無資力要件とは?認定資料は何が必要なのか|自治体の債権管理
1 資力要件
免除や債権放棄、履行延期の特約等の適用要件として、@)「著しい生活困窮状態」、A)「無資力又はこれに近い状態」、B)「当該債務の全額を一時に履行することが困難であるときというのがあるが、これらの要件はどのような資料に基づいて認定すればよいのであろうか。
これら認定資料は法規に特に定めがないので、各所管の運用に任されているが、公平性、適正性を担保するため、各所管において標準化することが望ましい。
ところで、個人破産の場合、各裁判所において、申立人の資産・負債の状況や収支の状況を把握するため、申立書を定型化し、申立書に資産目録、直近2ケ月分の家計全体の状況(家計の収支明細を明らかにするもの)、債権者一覧表を添付させることにしている。
個人破産の手続開始要件は支払不能である(破産法15条T)。支払不能とは、資力が欠乏しているために、即時に弁済すべき債務全般にわたって、一般的に、継続的に弁済できないと認められる客観的な状態をいう。上記免除等とは適用要件が異なるが、各所管が認定資料を標準化するのに参考となると思われるので、以下、地方裁判所における個人破産の場合の申立書に添付すべき資産目録の記載内容及び添付資料を紹介する(但し、以下の項目の中には、免責判断のための資料も含まれている。)。
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2 個人破産の申立ての際に必要とされる資産目録の記載内容と添付資料
(1)申請時に所持している現金の額(20万円以下の場合は記載不要)
(2)申請時に所持している預貯金の額(解約の有無及び残額の多寡にかかわらず各通帳の表紙を含め、過去2年以内の取引きの明細がわかるように全ページの写しを提出)
(3)公的扶助の受給(受給している場合には、受給証明書を提出)
(4)申請時の報酬・賃金の額(最近2ケ月分の給与明細及び源泉徴収票又は過去年度分の確定申告書の写し、これらを用意できない人の場合は課税(非課税)証明書を提出)
(5)仮に申請時に、勤務先から退職ないし役員退任した場合に支払われるであろう退職金又は退職慰労金の見込額(使用者又は申立代理人作成の退職金計算書を提出)
(6)貸付金、売掛金がある場合には、その額(相手の名前、金額、発生時期、回収の見込みの有無及び回収できない理由を記載する。)
(7)積立金等(社内積立、財形貯蓄、事業保証金)がある場合には、種類、金額、支払開始時期
(8)保険がある場合には、保険会社名、証券番号、解約返戻金の額(保険証券及び解約返戻金計算書の写しを提出)
(9)有価証券(手形・小切手、株券、社債)、ゴルフ会員権などを所有している場合には、種類、取得時期、担保差入れの有無、評価額(証券の写しを提出)
(10)自動車、バイクなどの車両を所有している場合には、車名、購入金額、購入時期、年式、所有権留保の有無、評価額(自動車検査証又は登録事項証明書の写しを提出)
(11)過去5年間において、購入価格が20万円以上の物(貴金属、美術品、着物など)がある場合は、品名、購入金額、取得時期及び現在の評価額(時価)
(12)過去2年間に処分した評価額又は処分額が20万円以上の財産があるときは財産の種類、処分時期、評価額、処分額、相手方、使途(処分に関する契約書・領収書の写し、不動産を処分した場合には、処分したことがわかる登記簿謄本を提出)
(13)不動産を所有している場合には、不動産の所在地、種類など(登記簿謄本を提出、オーバーローンの場合は定型の上申書とその添付資料を提出)
(14)相続財産があるときは、被相続人名、その者との続柄、相続時期、相続財産の内容
(15)事業設備、在庫品、什器備品等があるときは、品名、個数、購入時期、評価額(評価額の疎明資料を提出)
(16)その他、上記に該当しない財産(破産管財人の調査によって回収が可能となる財産、敷金、過払金、保証金等)があるときは、相手方、金額等