保証人になる意思確認の方法とは?面前自書の効果は|公務員債権事務
1 保証人の意思確認の重要性
融資を受ける主債務者については、契約に当たって本人が面談に来ていることが大半であり、意思確認や本人確認が容易なことに加え、本人名義の口座から返済が為されるなどの事後的な兆表もあるので、後日、当該本人から「自分は融資を受けていない(融資を受ける意思がなかった)」という主張がなされることは稀です。
しかしながら、保証人の場合は上記のような事情がないのが通常であり、契約時に面前自署をとっています場合であれば別ですが、単に、保証人が署名・押印した借用書と印鑑証明書が提出されたようなケースでは、後日、保証人から、「印鑑を勝手に使用された」、「主債務者から別の説明をされて署名してしまった」といった主張がなされることがしばしば起こります。
そこで、保証人の場合には、特に、保証意思を確認しておく必要がありますのです。
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ところが、一般に、「実印による押印と印鑑証明書があれば、十分です」と理解されている風潮は否定できません。
これは、いわゆる「二段の推定」といわれる法理論に基づくものと思われます。この「二段の推定」とは、実印によって印影が顕出されています場合には、その印影は印鑑の所持者の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され(最判昭39.5.12)、その結果、その印影のある契約書は、印鑑の所持者の意思に基づいて作成されたものと推定されるという法理です(民訴法228条W)。
よって、実印による押印と印鑑証明書があれば、基本的には保証人の保証意思も推定されるのですが、保証債務否認訴訟が銀行等の金融機関との間で多く起されたという経緯もあり、現在では、「二段の推定」が覆される場面も少なくなく、単に実印と印鑑証明書があれば十分とは言えない状況にあります。
2 意思確認の方法
(1)面前自署の実行
保証人の意思確認の方法としては、言うまでもなく、担当者において、直接保証人本人と面談して保証意思を確認したうえ、保証人の面前自署(及び実印による押印と印鑑証明書の添付。以下、「面前自署」はこれら押捺、添付を含んだものをいう。)をとることが重要であり、かかる取扱いが原則となります。
事前の説明と意思確認が十分できていたとしても、調印当日に翻意するという可能性もないわけではないので、事前面談はしたが面前自署はとらずに書類だけもらった、という取扱いはできるだけ避けるべきです。
なお、面前自署をとれるのであれば、保証意思の確認は、面前自署と同時でも構いませんが、実際の調印までに相当期間が経過した場合には、契約時にも再度保証意思の確認をするのが望ましいです。
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また、保証意思の確認に当たっては、保証人の意味や義務内容を十分説明する必要があり、その際も、抽象的な説明ではなく、以下のような内容を、具体的に説明すべきです。
@)どのような場合に保証人に対して請求がなされるのか。
A)保証人に請求がなされる段階では、保証人は分割返済が可能なのか。
B)保証人が返済できない場合にはどのような影響があるのか(例えば、裁判になる、給料差押を受ける等のような具体的な影響を説明すべきです)。
なお、第三者が保証人に成りすまして契約をするといった事態も想定されることから、保証人本人の本人確認も十分に行う必要があります。
(2)電話、書留郵便による照会
保証人が隔地に居住していますなどの理由により、面前自署をとれない場合には、面前自署をとれない理由を確認したうえで、事前・事後に保証意思を確認する必要があります。何らかの理由で、直接の面談ができないような場合には、次善の策として、契約の事前・事後に、保証人の現住所宛に電話をかけて本人と直接話をするか、あるいは、書留郵便で保証人宛ての書類を送付し、本人に照会事項を記入させて返送させる、といった対応をとるほかありません。
福祉的要素の強い、金額の小さな貸付金であって、借受人の数が多い貸付金にあっては、一々保証人に面前自署を求めることは事実上不可能かもしれません。しかし、そのような貸付金であっても、最低限、上記電話若しくは郵便による意思確認は行うべきです。
(3)準則の策定、チェックシートの作成
上記のとおり、面前自署を原則とするが、貸付金の性質や債務者の数、事務処理体制の現状等に応じ、各所管において保証人の意思確認の方法についての準則を設ける必要があります。更に、後日の保証意思の立証を可能とし、また、担当者ごとの意思確認のばらつきを無くすために、保証意思チェックシートを作成し、保証意思の確認方法を統一化させて記録化することも重要です。