自治体債権の管理事務をするなら抑えておきたい基本法規を解説

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自治体債権の管理事務をするなら抑えておきたい基本法規を解説

自治体債権の管理に関する基本法規は自治法及び自治令です。

 

なお、市町村は、私債権のみを規定対象とする私債権管理条例及び私債権管理規則等を制定していることが多いです。

 

同条例、同施行規則も基本法規となります。

 

 

1 債権管理に関する自治法、自治令の規定

 

(1)債権管理の対象となる債権

 

地方公共団体が財産として管理の対象としています債権は金銭債権です(自治法240条T)。

 

(2)首長がなすべき措置

 

地方公共団体の長は、債権について、政令の定めるところにより、その督促、強制執行その他その保全及び取立てに関し必要な措置をとらなければなりません(自治法240条U)。

 

これを受けて、自治令は、督促(171条)、強制執行等(171条の2)、履行期限の繰上(171条の3)、債権の申出等(171条の4)について定めています。

 

なお、これらの規定は自治法が有する全ての債権について適用があるというものではありません。

 

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(3)首長がなすことのできる措置

 

地方公共団体の長は、債権について、政令の定めるところにより、その徴収停止、履行期限の延長又は当該債権に係る債務の免除をすることができます(自治法240条V)。これを受けて、自治令は、徴収停止(171条の5)、履行延期の特約等(171条の6)、免除(171条の7)について定めています。

 

(4)時効

 

自治法236条は、時効に関する原則を定める民法の特別法として、地方公共団体が有する金銭債権及び地方公共団体に対する金銭債権について民法の規律とは異なる定めをしています。同条が定める自治体債権についての特則は次のとおりです。

 

@)時効期間

 

民法:原則10年(167条T)

 

自治体債権(私債権を除く):5年(236条T)

 

A)時効の援用・放棄

 

民法:援用必要、放棄可(145条、146条)

 

自治体債権(私債権を除く):援用不要、放棄不可(236条U)

 

B)納入の通知及び督促について時効中断の効力

 

民法:6ケ月以内に訴訟等より強力な権利行使の手段をとらないと時効中断の効力を生じない(153条)。

 

自治体債権:民法153条の適用がない(絶対的な効力。236条W)。

 

なお、同条3項において、時効に関し自治法その他の公法規に定めのない事項については、民法を準用する旨定めています。

 

時効期間及び時効の援用放棄については私債権に適用がないことに注意しなければなりません。

 

(5)債権放棄

 

法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、債権を放棄するには、議会の議決が必要です(自治法96条TI)。

 

(6)訴えの提起等

 

地方公共団体を当事者とする訴えの提起、和解、調停を行うには議会の議決が必要です(自治法96条TK)。

 

2 私債権管理条例、私債権管理規則の例

 

(1)督促期日の設定

 

督促は、原則として納期限経過後20日以内に発するものとし、督促に指定すべき期限は、その発した日から15日以内において定める。このように管理規則等で定めておくと督促手続の迅速化が見込めます。

 

(2)強制執行等

 

督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは、原則として訴訟、強制執行等の法的手続きをとらなければならない。督促をした後相当の期間は、1年とする。このように定めておくと、法的手続きに取り組むべき時期が可視化されます。

 

(3)専決処分

 

目的物の価額が500万円以下である場合、その訴えの提起、和解及び損害賠償額の決定について専決処分にすることができる。このように定めておくと500万円以下の債権については議会の議決なしに訴訟等を提起することが可能となります。

 

(4)債権放棄

 

時効が完成し、債務者が援用も放棄もしない場合その他、実質的に徴収不能に陥っている債権について債権放棄することができるよう定めておくと、議会の議決を要することなく(自治法96条TI参照)、不納欠損処理をすることができるようになります。

 

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