決算とは|公務員の決算事務を分かりやすく解説

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決算とは|公務員の決算事務を分かりやすく解説

「決算」とは、地方自治法第二百三十三条の規定により、一会計年度の歳入歳出予算の執行の結果の実績を表示するために、会計管理者により調製される計算書をいい、会計管理者は、出納閉鎖後、3か月以内に決算を調製し、長に提出しなければなりません。
なお、長は監査委員の審査を経た後、意見書とともに、議会に提出し、議会の認定を受けます。
この決算書には、証書類、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書を合わせて提出することとなっています。
具体的に地方公共団体では各会計歳入歳出決算書(歳入歳出予算決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書)を提出します。
この外、決算審査の参考資料として、同条第五項の規定により、主要施策の成果、各会計歳入歳出決算概要説明及び基金運用状況調書を提出します。
また、議会の認定後は、決算の公表として公式HPや図書館での閲覧を可能とします。
ここでは、各会計歳入歳出決算書及び各会計歳入歳出決算概要説明の調製等に当たり、会計室が調査等をする事項について、要点を解説します。

 

1 決算の意義

「決算」とは、一会計年度の歳入歳出予算の執行実績を表示した計算表、いうなれば数字で表した行政活動の実績です。
これにより、その年度の行政運営の適否が判断され、また、今後の予算編成や執行に当たっての指針ともなります。
決算は、議会の議決(認定)事項の1つです(地方自治法第九十六条第一項)

 

 

2 決算事務の流れ

会計管理者 ・・○ 「決算書」、「付属書類」
 ↓ 提出(出納閉鎖後3か月以内に提出します。)
首長 ・・・・・・・ ○ 決算書、付属書類、「基金運用状況調書」
 ↓ 審査に付す
監査委員 ・・・ ○ 審査、「意見書」
 ↓ 意見書の送付
首長 ・・・・・・・ ○ 決算書、付属書類、基金運用状況調書、意見書、「主要施策の成果」
 ↓ 議決(認定)に付す
議会 ・・・・・ ○ 認定又は不認定
 ↓ 
首長 ・・・・・・・ ○ 決算の公表(公式ホームページ、公立図書館等を使って住民へ)、報告(都道府県知事へ)

 

3 決算事務の概要

(1) 会計管理者の事務
出納閉鎖により確定した金額で、毎会計年度、歳入歳出予算について決算を調製し、かつ、各部(室)長から送付された書類を基にしてその付属書類(歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書、財産に関する調書)及び参考書類(決算概要説明、決算総括)を作成し、出納閉鎖3ヶ月以内に首長に提出します。
決算書と付属書類の様式は、地方自治法施行令で定める様式を基準としています(地方自治法第二百三十三条、地方自治法施行令第百六十六条)

 

@ 歳入歳出決算書 歳入歳出予算書の区分に従い、款・項の科目について作成したもの。
A 歳入歳出決算事項別明細書 歳入歳出予算事項別明細書の区分に従い、款・項・目・節の科目で作成したもの。決算書の内訳書にあたるもの。
B 実質収支に関する調書 決算書の歳入歳出差引残額(形式収支)から、翌年度に繰り越すべき財源(繰越明許費繰越額等の財源)を引き、その年度の収入支出の実質的な差引額を明らかにしたもの。
C 財産に関する調書 決算書では表すことができない財産(公有財産、物品、債権、基金)の変動について明らかにするため、その年度中の増減と3月末現在の現在高を表したもの。
D 決算概要説明 予算説明書に対応するものとして、款・項・目・節別、かつ歳出の場合には事業別に、収入・執行内容を説明したもの。
E 決算総括 決算額から、前年度からの繰越金、繰越事業費の財源・執行額、会計間の繰入・繰出金を差し引き、その会計年度内に行った行政活動に伴う収入・支出額を表したもの。

 

(2) 首長の事務
首長は、基金の運用の状況を示す書類(基金運用状況調書)を作成し、会計管理者から提出された決算書、附属書類とともに監査委員の審査に付します。
附属書類とは、その会計年度における主要な施策の成果を説明する書類(主要施策の成果)を作成したものをいい、決算書、参考書類、決算審査意見書とともに議会へ提出します(地方自治法第二百三十三条・第二百四十一条第五項、地方自治法施行令第百六十六条)

 

(3) 監査委員の事務
首長から提出された書類について審査し、さらに各部から決算の概要について聴取し、決算審査意見書(歳入歳出決算、基金運用状況)を作成して首長に提出します(地方自治法第二百三十三条第三項)。

 

4 決算の認定、公表その他の事務

(1) 決算の認定
首長は、歳入歳出決算書とその付属書類に決算審査意見書を付けて、次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付します。
決算は、第3回定例会(9月議会)で審議されさます(地方自治法第二百三十三条第三項)。
議会は、歳入歳出決算書について、監査委員の審査意見とともに審議し、認定します。
この決算認定の議決は、これによって決算の収支を変更するものではなく、いわば決算の確認行為です。
議会は決算の認定をしないこともできますが、認定しない場合においても、決算の効力自体に影響を及ぼすものではありません(行政実例(昭和 31 年2月1日))。
ただし、決算の認定に関する議決が否決された場合において、当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときは、速やかに当該措置の内容を議会に報告をするとともに、これを公表しなければなりません(地方自治法第二百三十三条)。

 

(2) 決算の公表
決算の認定後、首長は認定に関する議会の議決と監査委員の意見とを合わせて、決算の要領を住民に公表します(地方自治法第二百三十三条第六項)。

 

(3) 決算書類の保管
各部・室及び会計管理者は、収入通知や支出命令等の決算の証拠書類を整理保管しなければなりません。

 

5 財産調書の調製

財産調書は、公有財産、物品、債権及び基金の調書となります。
財産調書の様式は、地方自治法施行規則(昭和二十二年内務省令第二十九号)別記に規定された様式となります。
具体的には、各会計歳入歳出決算に添付される調書となります。
公有財産の調書のうち土地及び建物は用地経理課用地係が、有価証券は出納係が調製します。
また、物品の調書は会計室庶務係が調製します。
このほか、公有財産の調書のうち無体財産権及び出資による権利と債権及び基金の調書は、出納係から各部庶務担当係に調査依頼をします。

 

(1) 無体財産権の調書
無体財産権とは、知的財産権ともいわれる財産権です。
これは、民法における所有権の概念と同様、無体物に対し、所有権に類似する使用、収益及び処分といった排他的な支配を可能とする権利をいいます。
具体的には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権等があります。
決算年度の翌年度6月初旬に債権及び基金の調書の確認とともに依頼しています。
また、調査の際は、前年度末現在高に含まれる商標権の具体的内容とともに調査します。

 

区 分

前年度末
現 在 高

決算年度中
増 減 高

決算年度末
現 在 高

商標権

 

@ 「区分」とは、無体財産権の区分をいいます。
A 「前年度末現在高」とは、前年度の無体財産権の調書の該当区分の「決算年度末現在高」の件数をいいます。前年度に無体財産権の調書がない場合はゼロとなります。
B 「決算年度末現在高」とは、決算年度の無体財産権の件数をいいます。

 

(2) 出資による権利の調書
出資による権利とは、株式会社、有限会社等への出資に伴い取得する権利をいい、財団法人に対する出損金(株式会社、有限会社等における出資金と同義)もこの権利に含まれます。
ただし、地方公営企業に対する出資金は該当しません(行政実例(昭和 43 年 11 月6日))。
決算年度の翌年度6月の初旬に債権及び基金の調書の確認とともに依頼しています。

 

調書の様式は次のとおりです。

区 分

前年度末
現 在 高

決算年度中
増 減 高

決算年度末
現 在 高

 

@ 「区分」とは、出資による権利の区分をいいます。
A 「前年度末現在高」とは、前年度の出資による権利の調書の該当区分の「決算年度末現在高」の金額をいいます。前年度に出資による権利の調書がない場合はゼロとなります。
B 「決算年度末現在高」とは、決算年度の出資による権利の金額をいいます。

 

(3) 債権の調書
債権とは、市が他者から弁済を受けることができる権利をいいます。
債権の発生原因としては貸付金等があります。
決算年度の翌年度4月の初旬に依頼しています。
調書の様式は次のとおりです。

 

区 分

前年度 末
現 在 高

決算年度中
増 減 高

決算年度末
現 在 高
A=B+C

短期貸付金

長期貸付金

 

@ 「区分」とは、債権の名称をいいます。
A 「前年度末現在高」とは、前年度の債権の調書の当該区分の「決算年度末現在高」をいいます。前年度に債権の調書がない債権はゼロとなります。
B 「決算年度中増減高」とは、会計年度中に納付期限が到来していない債権の額(未調定の債権の額をいいます。)の増減をいいます。次の図のうち、「前年度末現在高」における決算年度の未調定の債権の増減をいいます。
C 「決算年度末現在高」とは、会計年度末現在、納付期限が到来していない債権の総額(未調定の債権の総額をいいます。)をいいます。「前年度末現在高」に「決算年度中増減高」を加えた額をいいます
D 「短期貸付金」とは、決算年度中に償還期限を迎える債権の金額をいいます。
E 「長期貸付金」とは、決算年度の翌年度以降に償還期限を迎える債権の金額をいいます。

 

(4) 基金の調書
基金とは市が条例により保持している基金をいいます。
このほか、出納整理期間中に積み立てた基金の額についても、基金の調書に記録します。
決算年度の翌年度4月の初旬に依頼しています。
調書の要式は次のとおりです。

 

種 類 区 分

前年度末
現 在 高

決算年度中
増 減 高

決算年度末
現在高

 

@ 「種類」とは、基金の名称をいいます。
A 「区分」とは、基金の管理の形態をいい、現金、有価証券等とします。
B 「前年度末現在高」とは、前年度の基金の調書の当該種類の「決算年度末現在高」をいいます。前年度に基金の調書がない債権はゼロとなります。
C 「決算年度中増減高」とは、決算年度中の基金の額の増減をいいます。
D 「決算年度末現在高」とは、決算年度末の基金の額の残高をいいます

 

6 還付未済

歳入徴収者は、歳入に過誤納があったときは、収支命令者をして、財務会計システム等により過誤納額を会計管理者へ通知(過誤納額登録をいいます。)し、相手方の請求を受け、歳入還付命令書により還付します。
しかし、相手方の請求が、過誤納を受けた年度中に行われない場合など、還付未済となった場合は、会計規則等の規定により、還付未済額通知書を起票し、決算年度の翌年度6月10日(休日の場合はその前日)までに出納係まで送付する必要があります。
これにより、各会計歳入歳出決算書及びその事項別明細の収入未済額の欄に、通知された還付未済額が加わります。
このことから、期限までに会計室出納係までに還付未済額通知書を送付する必要があります。

 

@ 還付未済額通知書の入力時期
還付未済額通知書は、決算年度の翌年度5月初旬に出納係から、収入未済額の繰越決定書の作成とともに通知があります。
これを受け、還付未済額が確定した日以降、6月10日(休日の場合はその前日)までに入力をします。

 

7 決算数字確認

会計室は、決算年度の翌年度5月中旬に出納閉鎖期日に先立ち、決算数字の確認をメールで各課庶務担当係に依頼します。
確認は、「所属別科目別歳入一覧表」と「歳入予算執行状況表」とを、又、「所属別事業別歳出一覧表」と「歳出予算執行状況表」とで行います。
歳入は、次の頁の表にある欄をそれぞれ照合します。
照合のほか、これから出納閉鎖期日までの間に不納欠損する歳入があれば、出納閉鎖期日までに財務会計システム等に入力するようにします。
また、これから調定をするもの、収入するものがある場合については、出納整理期間中に処理するようにします。

 

所属別科目別歳入一覧表 歳入予算執行状況表
予算現額 当初予算額
調定済額(累計) 調定済額(累計額)
収入済額(累計) 収入済額(累計額)
不納欠損額 不納欠損額
収入未済額 収入未済額

 

 

歳出は、次の表にある欄をそれぞれ照合します。照合のほか、まだ執行していない支出命令書等がある場合には、理由がない限り早急に処理してください。
理由がある場合も出納閉鎖期日までに執行ができるようにしてください。

 

所属別事業別歳出一覧表 歳入予算執行状況表
予算額 「当初予算額」+「補正予算額」
予算現額(計) 予算現額計
執行済額(累計) 配付、執行委任令達額
予算残額 推定残額

 

これらの数字が合わない場合は、「歳入簿」、「歳出予算推定差引簿」等を確認し、支出命令書の未執行や帳票の取消し漏れ等がないか確認をします。
出納整理期間中に誤りを発見できれば、正しい決算書を調整できるためです。
また、誤りはあってもその原因を把握することができない等、誤りを更正できない場合は、発見後速やかに会計室出納係に相談するようにします。

 

8 各課決算数字確認

会計室では、決算年度の翌年度6月初旬に決算数字の確認を各課庶務担当係に通知でお願いしています。
確認項目は「7 決算数字確認」と原則同様ですが、これらの帳票にある数値で決算書を調製するため、各項目の照合を厳密に行ってください。
また、誤りがある場合は、通知により回答するほか、別途会計室出納係に相談するようにします。

 

9 各部決算数字確認

会計室では、会計事務規則等の規定により、決算年度の6月初旬に決算数字の確認を各部庶務担当係に通知で依頼しています。
これらは「8 各課決算数字確認」と同時に依頼します。
また、この確認のため、通常の時期と違い、「所属別科目別歳入一覧表」と「所属別事業別歳出一覧表」の数値を部内全てとすることにより、各部庶務担当係が検索することができます。
必要に応じ、これを利用して各部決算数字の確認をしてください。
また、誤りがある場合は、通知により回答するほか、別途会計室出納係に相談するようにします。

 

10 決算概要説明の作成

「8 各課決算数字確認」及び「9 各部決算数字確認」のほか、会計室では、決算年度の6月初旬に、各会計歳入歳出決算概要説明の、収入説明、執行説明等の入力を通知で依頼しています。

 

(1) 決算概要説明の収入説明及び執行説明の入力依頼
決算年度の翌年度6月の初旬に、会計室から依頼をします。
この依頼があった後、同月 20 日頃(休日の場合はその前日)までに財務会計システム等に入力します。

 

(2) 入力内容確認依頼
決算年度の翌年度7月 20 日頃、会計室から依頼をします。
また、この依頼の締切りは、依頼日から起算して概ね7日間です。
この確認に使用されるものは、各会計歳入歳出決算概要説明の原稿案を送付します。
また、この原稿案は、(1)により各部において入力された入力内容を、会計室において確認し、必要に応じて修正したものを送付します。
このため、依頼を受けた場合は、この原稿案について(1)の内容に誤りがないか改めて確認するようにします。
また、会計室では原稿案作成の際に、個別の歳出予算推定差引簿等の確認をしないため、原稿案の確認の際は、十分に確認するようにします。
確認後、修正がある場合は、依頼に添付された確認書に、修正部分を特定する情報、修正前と修正後が判る情報等を記載し、修正部分の原稿を添付し、会計室に送付します。
また、修正の必要がない場合もその旨確認書を提出します。

 

(3) 印刷原稿の確認依頼
(2)ののち、印刷原稿について、会計室から確認依頼をします。
この確認に使用されるものは、印刷用の各会計歳入歳出決算概要説明の原稿となります。
この原稿案について、(2)の修正内容その他の事項の確認するようにします。
確認後、なお修正がある場合は、依頼のとおり会計室に連絡するようにします。

 

(4) 各会計歳入歳出決算書等
決算年度の翌年度8月末、各会計歳入歳出決算書及び各会計歳入歳出決算概要説明が印刷会社から納品されます。
これを受け、各部庶務担当係に配布します。
配布後指定された日までに最終確認をするようにします。
最終確認終了後、修正がある場合には早急に会計室出納係に相談するようにします。

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