保証債務の時効の起算点は?連帯保証人による時効中断と援用手続き

保証債務の時効の起算点は?連帯保証人による時効中断と援用手続き

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保証債務の時効の起算点は?連帯保証人による時効中断と援用手続き

1 時効期間

 

主たる債務が商事債権であれば、保証債務も商事債権となる(商法3条U)。したがって、その場合の消滅時効期間は5年である(商法522条)。

 

2 時効の中断

 

時効の中断は、当事者及びその承継人の間においてだけ生ずる(民法148条)。

 

保証人の保証債務は、主たる債務とは別個独立債務なので、上記規定により、主たる債務者に対する時効の中断は保証債務に影響を及ぼさない、逆に、保証人に対する時効の中断は主たる債務に影響を及ぼさない、というのが原則だということになる。しかし、主たる債務者と保証人とは特殊な関係にあるので、相互に影響することに注意する必要がある。

 

(1)主たる債務者に対する時効中断の効力が保証債務に影響を及ぼすか。

 

民法457条1項は、「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。」と規定している。保証債務は、主たる債務の変更に応じてその内容を変更し、常に現時における主たる債務を担保すべきだからである(*)。保証債務のこの性質も附従性の一内容とされる。それ故、主たる債務者に対する全ての時効中断事由は保証人に対しても効力を生ずる。

 

(* 但し、主たる債務の成立後に債権者と主たる債務者との合意によって特に加えられた変更は、主たる債務の目的または態様を軽くするものは保証人に効力を及ぼしてその責任を軽くするが、これを重くするものは保証人に効力を及ぼさない(我妻栄「新訂債権総論(民法講義W)」484頁(岩波書店)参照))

 

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ところで、民法は、主たる債務者又は連帯保証人について生じた事由の効力について、連帯債務に関する434条ないし440条の規定を準用する旨定めている(458条)。そうすると、連帯保証人の場合は、普通の保証人と異なり、上記連帯債務の規定によるべきことになるかのようである。

 

しかし、連帯保証人も保証人であり、主たる債務者について生じた履行の請求その他の時効中断事由は、附従性の理論により決すべきであり、4の規定ではなく、上記457条1項によるとするのが相当である。したがって、主たる債務者について時効中断事由は、全て連帯保証人に対して効力を生ずる(判例、通説である(前掲・我妻栄500頁参照))。

 

(2)保証人に対する時効中断の効力は主たる債務に影響するか。

 

民法148条の原則に従い、保証人に対する時効中断の効力は主たる債務者に効力を及ぼさない。

 

但し、連帯保証の場合はそうではなく、上記連帯債務の規定によることとなる。連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる(民法434条)。それ故、連帯保証人に対する履行の請求は主たる債務者についても効力を及ぼす。

 

ここにいう「履行の請求」は、判例によれば、民法147条1号の「請求」のことをいう。したがって、裁判上の請求、支払督促、和解及び調停の申立て、破産手続参加、催告による時効の中断は主たる債務者に効力を及ぼすが、差押え、仮差押え又は仮処分、承認による時効中断は主たる債務者に効力を及ぼさない。

 

3 時効の援用・放棄

 

(1)援用権

 

主たる債務について時効が完成した場合、保証債務は、主たる債務が消滅すれば存立の基礎を失って当然消滅するものだから、保証人は主たる債務の時効完成を援用することができる(判例によれば、時効により直接に義務を免れるからということになる。)。

 

(2)援用・放棄の相対効

 

援用・放棄の効果は相対的・個別的であるから、主たる債務について主債務者が時効の利益を放棄しても、保証人は、自分に対する関係で、援用して保証債務の履行を免れることができる。

 

では、主債務者が時効の利益を援用した場合はどうか。

 

援用・放棄の効果は相対的・個別的であるから、主たる債務者が時効を援用して債務が消滅しても、保証人との関係では、主たる債務が存在しているので、援用しても放棄してもよいことになる。

 

もっとも、主たる債務が確定的に消滅したときは、保証債務は存在し得ないと解すると(附従性を厳格に考える見解)、保証債務は自動的に消滅するから時効の援用・放棄はあり得ないということになるであろう。しかし、判例はそのような見解を採っていないようである(前掲・我妻栄481頁)。

 

但し、放棄したときは保証債務を履行することになるが、主たる債務者に求償できないと解すべきである。

 

保証債務について時効が完成した場合には、保証人は、主たる債務の時効完成の有無にかかわりなく、保証債務の時効完成を援用して保証債務の履行を免れることができる。

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