裁判所からの債権差押命令等を原因として供託をする場合

裁判所からの債権差押命令等を原因として供託をする場合

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裁判所からの債権差押命令等を原因として供託をする場合

債権差押命令又は債権仮差押命令(以下「債権差押命令等」といいます。)に係る供託は、次のとおりとなります。
このような事務は、経常的に発生する事務ではなく、又、正確で迅速な事務処理を要求されます。
このことから、債権差押命令等に係る事案に接した主管課は、法務係、契約係、審査係、出納係等と十分に連絡を取り、この事務を処理する必要があります。

 

債権差押命令等と供託

基本的な知識

市が裁判所により、第三債務者として債権差押命令等の送達を受けた場合、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百四十五条第一項の規定により、この命令により差押えの効力が及ぶ部分(※)の金額は、当該債権差押命令等に係る債務者(以下「差押債務者」といいます。)に支払いできなくなります(※2)。

 

※ 「差押えの効果が及ぶ部分」とは、市が差押債務者に負う債務の金額のうち、市が命令を受けた当該債権差押命令等の金額以内の金額であって、市が負う債務の金額のうち、民事執行法第百五十二条による差押禁止債権を除く部分(この部分のうち、同法第百五十三条第一項により執行裁判所が差押命令を発した部分を除きます。)をいいます。

 

※2 裁判所の命令に従わず、差押えの効力が及ぶ部分に係る債務を市が差押債務者に支払ってしまった場合でも、民法第四百八十一条第一項の規定により、当該債権差押命令等を申し立てた債権者(以下「差押債権者」といいます。)から請求があった場合は、市は当該差押債権者に、その請求に係る金額を支払わなければなりません(※3)。

 

※3 このような場合、民法第四百八十一条第二項の規定により、市はこの差押債務者に求償権を行使することができます。しかしながら、債権差押命令等を受けるような差押債務者から、その全額を回収することができない可能性が高いことは、容易に想定できるため、債権差押命令等がある場合は、その支払先に十分注意してください。

 

債権差押命令等に対する市の対応

市が裁判所により、第三債務者として債権差押命令等の送達を受けた場合、他に競合する債権差押命令等がなければ、民事執行法第百五十五条第一項及び第百五十六条第一項の規定により、市は第三債務者として、次に掲げるいずれかの対応を執ることとなります。
なお、供託を執った場合、市は、民法第四百九十四条の規定により、債権差押者に対する、債務の弁済義務を免れます。

 

ア 債権差押命令等が送達された日から1週間を経過した後に、差押債権者からの取立てに応じ、債権差押命令等の金額(差押債権者の債権及び執行費用の額をいいます。)を、当該差押債権者に市が直接支払う。

 

イ 民事執行法第百五十六条第一項の規定により、差押えの効力が及ぶ部分の金額を、その債務の履行地の供託所に、執行供託に係る権利供託を行う。さらに、その事情を執行裁判所へ届け出る。

 

債権差押命令等が競合した場合の市の対応

市が裁判所により、第三債務者として債権差押命令等の送達を受け、差押えの効力が及ぶ部分の金額について、差押えに応じ、民事執行法第百五十七条第一項による取立訴訟の訴状の送達を受けるときまでの間に、当該差押えと同じ範囲の金額について、別の債権差押命令等を受けた場合、当該別の債権差押命令等が、まだ差し押さえられていない部分の金額(※)を超えて発せられたものである場合は、同法第百五十六条第二項の規定により、市は必ず当該金額の全額に相当する金額を、その債務の履行地の供託所に、執行供託に係る義務供託を行い、その旨を執行裁判所に届け出る義務が生じます。
このことにより、市は、民法第四百九十四条第二項の規定により差押債権者に対する債務の弁済を免れることとなります。
※ 当該債務の金額から、既に差押えられた金額を控除した後の金額をいいます。

 

債権差押命令等を原因とする供託金の支出手続に必要な文書

債権差押命令等を原因として、支出命令の取消し等がされた契約は、執行されるまでは、財務会計システム上、未執行の契約として管理されています。
そのため、当該契約の債務について供託を行うには、次に掲げる(あ)から(き)までの書類を起票等した上、会計室に送付します。
また、(く)は前渡金として供託金を受領するときに、(け)は供託後の精算時に必要となります。
なお、実際の起票等に当たっては、事前に会計室に相談するようにします。

 

(あ) 支出命令書(供託用のもの)

債権者は供託者である市長とします。また、供託の方法に応じた支出命令を起票します。その支出命令は、供託所の窓口で、直接現金で供託する場合(※)は、資金前渡の方法により起票します。
また、日銀小切手(※2)により支払いを受ける場合は、この支出命令書に、「日銀小切手で振り出し」という付箋を付け審査係に送付します。

 

※ 供託の方法は、供託所の窓口で直接現金で支払う方法のほか、現金書留、保管金払込書(供託所で入手します。ただし、東京法務局等取り扱っていない供託所もあります。)、口座振込又は現金の代用とすることができる日銀小切手のいずれかにより供託することができます。
しかしながら、現金以外の方法は、供託所に事前相談することはもちろんですが、供託は、スピードとタイミングが重要となる場合もあるため、それぞれの供託目的に合った方法による供託方法を検討してください。

 

※2 「日銀小切手」とは、日本銀行を支払人として、政府、地方公共団体、銀行等が振り出した小切手をいいます。
市が日銀小切手で支払うには、支払予定日の前日から起算して、1週間前(その日が休日に当たる場合はその前日)までに、出納係に事前協議し、指定金融機関宛ての日銀小切手振出依頼書を提出する必要があります。

 

(い) 契約書、支出命令書・請求書とその添付書類

会計室から返送を受け、執行不能となった支出命令書及び請求書その他添付書類をいいます。
会計室から返送を受けていない場合などこれらの書類がない場合は不要です。

 

(う) 支出方法変更原議

債権差押通知等により、民事執行法第百五十六条第一項又は第二項の規定に基づき、その支出先が元の債権者ではなくなったこと及び権利供託又は義務供託を行うことを決定した旨の文書管理システム等による原議(※)を起案します。

 

(え) 執行不能額通知書

(い)の支出命令書とともに会計室から送付された書類で、支出命令の取消し等により、返送された支出命令書とともに、会計室から送付された書類をいいます。
支出命令の取消しがされていなければ不要です。

 

(お) 債権差押通知書等の写し

 

(か) 供託書

記載済みのものをいいます。
供託書は、供託所で取り寄せます(※)。
また、供託書の記載例は、法務省のホームページにおける供託書等の記載例等を確認してください。

 

※ 供託書の取り寄せ方法は、次に掲げる方法があります。
@ 供託所に実際に訪問して入手する方法
A 供託所に郵送で申請して入手する方法
郵送申請の場合は、どの種類の供託書が何枚必要かを、任意の用紙に記載し、切手を貼付した返信用封筒(A4判以上の大きさの封筒とします。)を同封し、供託所へ郵送し、請求することとなっていますが、郵送前に念のため供託すべき供託所にも直接確認してください。

 

(き) その他関係書類

その他支出命令書の審査に必要な書類があれば、それを送付します。

 

(く) 領収書(派出窓口用)

供託金を前渡金で受領する場合は、会計室出納係窓口に提出する必要があります。
支出命令書を審査係に送付する時点は不要です。

 

(け) 精算書(資金前渡)

供託金を前渡金により受領した場合は、資金前渡受者は会計規則等の規定により、供託金を供託した日の翌日から5日以内に前渡金支払精算書を作成しなければなりません。
また、精算書に添付すべき領収書は、供託所では交付しません。
このことから、この領収書については、会計規則等の規定により、領収書を提出することが困難な場合に該当するものとして、支払証明書及び供託正本の写し(供託後に供託所の供託官から交付される供託済みを証する書類の写しをいいます。)を添付します。
また、この供託正本の写しは、実際に供託したことを客観的に証明するため、領収書の代用(※)として添付しますが、領収書の代用として必要のない個人情報等(※2)は、読めないよう被覆処理をして添付します。

 

※ 「領収書の代用」として必要な情報とは、支払金額、その日付け、支払内容、支払の相手方に係る氏名等の情報、公印等をいい、実際に供託し
たことを客観的に証明するために必要な情報をいいます。

 

※2 この「個人情報等」とは、原則個人情報保護条例等に規定する個人情報及び領収書の代用に必要のない情報で、個人情報とまではいえませんが、被覆処理すべきと資金前渡受者が考えるその他の情報をいいます。ただし、審査係の審査の過程で確認を必要とする情報であって、合理的な範囲の情報は除きます。

 

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