雑部金とは|現金と有価証券の取扱いの違い 公務員の財務会計

雑部金とは|現金と有価証券の取扱いの違い 公務員の財務会計

スポンサードリンク

雑部金とは|現金と有価証券の取扱いの違い 公務員の財務会計

1 雑部金とは

「雑部金」とは、債権の担保として徴するもののほか、普通地方公共団体の所有に属さない現金又は有価証券であって、法律又は政令の規定により、市が一時的に保管しているものをいいます。なお、法律又は政令の規定とは、個別の法令によるもののほか、地方自治法施行規則第十二条の五の規定のとおり次の@からBまでをいいます。
@ 普通地方公共団体が債権者として債務者に属する権利を代位して行うことにより受領すべき現金又は有価証券
A 災害により被害を受けた者に対する見舞金に係る現金又は有価証券
B 公立学校(学校教育法第一条に規定する大学及び高等専門学校に限ります。)における奨学を目的とする寄附金を原資として交付された現金又は有価証券
また、雑部金とは現行の地方自治法に規定された定義ではありません。雑部金は、同法第二百三十五条の四第三項に規定する「歳入歳出外現金」と同条第二項に規定する有価証券を合わせたものと同意義として定義しています。
雑部金という名称は、昭和三十八年の地方自治法改正前の規定に由来しますが、地方公共団体により、その財務規則において、そのまま雑部金と規定し、用語を使用している例が多くあります。
多くの地方公共団体では会計規則等において、同条第二項及び第三項の歳入歳出外現金と有価証券を総称して雑部金とし、又、有価証券は公有財産等に属する有価証券と区別するため「保管有価証券」としてそれぞれ定義しています。
このことから、特段の理由がない限り、次の表に掲げるとおり、同条第二項に規定するとおり(市の所有に属さない)現金を「歳入歳出外現金」、又、(市の所有に属さない)有価証券を「保管有価証券」とし、これらを総称して「雑部金」としています(地方自治法第二百三十五条の四、地方自治法施行令第百六十八条の七)。

 

表1 現金の区分(黄色い部分が雑部金)


歳入歳出現金(歳計現金)
歳入歳出外現金(市の所属の属さない)

 

表2 有価証券の区分(黄色い部分が雑部金)

有価
証券

有価証券(公有財産・基金)
保管有価証券(市の所属の属さない)

※ なお、地方自治法には雑部金という総称規定はありません。また、同法には保管有価証券という定義はなく、(債権の担保として徴するもののほか、普通地方公共団体の所有に属しない)有価証券と規定されています。

 

2 雑部金の区分

雑部金は、歳入歳出外現金と保管有価証券に分類し、かつ、次に掲げるとおり区分して整理しなければなりません。ただし、特に必要がある場合は、会計管理者に協議の上、新たに区分を設けることができます。また、その理由により、会計室出納係と別途協議の上、次に掲げる区分の下部に細目を加えることはできます。

 

(1) 保証金

@ 入札保証金
A 公売保証金
B 契約保証金
C 住宅保証金
D その他補償金

 

(2) 保管金

@ 源泉徴収所得税
A 市区町村民税
B 都道府都民税
C 徴収受託金
D 団体保険料
E 都道府県費歳出保管金
F 都道府県費歳入保管金
G その他保管金

 

(3) 公売代金

@ 差押物件公売代金
A 競売配当金

 

(4) 遺留金

@ 遺留金

 

(5) その他雑部

@ 市民税、県民税一時借受金
A その他雑部

 

3 雑部金の基本的取扱い

(1) 会計年度所属区分

雑部金の会計年度所属区分は、その受払を執行した日の属する会計年度となります。具体的には、会計室で納入済通知書を収入計上した日又は支出命令書を執行した日の属する会計年度で整理されます。このため、出納整理期間の適用はありません。

 

(2) 受払処理

歳入歳出外現金には、歳入・歳出、収入・支出という概念がなく、「受入」と「払出」という概念で処理されます。しかし、会計事務の一環として処理を行うので、収入と支出とに関する会計規則等の規定が準用されます。
なお、歳入歳出外現金は、その受け入れに調定や収入通知、その払い出しに支出負担行為や戻入決定という行為は必要ありません。しかし、その受払について、事務執行等の意思決定のため、文書管理システムによる原議の作成及び決裁は必要となります。ただし、その支出命令書等の審査に必要な送付文書として、当該原議を会計室に参考に送付する必要はありません。
また、収入と支出とに関する会計規則等の規定が準用されることから、その受払処理には、一般の歳入歳出現金と同様に、財務会計システム等を使用して処理を行います。
受入は、会計規則等において雑部金には調定及び収入通知の規定がない場合、納付書を単独で起票(※)した場合や、支出命令書等の起票による納付書を起票した場合、その納付書により収入します。また、収入元の債権者へ払い戻す場合は支出命令書(歳入還付)を、それ以外の債権者に払い出す場合は支出負担行為兼命令書を必要書類などとともに、会計室に送付し、それぞれ支出することになります。

 

(3) 源泉徴収所得税の取扱いについて

財務会計システムに設定されている雑部金のうち、源泉徴収所得税は会計室が所管しています。これは、市全体の源泉徴収所得税を会計室で税務署へ払い込むためです。このため、出力された納付書の下部の部課名は会計室と表示されています。
なお源泉徴収所得税の受け入れ及び年末調整などにおける源泉徴収所得税の個別の還付事務は各主管課で行うため、この源泉徴収所得税の科目は全ての所属で使用できるようにしてあります。

 

(4) 市に帰属する雑部金

雑部金のうち、市に帰属すべきものが生じたときは、歳入徴収者は、これを歳入に収入する手続を執ります。歳入に収入する場合は、雑部金の科目から歳入科目に振替整理の方法により行います

 

(5) 雑部金の翌年度繰越し

会計年度末において、雑部金に残金があるときには、これを翌年度に繰越さなければなりません。実際の繰越し処理は、3月 31 日の収入計上・執行業務の終了後、会計室でシステムにより一括して行います。また、繰越結果について、部長又は室長は、「雑部金繰越確認書」を提出することとなります。実際は、当該確認書案を会計室から送付するので、確認の上、部長公印を押印の上、会計室に送付します。
なお、3月中に旧会計年度分として作成した支出命令書で、4月になってから会計室に到着したものは旧会計年度として執行はできません。
この場合、支出命令書を取り消した後、新会計年度分として再作成します。なお、4月に指定金融機関から会計室に到着した納入済通知書は、会計室で新会計年度の相当科目に読み替えて処理を行います

 

 

4 保管有価証券

(1) 保管有価証券とは

「保管有価証券」とは、雑部金のうち、有価証券をいいます。これは、公有財産等に属する(市の所有に属するものをいいます。)有価証券と区別して定義しているためです。

 

(2) 保管有価証券の受入れ又は払出し

首長の通知がなければ、会計管理者は保管有価証券の出納はできません。そのため、保管有価証券を受入れ又は払い出しをしようとするときは、収支命令者は、会計管理者に対し、保管有価証券納付書又は保管有価証券還付請求書を交付し、会計管理者に提出して行うこととなります。
また、会計管理者は、保管有価証券を受け入れるときは、その証券と引換えにその納入者に対して保管有価証券領収書を交付します。保管有価証券を還付するときは、その還付者に受け入れた際に交付した保管有価証券領収書の末尾に領収の旨を記載の上、押印させ、これと引換えに証券を還付します。
このほか、利札の還付を求められた場合、収支命令者は、審査の上、その旨を表示した支出命令書を発行し、会計管理者に送付して還付します。この場合において、会計管理者は、領収書を提出させた上で利札の還付をします(地方自治法施行令第百六十八条の七。

 

(3) 保管有価証券の整理

保管有価証券は、額面金額によって整理します。また、会計管理者は、保管有価証券を区分ごとに整理袋に納め、確実に保管しなければなりません。
この外、会計管理者は、保管有価証券の保管上必要があると認めたときは、確実な金融機関に保護預けをすることができます。

 

(4) 送付を受けた現金等の整理

収支命令者は、現金又は有価証券の送付を受けたときは、これに差出人の住所及び氏名を記載した送付書を添え、直ちに会計管理者に送付(※)し、次の取扱いをします。
@ 送付を受けた会計管理者は、現金・有価証券受払簿に登録の上、受入保管し、収支命令者の通知により払出します。
A 相当期間を経過しても@の通知がない場合は、会計管理者は、その処理について収支命令者に照会します。
B 会計管理者は、送付を受けてから三箇月以上経過しても内容が不明であるときは、収支命令者に雑部金に収納する手続を執らせなければなりません。
※ 収支命令者は、現金又は有価証券の整理が困難であると認めるときは、会計管理者の承認を得て、所属の金銭出納員に上の@からBまでの取扱いをすることができます。

 

(5) 入札保証金及び公売保証金の取扱いの特例

@ 入札保証金及び公売保証金の取扱いについて
次に掲げる規定により処理するものとします。
ア 総務部の金銭出納員は、入札保証金納付書により、現金(この場合の小切手は、銀行振出又は銀行の支払保証のあるものに限ります。)又は有価証券の納付を受けたときは、入札保証金領収書及び納付証明書を納入者に交付し、その現金又は有価証券を確実に保管するものとします。
イ 当該入札に係る開札が終了したときは、総務部長は、納付証明書に入札保証金を還付すべき旨を記載して押印し、これを直ちに総務部の金銭出納員に送付しなければなりません。
ウ イの送付を受けた総務部の金銭出納員は、領収書と引換え又は口座振替により入札保証金を還付しなければなりません。ただし、落札者(公売にあっては最高価申込者をいいます。)に係る入札保証金については、総務部長は、落札者確定通知書を総務部の金銭出納員に送付し、有価証券を除き、入札保証金を歳入歳出外現金として指定金融機関に払込みしなければなりません。

 

A 支出命令書のみなし規定
@(3)の還付に当たり、@(2)の納付証明書は支出命令書とみなします。これに伴い、その総務部の金銭出納員が属する主管課において、適切な保存年限、行政文書管理規則に沿った保管をしなければなりません。
適切な保存年限とは、一般に支出命令書等は5年としているため、5年以上保存する必要があります。

 

(6) インターネットを利用して行う入札又はせり売りによる公売に係る公売保証金

この公売は、実際には、インターネット公売があります。
当該公売は、市単独でシステムを構築することは困難なことから、この公売保証金の取扱いは、地方公共団体だけでは定めることが困難なことが想定されます。このため、多くの地方公共団体では公売保証金の取扱いを詳細には定めず、「インターネット公売ガイドライン」等で別途定めて運用をしています。当該ガイドラインは、特定の公売システム(yahoo!!など)における官公庁オークションを想定したガイドラインとなっているため、これ以外で、インターネットを利用した公売に参加する場合は、別途会計管理者に協議をしてください

 

(7) 市に帰属する雑部金

雑部金のうち、市に帰属するもの、つまり、歳入歳出現金に属すべきものが発生したときは、室長又は課長は、歳入に収入する手続を執らなければなりません。

 

(8) 雑部金の繰越し

年度末において雑部金があるときは、会計管理者はその金額を翌年度に繰り越します。
この場合、会計管理者は公金振替書を作成し、指定金融機関に交付します。
また、部長又は室長は、当該繰越しに当たり、雑部金繰越確認書を翌年度4月20日(この日が休日の場合はその前日)までに会計管理者に送付しなければなりません。
なお、当該確認書は、例年であれば翌年度4月初旬に会計管理者から提出の依頼が通知されます。

 

(9) 雑部金の取扱いに係る準用規定

(1)から(7)までに解説したもののほか、雑部金の取扱いは収入又は支出に関する規程を準用します

スポンサードリンク

トップへ戻る