時効制度の趣旨と意義とは|自治体の債権管理

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時効制度の趣旨と意義とは|自治体の債権管理

自治法は、時効に関する原則を定める民法の特別法として、地方公共団体が有する金銭債権及び地方公共団体に対する金銭債権について、いくつかの特則を定めている。

 

まずは民法に定める時効制度の概要について述べる。

 

1 時効の意義

 

時効とは、一定の事実状態、例えば、ある人が所有者であるような事実状態、ある人が債務を負担していないような事実状態などが永続した場合、この状態が真実の権利関係に合致するものかどうか、言いかえれば、果たして所有者であるかどうか、果たして債務がないかどうか、を問わずに、その事実状態をそのまま尊重し、これをもって権利関係と認め、他に真実の所有者があっても、また真実に債権があっても、その主張を許さない、とする制度である。

 

社会の法律関係の安定のために、一定の期間継続した事実状態は、そのままこれを法律関係となし、これを覆さないことが至当だと考えられる場合がある。時効制度の根本的な存在理由は、ここに存する。

 

永続した事実状態が正当な権利に基づいていることを立証することは困難な場合が多い。それが正当な法律関係に合致しないこともあるが、永年の間自分の権利を主張しなかった者は、権利の上に眠っていた者であって、法律の保護に値しないともいい得る。この証拠保全の困難を救済することと、権利の上に眠っている者を保護しないということも時効制度の第2次的な存在理由である。

 

2 取得時効と消滅時効

 

時効には、取得時効と消滅時効とがある。

 

(1)取得時効

 

取得時効の要件は、@)権利者らしい外形、即ち、一定の要件を備えた占有が、A)一定期間継続することである。この要件を満たせば、たとえ真実は所有者でなくても所有権を取得する(民法162条)。

 

占有とは、自己のためにする意思をもって物を所持することをいう(民法180条)。「所持する」と言っても必ずしも現実に所持していることを要するわけではない。ある物が、社会観念上、その人の事実的支配内に属していると認められることをいう。

 

所有権以外の財産権についても取得時効は成立する(民法163条)。その場合の要件は、@)一定の要件を備えた準占有(物の所持以外の場合、占有とは言い難いため、占有に準じる概念として準占有と呼ばれる。即ち、準占有とは、物以外の財産権を自己のためにする意思をもって権利を行使すること(現実に支配すること)をいう。)と、A)一定の期間の継続である。

 

(2)消滅時効

 

消滅時効の要件は、権利の不行使という状態が一定期間継続することである。この要件を満たせば権利は消滅する(*)。

 

(* 消滅時効と似て非なるものとして、除斥期間がある。これは純然たる権利行使期間であって、一定の期間内に権利の行使をしないと権利が消滅する。中断はないし、援用も不要である。取消権、解除権などの形成権(権利者の一方的意思表示によって法律関係の変動を生じさせることのできる権利)についての権利行使期間の定め(例えば、取消権に関する民法126条)は除斥期間を定めたものと解する説が有力である。)

 

消滅時効にかかる権利は、債権及び所有権以外の財産権である(民法167条)。所有権以外の財産権の例としては、地上権や地役権がある。

 

 

 

 

 

なお、時効の起算点について時効の起算点はいつか

 

時効期間については消滅時効期間は長さとはを参照。

 

 

 

3 時効の効力

 

(1)遡及効

 

時効の効力は、その起算日に遡る(民法144条)。

 

(2)時効の援用と放棄

 

前述したように、一定の事実状態が一定期間継続することによって、権利の得喪が生じる。しかし、時効の効果は、時効期間満了によって当然に発生するわけではなく、時効の利益を受ける者により時効の利益を受けようとする意思表示がなされることが必要である。その意思表示を時効の援用という。また、時効完成後に、時効の利益を受けないという意思表示をすることも認められる。その意思表示を時効利益の放棄という。

 

このように、時効の効果が発生するかどうかは当事者の意思にかかっている。このような仕組みは、永続した事実状態を尊重するという時効制度の趣旨と時効による利益を受ける者の意思との調和を図ったものである。

 

なお、援用と放棄については時効の援用・放棄の方法とはを参照。

 

 

 

4 時効の中断

 

(1)時効の基礎である事実状態と相容れない事実が生ずると、時効はそこで中断する。その相容れない状態が終了して以前の不行使状態に戻るときは、時効は再び進行を始めるが、期間は新しく計算される(民法157条)。

 

(2)民法は、時効中断の事由として、@)請求、A)差押え・仮差押え又は仮処分、B)承認の3者を挙げ(147条)、請求に属するものを6つを規定している(149〜155条)。

 

時効の中断事由については時効の中断事由にはどんな種類があるかを参照。

 

5 時効の停止

 

(1)意義

 

民法は、時効完成の時に当たって故障があり、権利者が中断行為をすることが困難な場合には、時効完成を猶予することにしている。これを時効の停止という。停止事由が終了してから一定の猶予期間を経て、時効は完成するから、中断のように既に経過した期間が無効となるのではない。

 

(2)停止事由

 

民法の定める停止事由は、@)法定代理人のない無能力者(*)の権利(158条T)、A)法定の財産管理人に対する無能力者の権利(同条U)、B)夫婦間の権利(159条)、C)相続財産に関する権利(160条)、D)天災事変の場合(161条)の5つについてである。

 

(* 民法は、法律行為について意思能力の完全でない者を無能力者となし、それらの者の行為は取り消し得るものとしている。民法上の無能力者は、満20歳にならない者(未成年者。4〜6条)、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所で後見開始の審判を受けた者(成年被後見人。7〜10条)、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者で、家庭裁判所で保佐開始の審判を受けた者(被保佐人。11〜14条)、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者で、家庭裁判所で補助開始の審判を受けた者(被補助人。15〜18条)の4者である。)

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