債務者が死亡したときの対応は?相続人の探し方|自治体の債権管理

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債務者が死亡したときの対応は?相続人の探し方|自治体の債権管理

1 債務の相続

 

相続において、放棄又は限定承認の手続きが取られなかった場合(単純承認の場合)、被相続人の債務は、そのまま相続人が承継する(民法920条)。

 

金銭債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその法定相続分の割合で相続する(大判昭5.12.4、最判昭29.4.8)。

 

連帯保証人が死亡した場合も、各相続人がその法定相続分の割合で分割された連帯保証債務を相続する(最判昭34.6.19参照)。

 

2 死亡事実の確認

 

債務者が死亡したことを知ったときは、これを確認するため、相続人から本人の戸籍謄本ないし除籍謄本、本人の住民票の除票、死亡診断書のいずれかを提出してもらい、死亡の事実を確認する。

 

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3 相続人の確認と法定相続分

 

上記のとおり、債務者が死亡し、相続人が単純承認をした場合、相続人は債務者となるから、誰がどういう割合で債務を承継したのかを確認する必要がある。

 

(1)相続人の確認方法

 

相続人は、被相続人の出生時に遡って、必要に応じて、

 

・被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製戸籍

 

・相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍

 

を相続人から提出してもらうなど、法定相続人を確認する。

 

(2)相続人

 

誰が相続人になるかは民法により定められています(887条〜890条)。

 

第1順位が子で、子がいないと第2順位の者が相続する。第2順位は直系尊属(*)で、直系尊属がいないと第3順位の者が相続する。第3順位は兄弟姉妹である。配偶者はこれらの者とは別に常に相続権があります。

 

(* 被相続人の父母や祖父母のように、直系の親族で、世代が上の者をいう。相続順位は、世代の下の者、即ち、父母、祖父母、曾祖父母の順になる。)

 

子が被相続人よりも先に死亡したときは、子の子、即ち、孫が相続人となる。

 

これを代襲相続という。代襲者が被相続人よりも前に死亡していたときは、代襲者の子、即ち、ひ孫が代襲相続人となる。

 

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兄弟姉妹が被相続人よりも前に死亡していたときは、その子が代襲相続人となる。しかし、兄弟姉妹について代襲が生じるのは甥や姪までで、代襲者となる可能性のある甥や姪の子には代襲相続権はない。

 

(3)法定相続分

 

法定相続分は、相続順位毎に、次のとおりに定められている(民法900条)。

 

第1順位 子と配偶者    相続分各2分の1(子は合計で2分の1)

 

第2順位 直系尊属と配偶者 配偶者の相続分3分の2(直系尊属は合計で3分の1)

 

第3順位 兄弟姉妹と配偶者 配偶者の相続分4分の3(兄弟姉妹は合計で4分の1)

 

子、直系尊属、兄弟姉妹が複数いるときの各自の法定相続分は均等であるが、嫡出でない子、父母の一方を異にする子の相続分は、それぞれ、嫡出である子、父母の双方を同じくする子の2分の1となる。

 

4 単純承認の場合の相続人に対する対応

 

法定相続分は民法の規定により上記のとおりに定められているが、具体的相続分(相続財産の配分)がこれと異なることはしばしばである。

 

具体的相続分は、遺産分割(民法906条以下)により決まる場合が多い。相続人の一人が全ての財産を相続し、他の相続人は何も相続しないという遺産分割もある。遺言(民法960条以下)により相続する財産を誰が取得するか決まる場合もある。

 

 しかし、債務は具体的相続分とは関係なしに、法定相続分の割合で相続されるので、何も相続しなかった相続人に対しても、相続分の割合で請求することができる。

 

相続人にはこのことを理解してもらい、今後遅滞なく納付してもらうよう説示する。

 

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なお、各相続人に対し、その相続分の割合で請求するのも煩雑であるから、できれば、相続人の一人に他の相続人の分も債務引受してもらえれば都合がよい。その場合、他の相続人には連帯保証をしてもらう。

 

なお、保証人が死亡した場合は、前述のとおり、各相続人がその法定相続分の割合で分割された連帯保証債務を相続するので、各相続人にこの旨を教示し、理解してもらう必要がある。

 

5 相続放棄と限定承認とそれに対する対応

 

(1)相続放棄

 

相続人は自己のために相続があったことを知ったときから3ケ月以内であれば相続を放棄することができる(民法915条T)。相続を放棄すると、その者は最初から相続人でなかったこととして扱われる(民法939条)。したがって、資産も負債も承継しない。

 

それ故、相続放棄をした相続人に対しては今後請求できないことになる。相続人が相続を放棄したことは相続放棄申述受理証明書(*)の提示を受けて確認し、確認ができれば、その者に対する請求は今後しないこととし、他の相続人に請求する。

 

(* 相続放棄は家庭裁判所に相続放棄の申述をする方法により行われる。相続放棄申述受理証明書は、同裁判所がこれを受理したことを証明するものである。)

 

(2)限定承認

 

限定承認も自己のために相続があったことを知ったときから3ケ月以内に手続きしなければならない(民法915条T)。

 

限定承認は相続人全員でなければこの手続きを採ることができない(民法923条)。限定承認をした者は、全額債務を承継するけれども相続財産の限度でのみ、その債務の責任を負えば足りる(民法922条)。

 

限定承認の場合、相続財産の清算の手続きがとられ、相続人に対する債権は相続財産から支弁される(民法927条以下)。そして、相続財産によって弁済を受けることのできなかった債権については、限定承認をした相続人は、その弁済について責任を負わない(民法922条)。したがって、限定承認をした相続人は、債務を承継しているので、この者に対してその支払いを請求しても差し支えないが、弁済がなくともこれを強制する手立てはない。

 

因みに、限定承認をした者についての債権は、それが私債権である場合には、債権放棄が可能であるから、たとえその者に資産があるときであっても、任意に支払う意思がないと認められるときは放棄の手続きを採って欠損処理をすることとなる。

 

非強制徴収公債権の場合は、折りを見て議会の議決を経て放棄する(自治法96条TI)ほかはないであろう。もっとも、限定承認の手続きが採られることはめつたにないので、議会の議決を要するケースは皆無に近いと思われる。

 

6 相続人不存在の場合

 

相続人がいないか、若しくは相続人全員が相続放棄したことにより、相続人が不存在となる場合には、相続財産管理人が選任され(民法952条)、相続財産管理人の手により相続財産を清算する(民法957条U)。

 

相続財産管理人が選任されていない場合には、自ら相続財産管理人の選任を申し立てる必要がある場合もある。

 

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