支出の意義、歳入歳出予算、禁止および制限事項とは|公務員金銭会計

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支出の意義、歳入歳出予算、禁止および制限事項とは|公務員金銭会計

1 支出の概念

「支出」(地方自治法第二条・第二百三十三条、民法第五百五条から第五百十二条まで)とは、最小の経費で最大の効果をあげられるように(地方自治法第二条第十三項)、地方公共団体の各般の需要を満たすための経費(当該普通地方公共団体の事務を処理するために必要な経費その他法律又はこれに基づく政令により当該普通地方公共団体の負担に属する経費をいいます。)の支弁(同法第二百三十三条)を、その歳出予算に基づき、その予算科目に沿って行われる現金の支払の一連の行為をいいます。また、この一連の行為とは、支出の原因となるべき契約その他の行為から会計管理者の支払いまでをその範囲としています。

 

@ 振替収支命令書による振替整理は、現実には現金の支払を伴いませんが、地方公共団体の各般の需要を満たす経費であるため、支出とみなします。
A 民法の規定による相殺は、現実には現金の支払いを伴いませんが、地方公共団体の拡販の需要を満たす経費であるため、支出とみなします(民法第五百五条から第五百十二条まで)。
B 歳入歳出外現金の払出しは、地方公共団体の各般の需要を満たさない経費でないため、支出とみなしません。

 

2 歳入歳出予算と収入について

「歳入歳出予算」とは、一定期間の収入及び支出の見積り、つまり、現金(現金に代えて納付することができる証券を含みます。)の収支の予定を、一定の形式により長が編成し、議会の議決を経たものをいいます(地方自治法第二百十一条)。
しかしながら、同じ予算でも歳入と歳出とでは、議会の議決の効力に大きな差があります。
「歳入予算」は、収入の見積りであり、議決予算に計上されていない収入であっても、全て収入可能です。収入において、議決は執行機関を拘束しません。一方「歳出予算」は、議決予算に計上されていない経費又は議決予算の計上された額を超えた経費は、1円たりとも支出が認められません。
議決により歳入歳出予算が成立することで、初めてその地方公共団体が歳出の義務を負い、又は支払をすることができる権限が与えられたこととなります。

 

3 支出の原則

(1) 支出は、その会計年度の歳入をもって充てなければなりません(地方自治法第二百八条第二項)。
(2) 支出は、長の命令がなければすることができません(地方自治法第二百三十二条の四第一項)。
(3) 支出は、長の命令があっても、法令、予算に違反していないこと、債務金額が確定し、その履行期限が到来していることを会計管理者が確認(書類確認、現物確認等)してからでなければ、支出することはできません(地方自治法第二百三十二条の四第二項)。
(4) 支出は、「正当債権者」(※)のため(※2)でなければできません(地方自治法第二百三十二条の五第一項)。
※ 「正当債権者」とは、法令や契約に基づき、地方公共団体に対して一定金額の請求権を持つものをいいます。原則この請求権は、法令や契約に基づく給付が、完全に履行されたことを要件として発生します。
※2 「正当債権者のため」とは、支出の効果が、正当な債権者に及ぶようにという意味があります。従って、債権者から正規に代金受領等の委任を受けたもの、転付命令(※3)のあった場合の差押債権者に対する支払い、資金前渡の資金交付、隔地払(「送金払」又は「為替等による支払」ともいいます。)の資金交付及び口座振替による支払も含まれます。
※3 「転付命令」とは、差押債権者の申立てにより、支払いに代えて差し押さえられた金銭債権を当該差押債権者に弁済させる旨の裁判所の命令をいいます。これにより、当該金銭債券に係る第三債務者が弁済すると、本来の債権者への弁済義務が免れます(民事執行法第百五十九条及び第百六十条)。
(5) この外支出は、次の原則に従う必要があります。ただし、これらの原則に従えない特別な事情がある場合は、支出の特例により支出することができます。
ア 債権者確定の原則
支出は、正当債権者のためになされるものであることから、支出すべき債権者が確定していることを原則とします。
イ 債務額確定の原則
支出は、支出すべき債務額が確定していることを原則とします。
ウ 履行期到来の原則
支出は、支出に係る履行期が到来していることを原則とします。
エ 支払手続経由の原則
支出は、支出に係る支払手続を経てすることを原則とします。
オ 直接支払いの原則
支出は、正当債権者のためになされるものであり、間接的に支払うことで生ずる事故を防止するため、債権者に直接支払うことを原則とします。
カ 支払場所特定の原則
支出は、事故防止のため、地方公共団体の出納機関の窓口(会計室窓口をいいます。)又は指定金融機関市派出所で支払うことを原則とします。

 

4 支出の禁止と制限

支出には、次の禁止と制限があります。
(1) 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出することはできません(憲法第八十九条)。
※ 宗教上の組織の使用、便益又は維持のため支出とは一般的に、「目的効果基準」に照らしてその適否を判断します。具体的には、「行為の目的が宗教的意義をもち、かつ、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるか否か。」で判断します。具体例としては次に掲げるものとなります。しかしながら、「習俗的行為」と「宗教的行為」との明確な判断は今なお困難なものがあります。
・ 玉串料の奉納・・・玉串料の奉納は宗教的意義を有し、この支出は地方自治体が特定の宗教団体を支援したと判断され、違憲(愛媛県玉串料訴訟)
・ 地鎮祭の謝礼等・・地鎮祭の謝礼等は、宗教的意義を持たず習俗的行為でと判断され、合憲(津地鎮祭訴訟)
※2 行政実例では、「私立学校や社会福祉施設等について、その学校法人等が、普通地方公共団体により法に基づく特別な監督を受ける場合は、公の支配に属するものとして、当該普通地方公共団体が補助することができる。」としています(行政実例(昭和43.19.7自治行第 86 号・昭和 45.4.4自治行第 26 号))。

 

(2) 地方公共団体は、公益上必要(※)がある場合においては、寄附又は補助(※3)をすることができます(地方自治法第二百三十二条の二)。
※ 「公益上必要」があるかの判断は、個々の事情に応じ、長がその裁量で判断します。
また、議会も予算審議を通じて一定の判断をします。しかし、これらの判断は、全くの自由裁量とはならず、客観的にも、その支出が公益上必要であると認められなければ違法となります(名古屋地方裁判所判決(昭和 43 年 12 月 26 日(昭和 40 年(行ウ)32号))。
※2 「公益」とは、一般的に「社会一般の利益」、「社会における不特定かつ多数の人々の利益」といえますが、これを一義的に決定することは困難であり、結局、その時代的、社会的、地域的諸条件等のもと、個別具体的に決定せざるを得ません。また、裁判所の判決の中には、公益性の判断に際し、補助等の対象となる主体の経営状況を考慮し、放漫経営を行う等が見られる場合に、公益性を否定するものがあります。
※3 「寄附」と「補助」の区別については明確な基準はありません。いずれも、反対給付を求めない地方公共団体からの一方的な出損を意味するものと解釈できます。また、これには、相手方に有利な条件での貸付金の支出等を含むとの裁判の判決例もあります。

 

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