは可能だし、債務者が任意に支払うときはこれを受領することもできる。但し、債務者との間で弁済の合意をしても原則として無効である。弁済の合意をしても支払ってくれなければそれまでである。
保証人が付いている場合、保証人に迷惑を掛けたくないとの思いから、債務者が任意に支払うことはあるが、通常は、破産免責を得るために破産の手続きを選択しているので、免責を得た債務者が任意に弁済することは期待できない。
そこで、債務者に対する免責決定が確定した後、債務者からの支払いがなく、かつ何らの連絡もないときには、債権放棄の手続きを採ることが相当である。但し、保証人からの回収が可能である間は放棄の手続きを採ってはならない。
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