破産手続を原因として破産管財人へ支払う場合
破産手続に係る破産管財人へ支払う場合は、次のとおりとなります。
このような事務は、経常的に発生する事務ではなく、又、正確で迅速な事務処理を要求されます。
このことから、破産手続に係る事案に接した主管課は、法務係、契約係、審査係、出納係等と十分に連絡を取り、この事務を処理する必要があります。
破産と破産手続
基本的な知識
破産とは、債務者が支払不能にあるとき等をいいます(※)。
つまり、弁済期にある債務を持つ債務者が、弁済又は継続的に弁済することができない状態にあることをいいます。
また、破産手続とは、債務者等の申立てにより、裁判所が、当該債務者が支払不能の状態にあると認める場合、裁判所が選任する破産管財人により、債務者の財産を包括的に管理し、及び換価処分を行い、全ての債権者に法に基づき配分することを目的として行われる手続をいいます。
※ 債務者が法人にあっては、支払不納又は債務超過(債務者がその債務につき、その財産をもって完済することができない状態)にあるときをいいます。
破産手続の開始とは
破産をする場合は、個人・法人を問わず、破産法(平成十六年法律第七十五号)第十八条に基づき、債権者又は債務者(※)が、裁判所に破産手続開始の申立てを行い、同法第十五条の規定による裁判所の決定により、破産手続を開始の決定がされることにより開始されます。
開始後、裁判所では、破産管財人を選任します。
これを「管財事件」といいます。
また、この破産手続開始の申立てをした時点で、当該債務者(以下「破産者」といいます。)の破産財団(※2)から、破産手続に必要な費用(事務手数料や破産管財人の報酬等をいいます。)を支弁できない場合は、同法第二百十六条の規定により破産手続開始と同時に廃止されることとなります。これを「同時廃止事件」といいます。
破産手続が開始されると、同法第三十二条第一項及び第三項の規定により、裁判所は、破産手続開始の公告及び通知を行います。
この通知は、裁判所が選任した破産管財人(※3)、破産者、知れている破産債権者(※4、※5)、知れている財産所持者(※6)等に行います。
この通知は、同時廃止事件の場合は、「破産開始手続開始・同時廃止決定通知」となります。
※ 法人にあっては、破産法第十九条の規定により、法人に応じ、理事、取締役、業務を執行する社員等についても申立てをすることができます
※2 破産財団とは、破産手続開始時に破産者が保有していた破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産をいいます。
※3 破産管財人は、「管財事件」において裁判所が選任します。この際、破産者の保有する財産や債権債務の一切は、破産財団に属すものとされ、その管理及び処分をする一切の権利を有するものとなります。
※4 知れている破産債権者とは、破産規則(平成十六年最高裁判所規則第十四号)第十四条第二項により破産者が破産の申立ての際に裁判所に提出した債権者一覧表等により確認できた破産債権者(※5)をいいます。
※5 破産債権者とは、破産手続開始前の原因に基づいて生ずる債権(破産債権をいい、破産手続によらず優先的に弁済が受けられる債権(破産法では財団債権といいます。)を除いた債権をいいます。)を持つものをいいます。以下同じです。
※6 知れている財産所持者等とは、破産財団となった財産の所持者及び破産者に対して債務を負担する者をいいます。
市が破産者の破産手続の開始を知る
市が破産者の破産手続の開始を知るには次に掲げる場合が考えられます。
ア 裁判所からの破産手続開始の官報を確認した場合
イ 市が知れている財産所持者等又は破産債権者として裁判所から破産手続開始の通知があった場合
ウ 破産管財人から知れている財産所持者等として連絡があった場合
エ 破産管財人から市に破産債権者として連絡があった場合
オ 破産者から市へ自主的に連絡があった場合
カ 弁護士から破産手続開始前に介入通知があった場合
相殺について
破産法第六十七条では、破産者の破産財団に債務を負担する者と破産債権者が同一の場合、民法第五百五条第一項により、当該債務と当該債権の相殺が認められています。
ただし、破産手続開始後の原因により、債務を負担したとき等破産法第七十一条による相殺の禁止に抵触する場合を除きます。
このため、市が、破産者の破産財団に債務を負担している場合は、破産手続開始前の原因に基づいて生ずる債権が市にないか検討する必要があります。
また、相殺可能な債権を失念し、債務の支払時においても相殺の意思表示をせず、破産財団に弁済した場合は、相殺適状の原則(※)により、その後気付いても相殺することはできません。
※ 相殺適状の原則とは、相殺時に当事者同士(ここでは市と破産財団をいいます。)に有効に成立する対立した債権が存在していることなどをいいます。
相殺適状は、破産に限らず、相殺時に相殺適状の要件を満たしていなければ相殺することはできません。
このことは、最高裁判所第三小法廷判決(昭和54 年7月 10 日判決。昭和 53 年(オ)547 号)でも「相殺適状は、原則として、相殺の意思表示がされたときに現存することを要するのであるから、いつたん相殺適状が生じていたとしても、相殺の意思表示がされる前に一方の債権が弁済、代物弁済、更改、相殺等の事由によつて消滅していた場合には相殺は許されない、と解するのが相当である。」としています。
破産財団に属する金銭の支払いについて
破産財団とすべき金銭は、破産管財人の指定する方法により支払います。
これは、一般に破産管財人名義の銀行口座に口座振替の方法により振り込みします。
また、破産管財人名義の口座名義は、一般に「破産者○○○○破産管財人弁護士△△△△」とする例が多いです。
破産手続開始により破産財団に弁済する場合
債権者の破産手続開始を原因として、支出命令の取消し等がされた契約は、執行されるまでは、財務会計システム上、未執行の契約として管理されています。
そのため、当該契約の債務について破産財団に弁済を行うには、次に掲げる(あ)から(き)までの書類を起票等した上、会計室に送付します。
(あ) 支出命令書
債権者を破産管財人弁護士△△△△とします。
(い) 請求書及び支払金口座振替依頼書
破産管財人が請求し、及び依頼したものをいいます。
(う) 破産管財人選任証明書の写し
破産規則(平成十六年最高裁判所規則第十四号)第二十三条第四項に規定する証明を附したものに限ります。
※ 破産管財人選任証明書とは、破産管財人に選任されたことを証する証明(破産規則第二十三条第三項に規定する証明)をいいます。
※2 破産規則第二十三条第四項に規定する証明とは、その職務のために使用する破産管財人の印鑑を裁判所に提出した場合において、当該破産管財人が裁判所へ印鑑の証明を請求したときに、破産管財人選任証明書に、当該請求に係る印鑑が、裁判所に提出された印鑑と相違ないことを裁判所が証明したものをいいます(破産規則第二十三条第四項)
(え) 支出命令書・請求書とその添付書類
会計室から返送を受け、執行不能となった支出命令書及び請求書その他添付書類をいいます。
会計室から返送を受けていない場合などこれらの書類がない場合は不要です。
(お) 支出方法変更原議
破産法の規定により、破産手続開始を理由に、破産者に係る債務を破産者の破産財団に支払うことを決定した文書管理システムによる原議を起案
します。
(か) 破産手続開始通知の写し
当該債権者が破産手続を開始したことが判る通知の写しをいいます。
(き) その他関係書類
その他支出命令書の審査に必要な書類があれば、それを送付します。