金銭会計上の端数計算の方法

金銭会計上の端数計算の方法

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金銭会計上の端数計算の方法

日本では、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和六十年法律第四十二号)第三条第一項の規定により、特段の取り決めがない限り、債務の支払いに1円未満の端数が生じた場合は、四捨五入することとされています。しかし、同条第二項の規定により、国、地方公共団体等(「国等」といいます。)が収納する金額と支払う金銭に端数が生ずる場合は、国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律(昭和二十五年法律第六十一号。以下「端数計算法」といいます。)が適用されることとなります。このことから、民間とは違う方法で端数計算を行うため注意が必要です。

 

1 端数計算の原則

端数計算法第二条により、端数計算は原則として次に掲げる方法によります。
(1) 国等が持つ債権で、金銭の給付を目的とするもの(以下この章において「債権」といいます。)は、確定金額に1円未満の端数が生ずる場合は、その端数を切り捨てます。ただし、その確定金額の全額が1円未満であるときは、その全額を切り捨てます。

 

例 市は、施設条例に基づき、市民のB氏が、午前中のみ使用するため、利用手続を行ったホール(18,510 円/午前中)の利用料金の請求を行った。その際、B氏は、ホール利用時に一定額の入場料を徴収することとしているため、同条例に基づき、規定利用料金の7割5分を増徴して請求を行った。この場合の請求すべき利用料は次のとおり求めます。なお、この例において、付帯設備使用料等その他徴収すべき料金はないこととします。

 

次に掲げるとおり「あ」で計算をした確定金額に、1円未満の端数が生ずるため、「い」のとおり端数である 0.5 円を切り捨てし、請求すべき利用料金を算出します。
あ 確定金額の計算 18,510/午前中 × 1.75 = 32,392.5 円
い 端数計算 32,392.5 円 → 32,392 円

 

(2) 国等が負う債務で、金銭の給付を目的とするもの(以下「債務」といいます。)は、確定金額に1円未満の端数が生ずる場合は、その端数金額を切り捨てます。
ただし、その確定金額の全額が1円未満であるときは、その全額を切り捨てます。

 

(3) 国等の間における債権又は債務の全額が1円未満であるときは、その全額を切り捨てます

 

2 分割収納・分割支払の場合における端数計算の特例

国等が持つ債権又は負う債務の確定金額を2回以上の履行期限を定め、一定の金額に分割して分割金額を支払うこととされている場合であって、次に掲げるような場合は、全て最初の履行期限に係る分割金額に合算するものとします。また、履行期限ごとの分割金額の全額が1円未満である場合は、その全額を最初の金額に合算します(端数計算法第三条)。

 

例 1万円の物品を3回の履行期限を定め、分割金額を支払う場合

 

上の例であると、履行期限ごとの分割金額に 0.3 円の端数が生ずるため、下のように最初の履行期限である第1回に端数を合算します。また、当然ですが、このように計算した結果、第1回に1円未満の端数が生ずれば、端数計算の原則のとおり取り扱います。

 

回数 誤った分割金額 正しい分割金額
1回目 3,333.3 円 3,334 円
2回目 3,333.3 円 3,333 円
3回目 3,333.3 円 3,333 円
合 計 10,000.0 円 10,000 円

 

(2) 履行期限ごとの分割金額の全額が1円未満である場合は、その全額を第1回に合算します。

 

3 端数計算法の適用除外

次に掲げるものには、この法律は適用されません。
(1) 政府契約の支払遅延防止等に関する法律に基づく遅延利息
同法により計算した遅延利息の全額が 100 円未満であるときは、遅延利息を支払うことを要しません。また、その金額に 100 円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第八条から第十条まで)。

 

(2) 個別法の規定により徴収する延滞金
@ 個別法の具体例
・ 健康保険法第百八十一条第一項
・ 船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第百三十三条第一項
・ 厚生年金保険法第八十七条第一項
・ 国民年金法第九十七条第一項
・ 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第二十八条第一項(失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(昭和四十四年法律第八十五号)第十九条第三項において準用する場合を含みます。)

 

A 個別法に規定される端数計算の内容
あ 個別法の規定により延滞金を計算するに当たり、徴収金額に 1,000 円未満(国民年金法にあっては 500 円未満)の端数があるときはその端数を切り捨てます。
い 督促状に指定した期限までに徴収金を完納したとき、又は法の規定により計算した金額が 100 円未満(国民年金法にあっては 50 円未満)であるときは、延滞金は徴収しません。
う 延滞金の金額に 100 円未満(国民年金法にあっては 50 円未満)の端数があるときは、その端数は切り捨てます。

 

(3) 国税(その滞納処分費を含みます。)並びに当該国税に係る当該還付金及び過誤納金(これらに加算すべき還付加算金を含みます。)

 

(4) 地方団体の徴収金並びに地方団体の徴収金に係る過誤納金並びに還付金(これらに加算すべき還付加算金を含みます。)

 

(5) 固定資産等所在市町村交付金又は国有資産等所在都道府県交付金

 

(6) その他次に掲げる国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律施行令(昭和二十五年政令第七十七号)第二条に規定するもの。
@ 地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の規定により交付すべき地方交付税及び同法第十九条第五項の規定により納付すべき加算金
A 政党助成法(平成六年法律第五号)の規定により政党に対して交付すべき政党交付金
B 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百七条第三項の規定により納付すべき特許料及び同法第百九十五条第五項及び第六項の規定により納付すべき手数料
C 実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第三十一条第三項の規定により納付すべき登録料及び同法第五十四条第四項及び第五項の規定により納付すべき手数料
D 意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第四十二条第三項の規定により納付すべき登録料及び同法第六十七条第四項の規定により納付すべき手数料
E 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四十条第四項(同法第四十一条の二第五項及び第六十五条の七第三項において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき登録料及び同法第七十六条第四項の規定により納付すべき手数料
F 工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(平成二年法律第三十号)第四十条第四項の規定により納付すべき手数料
G 国税収納金整理資金に関する法律施行令(昭和二十九年政令第五十一号)第二十二条又は第二十三条の規定による一般会計、交付税及び譲与税配付金特別会計又は東日本大震災復興特別会計の歳入への組入金で同令第四条の二第一項各号に掲げる国税に係るもの(同条第二項から第四項までの規定により計算する場合に限ります。)

 

4 端数計算の実際

(1) 基本的な計算例
契約や法令に別の定めのないときは、1円未満の端数金額の処理は、最後の請求金額を出す段階で行います。
@ 商品の小計と個別の商品ごとに値引き率が設定されている場合の計算
この時点では、端数の処理は何も行いません。また、小数点第3位以下がある場合は切り捨てて、小数点第2位までを算出します。
また、個別の商品ごとに値引き率が設定されている場合は、個別の商品の単価に数量を乗じて算出された価格に値引き率を乗じて、その金額を算出します。
個別の商品の単価に数量を乗じて得た金額(個別の商品ごとの値引きを踏まえた金額をいいます。)の積の小計の金額を算出します。

 

商品名 単価 数量 価格
ネジ 4.18円/個 1,255個 5,245.90円
3.95円/個 8,667個 34,234.65円
小計 39,480.55円

 

A 総額に対する値引き率が設定されている場合の計算
総額に対する値引き率が設定されている場合は、@で算出した商品の小計の価格に値引き率を乗じてその金額算出します。小数点第3位以下の金額が生ずる場合は、小数点第3位以下の金額を切り捨て、小数点第2位までの金額を算出します。
39,480.55円 × 値引き率7% = 36,716.9115円

39,480.55円 × 値引き率7% = 36,716.91 円

 

B 消費税等相当額の額の計算
消費税等相当額の計算は、確定金額に消費税等の税率を乗じます。端数計算法の規定に従うと、端数計算は、確定金額に適用するため、消費税等の税率8%を乗じて得た額の端数はここでは調整しません。また、小数点第3位以下がある場合は切り捨てて、小数点第2位までを算出します。
36,716.91円 × 0.08 = 2,937.3528円

36,716.91円 × 0.08 = 2,937.35 円

 

※ 参考
民間企業における事業者と消費者に対して価格を表示する場合は、国税庁では次のとおり通知をしており、地方公共団体の計算とは相違しています。
民間における取引では、消費税等の額を算出する際に、1円未満の端数が生ずることとなった場合の端数計算の方法は、四捨五入や切り捨てのいずれで処理しても良いとされ、一定の定めがありません。そのため、見積書等を確認する際は、この点も踏まえ確認してください。

 

事業者が消費者に対して価格を表示する場合の取扱い及び課税標準額に対する消費税額の計算に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)(平成26年課消1−5)(抄)
「なお、総額表示の義務付けに伴い税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときは、当該端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても差し支えなく、また、当該端数処理を行わず、円未満の端数を表示する場合であっても、税込価格が表示されていれば、総額表示の義務付けに反するものではないことに留意する。」

 

C 端数計算
@からBまでで算定した金額の合計額を確定金額として、端数計算を行います。
商品の小計(値引き後) 36,716.91円
消費税等相当額(8%) 2,937.35円
合計額 39,654.26円(※)
端数計算 △0.26円
請求金額 39,654 円
※ これを端数計算において確定金額といいます。

 

(2) 複数回の履行後にまとめて請求書を処理する契約となっている場合
自動車のガソリン供給契約のように、複数回の債務の履行を受け、それに対してまとめて支払いを行う場合の端数計算は次のとおり。

 

納入期間のガソリンの単価は、消費税込みで125円/L。次の表にある納入月日に次のとおり納入を受け、1か月分を取りまとめて請求書が提出された。この場合の端数計算は、納入月日ごとに端数計算はせず、1か月の合計金額を確定金額とし、当該確定金額を端数計算し、支払金額とします。
なお、次の表の計算を端数計算法によらず納入月日ごとに端数計算をすると、1円支払金額が少なくなってしまいます。正しく計算し、支払いをしましょう。

 

納入月日 納入量 金額
4月3日 30.0L 3,750.00円
4月10日 29.5L 3,687.50円
4月20日 31.5L 3,937.50円
4月27日 33.5L 4,187.50円
合計 15,562.50円
支払金額 15,562 円

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