債権放棄できる条件と手続き方法とは|自治体の債権管理

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債権放棄できる条件と手続き方法とは|自治体の債権管理

債権を放棄するには原則として議会の議決が必要であるが、条例に特別の定めがある場合には議会の議決は不要である(自治法96条TI)。

 

免除の規定が殆ど利用不可能であることに鑑み、自治体ごとに上記法条を活用して条例に定めることにより、実質的に徴収不能に陥っている債権について、議会の議決を経ることなく、債権放棄することができるようにし、債権管理の合理化、効率化を図ることが望ましい。

 

以下、債権放棄条例の一例を説明する。

 

1 私債権管理条例の規定例

 

自治体の私債権について、

 

@債務者が著しい生活困窮状態(生活保護法の適用を受け、又はこれに準じる状態をいう。)にあり、資力の回復が困難であると認められるとき

 

A破産法253条1項その他の法令の規定により債務者が当該債権につきその責任を免れたとき

 

B当該債権について消滅時効が完成したとき(債務者が時効の援用をしない特別の理由がある場合を除く。)

 

C強制執行等の手続きをとっても、なお完全に履行されない当該債権について、強制執行等の手続きが終了したときにおいて債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、弁済する見込みがないと認められるとき

 

D徴収停止の措置をとった当該債権について、徴収停止の措置をとった日から相当の期間(例えば1年以上)を経過した後においても、なお債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、弁済する見込みがないと認められるとき

 

以上いずれかに該当する場合においては、当該債権及びこれに係る損害賠償金等を放棄することができる。

 

自治体の私債権を放棄したときは、これを議会に報告しなければならない。

 

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2 要件の確認と確認方法

 

要件を確認するために必要とされる書類や資料については、各所管において、適宜、申請書やこれに添付する資料に関する事項を定め、運用の適正化を図る必要がある。以下、留意すべき事項について記す。

 

なお、保証人から納付を受ける可能性がある場合は、免除と同じく、放棄できない。放棄できるのは、保証人も免除、放棄の要件を満たしている場合だけである。

 

上記@について

 

本号は、債務者が著しい生活困窮状態にあるため、かような債務者から取立てを行うことは、社会通念上、過酷であると考えられることから放棄事由としたものである。

 

既に生活保護を受けている債務者については、生活保護受給証明書等の写しを提出させて確認する。

 

「これに準ずる状態」とは、現在生活保護法による扶助を受けていないが、申請すれば扶助を受けることができるであろうという予測が立つ場合をいう。厚生労働大臣が定める生活保護基準の10パーセント程度の誤差の範囲を目安とするのが妥当ではないかと考える。

 

「資力の回復の見込みのないこと」の確認は、債務者との面談等により資力の回復の可能性を伺わせる特段の事情(例えば、転職によって給料が増えそうであるとか、遺産分割協議が進行しているといった事情)が存しないときは、資力の回復が困難であると判断して差し支えないと考える。

 

上記Aについて

 

本号は、法律上、債務者から強制的に取り立てることができないことから放棄事由としたものである。したがって、債務者が任意に弁済する意向を示しているときは放棄するべきではない。

 

破産法による免責の場合は、債務者から裁判所の免責決定の写しの提出を求めて確認する。

 

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因みに、民事再生のときは、弁済を受けた残額について確定的に債務が消滅するので(民再法178条)、放棄の手続きは不要である。

 

上記Bについて

 

時効の効果の発生が債務者の意思にかかっているところ、債務者の意思が判明しないと、いつまでたっても滞納整理が進まないことから放棄事由としたものである。

 

因みに、債務者が支払猶予を求めている場合で、それが時効の放棄若しくは時効援用権の喪失にあたるときは、本号の適用対象外である。

 

上記Cについて

 

債務者の一般財産が債務の引当てとなっているところ、強制執行を行っても回収できなかったということは、他に回収の手立てがないことが明らかであることから放棄事由としたものである。即ち、法的にできることは全て行ったにもかかわらず、なおかつ未収債権が存する場合を規定したものである。したがって、強制執行を行った場合であっても、他に差し押えるべき財産が存するときには適用にならない。「強制執行等」には任意競売も含まれる。

 

「強制執行等の手続きが終了した」ことは、裁判所に問い合わせて確認するとよい。未収金の存在については、配当表を入手するなどして明らかにする。

 

債務者が「無資力又はこれに近い状態」にあるかどうかについては「財産開示手続」の活用が考えられる。

 

「弁済する見込みがない」という点については、債務者との面談等により資力の回復の可能性を伺わせる特段の事情がない限り資力の回復が困難であると判断して差し支えない。

 

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上記Dについて

 

徴収停止の措置を講じた後、1年以上経過しても状況がかわらないときは、回収の見込みが全くないと考えられることから放棄事由としたものである。

 

徴収停止の措置を講じた時点で、それなりに調査しているはずであるから、その後も状況が変わらないことが確認できれば足りる。

 

3 事務処理手続

 

事務処理手続については、各所管において、適宜、準則化し、運用の適正化を図るべきである。参考までに、盛り込むべき事項を記すと、以下のとおりである。

 

@)債務者から申請に基づく方式を原則とする。但し、上記A、Bの場合は、性質上、債務者から申請させるのは相当でない。また、放棄事由のいずれの場合においても債務者が行方不明の場合があり得る。これらの場合は別途の手続きによるものとする。

 

A)申請書の書式、添付すべき書類について予め一覧表の形で整理しておく。

 

B)決裁権者から決裁を得たら、主債務者と連帯保証人に対し、配達証明付内容証明郵便で通知を発送して、その旨通知する。放棄の意思表示は相手方に到達しなければ効力を生じない(民法97条T)からである。但し、債務者若しくは保証人が行方不明の場合には通知は不要である。この場合、法律上、債権は存続することになるが、会計上、欠損処理をして差し支えない。

 

C)放棄の場合、全額弁済を受けたわけではないが、借用書など債務者等から入手した書類の扱いについては、完納した場合に準じた事務処理を行うこととする。

 

D)放棄した場合には、議会に報告することが義務づけられているので、報告書の書式を定めておく。その場合の記載事項には、少なくとも下記事項については、これを盛り込むべきである。

 

・債務者の氏名、住所及び生年月日

 

・連帯保証人の氏名、住所及び生年月日

 

・放棄年月日

 

・放棄対象債務の種類

 

・放棄対象債務額

 

・放棄事由(債務者と保証人のそれぞれについて)

 

・放棄を相当と判断した具体的理由

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