納付交渉・納付相談のやり方|納税の折衝などで使えるテクニック
債務者が書面又は電話による督促に応じて納付相談を申し出たときは、速やかに納付交渉に入ります。
ここでは、納付交渉・納付相談(以下、単に「納付交渉」という。)について説明します。
1 納付交渉の重要性
納付交渉は、債務者に債務の履行を求め、あるいは、債務不履行の原因、納付意思、収入状況、財産状況の把握等、その後の債権管理を進めていく上で極めて重要です。
督促や催告あるいは電話等の呼び出しに応じて,返済についての相談等があった場合は、次の点に留意しながら納付交渉を進めます。
2 納付交渉の基本
(1)期限内納付の履行
貸付金等の原資は税であり、住民負担の公平性を確保する上でも、貸付金等は約定に従って確実に返済してもらう必要があることを理解させ、今後、滞納を繰り返すことのないよう求めます。
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(2)法的手続きを念頭においた対応
債務者に交渉が決裂したら法的手続きに入るということを示す必要があります。督促したうえで交渉を開始する以上は、次のステップに移行する用意を整えていることを示し、そして相手にこれを理解させるということが大事です。これが基本中の基本といってもいいでしょう。
(3)債務者側の状況の把握
他方において、率直に話せるような雰囲気を作って確実に聴取する努力をするということも重要です。不履行の原因、収入状況、負債状況、財産状況などについて、債務者から上手に聞き出したうえ、その裏付け資料になるものをできるだけ出してもらうというのが、交渉の基本の2番目です。
(4)できることとできないことの峻別
納付交渉では、債務者から様々な申し入れや相談を受ける。しかし、現在の法令上、徴収停止や免除の規定などからも明らかなように、自治体にはできることとできないことがあります。そこをはっきりとわきまえて対応することが肝心です。そのためには、常日頃、債権管理に関する法令に精通するよう努力すべきです。
3 納付交渉の進め方
(1)電話で行うことが多いでしょうが、電話というのはあくまで補助的交渉手段です。実効的な交渉を行うには、来庁してもらい、資料なども持参させて話をすることが必要です。
(2)電話にせよ、面接にせよ、それ相応の節度をもった対応が必要です。言葉遣いや態度に配慮し、礼儀正しく、要領よく行います。また、相手方の人格を尊重し、自尊心を傷つけないよう配慮します。
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(3)個人情報の保護にも充分に配慮する必要があります。
(4)納付交渉を行った場合には、その年月日、担当者名等を台帳に記載すべきです。交渉内容については、別途、書面にまとめ、ファイルに綴じておきます。
(5)なお、納付交渉の際に守るべき事項については、全庁的なガイドライン(指針)を作成することが望ましい。
4 弁済合意の可能性があるときの対応
納付交渉の過程で、債務者が滞納金について分納したいと申し出ることがあります。各回の償還金の額を減額して欲しいと申し出ることもあります。金融機関や貸金業者などでは、これをリスケジュール、略してリスケといって、しばしば行われています。そうしたときは、後述の履行延期の特約や専決処分の措置を講ずることを念頭において、交渉を進めます。その場合の留意点は次のとおりです。
(1)適用要件の説明
上記措置には、それぞれ適用要件があります。債務者にそれをよく説明して理解してもらうことが必要です。また、市町村が償還方法の変更に応ずる場合の条件についても説明しておく必要があります。
(2)資料の提出
適用要件の該当性を判断するには、本人の説明だけでなく、それを裏付ける資料を提出させる必要があります。また、資料を見ながらの交渉の方が効率的です。
(3)弁済計画
無理な弁済計画は早晩破綻してしまいます。実行可能な計画を立て、再度破綻することのないようにすべきです。それ故、担当職員としては、債務者のアドバイザー的な立場で、債務者から生活状況や資産・負債の状況等について正確な情報を聞き出し、実行可能な返済計画を立てるよう債務者を指導・援助すべきです。
5 徴収困難だと判断されるときの対応
納付交渉の過程で、病気で働けない、多額の負債を抱えているなどの理由で、徴収が困難であると判断される場合があります。
そのような場合、徴収停止、免除、放棄の適用を念頭において、その適用要件について債務者に説明し、その判断に必要な資料の提出を求めることとします。
また、生活保護の申請や破産、個人民事再生の申し立てをアドバイスするとよいでしょう。必要があれば、市町村の法律相談(無料)や日本司法支援センター(愛称「法テラス」)の法律相談(無料)、弁護士会が行っているクレサラ法律相談センターの相談(有料)などを紹介するのも手です。
債務者が法人である場合には、破産、特別清算(但し、株式会社に限る。)、民事再生の手続きを採るようアドバイスするとよい。債務者がその手続きを採った場合には、欠損処理が可能となります。
6 徴収可能であると判断されるときの対応
督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは、履行延期又は徴収停止の措置を採った場合以外は、原則として法的手続きを採らなければなりません(自治令171条の2)。
それ故、上記2つの措置に適合しないと判断するときは、法的手続きを念頭においた対応をとり、早期完済を促します。