資金前渡、概算払、前金払、口座振替払など|公務員の支出方法を解説
1 支出の特例とその意義
支出は、地方自治法の規定により、債権者ためでなければ支出できないため、債権者と支出金額が確定し、支払時期が到来してから、債権者に支払うこと等支出の原則等が定められています。
しかし、同時に現実の事務事業を円滑に執行するため、(1)の原則等に対し、(2)の特例が認められています(地方自治法第二百三十二条の五)。
(1) 支出の要件又は支出方法の原則
ア 債権者確定の原則
支出は、正当債権者のためになされるものであることから、支出すべき債権者が確定していることを原則とします。
イ 債務額確定の原則
支出は、支出すべき債務額が確定していることを原則とします。
ウ 履行期到来の原則
支出は、その履行期が到来していることを原則とします。
エ 支払手続経由の原則
支出は、支払手続を経てすることを原則とします。
オ 直接支払の原則
支出は、正当債権者に直接支払うことを原則とします。これは間接的に支払うことで生ずる事故を防止するためとなります。
カ 支払場所特定の原則
支出は、地方公共団体の出納機関の窓口(市では会計室窓口をいいます。)又は指定金融機関において支払うことを原則とします。これは、支払場所を特定することで、特定しないことによる事故を防止するためとなります。
(2) 支出の例外
アからカまでの欄は、上記「(1) 支出の要件又は支出方法の原則」のアからカまでの原則をいいます。(地方自治法第二百三十二条の五第二項、地方自治法施行令第百六十一条から第百六十五条の二)
※支払方法ごとの手順や詳細は、支払方法のリンク先を参照してください。
支払方法 | 内容 | 根拠 | ア | イ | ウ | エ | オ | カ |
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資金前渡 | 場所的関係、経費の性質等から通常の支出の方法によっては、事務に支障を及ぼす経費について、会計管理者が普通地方公共団体の職員(資金前渡受者をいいます。)に概括的に経費の金額を交付して現金支払をさせる支払方法をいいます。 |
地方自治法施行令 |
× | × | × | ○ | × | × |
概算払 | 債権関係が発生しているが、履行期が未到来であり、債務金額が確定していない経費について概算をもって支出する方法をいい、事後に精算を伴うものとなります。 |
地方自治法施行令 |
○ | × | × | ○ | ○ | ○ |
前金払 | 債権者及び債務金額は確定しているが、経費の性質上、相手方の義務履行前にその債権金額の範囲内でする支出方法をいい、事後に精算を伴わないものとなります。 |
地方自治法施行令 |
○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
繰替払 | 地方税の報奨金、競輪、競馬等の開催地において支払う報奨金、勝者、勝馬等の的中投票券の払戻金、証紙取扱手数料、歳入の徴収又は収納の委託手数料等をそれぞれの歳入金から一時繰り替えて使用する支出方法をいいます。この場合でも、帳簿上は歳入・歳出が別々に執行されたものとして記帳します。 |
地方自治法施行令 |
○ | ○ | ○ | × | ○ | × |
隔地払 | 隔地の債権者に支払いをする必要があるときに、支払場所を指定し、指定金融機関に必要な資金を交付して送金の手続をさせ、その旨を債権者に通知して行う支払方法 |
地方自治法施行令 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
口座振替払 | 指定金融機関、指定代理金融機関その他普通地方公共団体の長が定める金融機関に預金口座を設けている債権者から口座振替の方法による公金の支払いを希望するものについて、金融機関に通知して、債権者の預金口座に振替える支払方法(現在一般債権者に支払う方法としては、一般的な方法となっています。) |
地方自治法施行令 |
○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ |
※ 「支出の要件及び支払いの原則との関係」の欄中、○は要件又は原則を満たしていること、×は満たしていないことを示します。