時効の援用とは?放棄の方法と援用権者|公債権と私債権

時効の援用とは?放棄の方法と援用権者|公債権と私債権

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時効の援用とは?放棄の方法と援用権者|公債権と私債権

民法では、時効の効果を発生させるには時効の援用が必要であるが、自治法では、時効の援用は不要としており、放棄もできないとしている。

 

以下、時効の援用、放棄に関する民法、自治法の規定について説明する。

 

1 民法の規定

 

(1)援用権の性質

 

民法は、時効完成によって権利を取得し、あるいは消滅するとしている(取得時効についての民法162条、消滅時効についての民法167条等)。他方、民法は「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判することができない。」と規定する(民法145条)。

 

元来、裁判は実体的な権利関係に従ってなすべきであるから、時効によって権利の得喪が生じているにもかかわらず、そのまま裁判することができないというのは、一種の矛盾ともいえる。そのため、この間の整合性をいかにして図るべきかが間題となる。

 

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かつての判例、多数説は、時効によって権利の得喪が絶対的に生ずるのであるが、裁判の場で、当事者がこれを援用しないときは、裁判官はこれを取り上げることができない、その結果、裁判官は時効を考慮しないで判決しなければならない、という意味に理解していた。

 

これに対して、近時の判例、多数説は、時効の完成によって権利の得喪は停止条件的に生じており、援用があってはじめて確定的に権利の得喪が生じると解している(最判昭61.3.17(消滅時効に関する判例))。そして、放棄は時効の効果を生じさせないことにする行為に過ぎないと解している。

 

(2)援用権者

 

援用権者は時効によって利益を受ける者であるから、債務者が自己の債務について援用できることは疑いがない。問題は、債務者以外の者で、時効により何らかの利益を受ける者がいる場合、その者に援用権を認めるか否かである。

 

時効の援用は、事実状態の尊重と個人意思の調和を図る制度だとすると、時効によって何らかの利益を受ける者に広く援用と放棄の自由を認め、時効の効果を相対的・個別的に生じさせることがその目的に適する。但し、判例は、時効によって「直接に」権利を取得し又は義務を免れる者に限るとしている。学説では、判例の「直接に」ということの範囲は明確でない、一般的に非常に狭く、援用制度の趣旨に適さないという批判が有力である。

 

以下に、債権管理上、知っておく必要があると考えるものについて説明する。

 

a)連帯債務者

 

連帯債務者の1人について消滅時効が完成すると、他の連帯債務者もその者の負担部分については債務を免れるから(民法439条)、援用権がある。

 

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b)保証人

 

保証債務は、主たる債務が消滅すれば存立の基礎を失って当然消滅するものだから保証人に援用権がある(判例は、保証人は時効により直接に義務を免れるから援用権があるとする。)。保証人は、自分に対する関係で、これを援用して保証債務の消滅を主張することができる。主たる債務者が援用するかどうかとは関係がない。

 

他方、保証債務が時効により消滅しても主たる債務については影響がない。

 

c)物上保証人

 

判例理論では物上保証人には援用権がないものと推測されていたが、最判昭43.9.26は「他人のために自己の所有物件につき抵当権を設定したいわゆる物上保証人もまた被担保債権の消滅によって直接利益を受ける者というを妨げないから」被担保債権について消滅時効を援用することが許されるとした。

 

なお、物上保証人と同じような地位に立つ抵当不動産の第三取得者について、判例は援用権を否定していたが、最判昭48.12.14はこれを肯定した。

 

(3)援用の方法

 

時効の援用の性質を訴訟法的に説明する見解によれば、援用は必ず裁判上なすべきこととなるが、援用は、時効によって生ずる効果を確定させる意思表示であるとする立場からは、裁判上はもとより裁判外ですることによっても確定的に効力を生ずることになる。後説を妥当とする。したがって、債務者から援用する旨の意思表示があったときは確定的に債務が消滅するものとして扱ってよい。

 

(4)時効完成後の承認

 

時効完成後に債務者が債務を承認した場合、時効中断は問題とはならないが、私債権については、債務者が時効完成を知って承認していれば時効利益の放棄となる。では、知らなくて債務承認した場合はどうか。

 

最判昭41.4.20は、「時効完成後、債務者が債務の承認をすることは、消滅時効の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当である」としている。

 

時効中断における債務承認と完成後の債務承認を同様に扱ってよいかどうかは定かではない。同様に扱ってよいとすると、時効完成後に、債務者が支払猶予を申し出たり、債権の一部を弁済したときは、時効を援用できなくなる。しかし、上記判例のケースは、債務者が商人のケースであるため、信義則に照らし、時効の援用を認めないものとするのが相当であると判断したものと解する余地があり、時効完成後の債務承認が常に時効援用権を喪失することになるとは限らないのではないかと思われる(例えば、債務者が老人で商売の経験がない者である場合など)。今後の判例の動向に注意する必要がある。

 

2 自治法の規定(公債権、私債権)

 

地方公共団体が有する金銭債権及び地方公共団体に対する金銭債権の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができない(自治法236条U)。

 

公債権については上記解釈になるが、私債権については、民法、商法等の民事法が適用され(上記「法律に特別の定めがある場合」に該当する。)、同条同項の適用がない(最判昭46.11.30。)。地方公共団体に対する私法上の金銭債権についても同様である。したがって、同条同項は、公債権及び地方公共団体に対する公法上の金銭債権についてのみ適用がある。

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