公務における支出とは?支弁、資金前渡、概算払いの違いを解説
1 支出とは
@ 地方公共団体の様々な需要を満たすために行う現金の支払を「支出」と言います。
A 支出は、歳出予算に基づき、その予算科目に従って行わなければなりません。
B 支出は、最小の経費で最大の効果を上げられるようにしなければなりません。
C 振替収支の支出は支出に含まれます。一方、雑部金の払出しや一時借受金* の償還のための現金の支払は、経費の支弁ではないので、支出には入りません。
*一時借受金=地方公共団体が、一会計年度において、歳計現金(歳入金から歳出金を差し引いた、予算執行中の残額)が不足した場合に、その不足分を補うために借り入れる金銭
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2 支出の原則
@ 各会計年度の歳出は、その年度の歳入をもって充てなければなりません。
→ 【自治法】第208条(会計年度及びその独立の原則)第2項
A 支出は、長の命令がなければすることができません。
B また、長の命令があっても、法令、予算に違反していないこと、債務金額が確定し、履行期限が到来していることを確認してからでなければ、支出することができません。
C 支出は、正当債権者* のためでなければできません。
D 支出は、特例として、資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払、口座振替払の方法ですることができます。
【自治法】(支出の方法)
第232条の4 会計管理者は、普通地方公共団体の長の政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができない。
2 会計管理者は、前項の命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない。
【注釈】「確認」とは、契約書等の書類確認、物品等の現物確認、実地調査等による確認をいいます。
【自治法】(支出の方法)
第232条の5 普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない。
2 普通地方公共団体の支出は、政令の定めるところにより、資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払又は口座振替払の方法によってこれをすることができる。
*《用語解説》正当債権者
「正当債権者」とは、法令や契約に基づき、地方公共団体に対して一定金額の請求権を持つ者をいいます。
請求権の発生は、その請求の対価である給付義務が既に完全に履行されたことを要件とします。
また、「債権者のために」とは、支出の効果が債権者に及ぶようにとの意味を指します。
従って、債権者から正規に代金受領の委任を受けた者、転付命令のあった場合の差押債権者に対する支払と資金前渡、隔地払(送金払)の資金交付、口座振替による支払も含まれます。
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3 支出の禁止と制限
公金の支出には、次の禁止と制限があります。
@ 公金は、宗教上の組織・団体の使用、便益、維持のために支出できません(【憲法】第89条)。
A 公金は、公の支配に属しない慈善、教育、博愛の事業に対して支出できません(【憲法】第89条)。
B 地方公共団体は、公益上必要がある場合においては、寄付、補助をすることができます。
→ 【自治法】第232条の2(寄付又は補助)
(注)公益上の必要性の判断は、長、議会が個々の事例に即して認定することになりますが、全くの自由裁量行為ではなく、客観的に公益上必要であると認められるものでなければなりません。
4 命令機関の支出事務の概要
(1)? 支出負担行為
支出の前に、支出負担行為を行わなければなりません。
(2)? 収支命令者の責任と確認事項
収支命令者は、支出命令を発するときは、配当予算の有無を確認し、支出の内容が法令や契約に違反する事実がないかどうかを調査しなければならない責任があります。
支出命令を発するに当たっては、おおむね次の事項を確認します。
@ 予算の目的に適合するか。
A 歳入歳出を混合していないか(総計予算主義の原則)。
B 会計年度の所属区分を乱さないか(会計年度独立の原則)。
C 支出すべき時期が到来しているか。
D 正当債権者であるかどうか(名義、肩書、代表者の役職名の表示)。
E 支払金に関し、時効は完成していないか。
F 宗教団体や特定の事業に対する公金の支出の禁止に触れないか(【憲法】第89条)。
G 寄付や補助が公益上必要なものか。
H 部分払(工事では出来高払)の金額が法令の制限を超えていないか(既済部分に対する代価の10分の9を超えることができません。)。
I 資金前渡、概算払、前金払の使途が法令で許されているか。
J 必要な書類が整備されているか。
K 金額に計算違いがないか。
L 支出科目などは正しいか(款、項、目、節、細節、事業名、年度など)。
M 必要な印鑑が押印されているか。