公務員の金銭会計を分かりやすく解説!支出命令、科目、資金前渡など
決算とその流れは?
決算とは、一会計年度の歳入歳出予算の執行実績を表示した計算表のことで、いうなれば数字で表した行政活動の実績です。
これにより、その年度の行政運営の適否が判断され、また、今後の予算編成や執行に当たっての指針ともなります。
決算は、議会の議決(認定)事項の1つです。具体的な流れは以下のようなイメージです。
@会計管理者が 「決算書」、「付属書類」を首長に提出。
A首長が決算書、付属書類、「基金運用状況調書」を監査委員に提出。
B監査委員が審査を行い「意見書」を首長に戻す。
Cまた首長が決算書、付属書類、基金運用状況調書、意見書、「主要施策の成果」を議会に回す。
D議会が認定する
E首長は住民へ決算の公表をし、都道府県知事へ報告をする。
詳しくはこちら:決算とは|自治体の決算事務の流れを分かりやすく解説
金銭会計でよく使う帳簿
会計管理者の帳簿は、次のとおりです。
(1)? 現金出納簿兼収支報告書
(2)? 歳入簿
(3)? 歳出簿
(4)? 歳出予算差引簿
(5)? 前渡金・概算払整理簿
(6)? 小切手整理簿
(7)? 歳入歳出外現金受払簿
(8)? 保管有価証券受払簿
(9)? 現金・有価証券受払簿
(10) 委託証券整理簿
(11) 委託証券合計整理簿
(12) 基金整理簿
(13) 有価証券(公有財産等)受払簿
そのほか、収支命令者、金銭出納員、資金前渡受者の帳簿もあります。帳簿の作成方法も押さえておきましょう。
詳しくはこちら:金銭会計でよく使う帳簿を解説|予算差引簿などの帳簿の使い方
資金管理のための大口収支報告&検査
予算は、その年度の歳入によってその年度の歳出が賄われれば、資金繰りはベストです。
しかしそれは理想論で、実際には支出に見合った収入が常にあるとは限りません。
そのため常に収入と支出の予定を把握し、資金不足とならないように区の収支状況を管理する必要があります。このことを「資金管理」といいます。
会計室は、この資金管理のため前年の収支データを基に、2ヶ月前に収支予定計画を立てます。
前月にはさらに詳細な収支予定計画を立てるため、各課から翌月分に係る大口収支(1件500万円以上)を報告してもらい、より精度の高い計画を立てます。
首長の行う検査、会計管理者の行う調査・検査もこの資金管理のために行います。
詳しくはこちら:金銭会計での収入と支出の管理方法|大口収支通知、会計監査など
公有財産等に属する有価証券と財産の記録管理のやり方
公有財産及び基金に属する有価証券の受入れをしようとするときは、受入通知書を作成する必要があります。
また、公有財産、物品、債権及び基金に係る財産に関する調書を3月31日現在で作成し、翌年度4月30日までに会計管理者に提出します。
詳しくはこちら:公有財産等に属する有価証券と財産の記録管理のやり方
振替収支と雑部金
振替収支とは、科目相互間で同一金額の移動を行う場合に、実際の現金の収納や支出を行わずに書類上の収支の手続によって、現金の出納を行ったのと同様の効果をもたらす経理方法をいいます。
例えば振替収支が2つの課にまたがる場合は、「振替元」の決裁用と「振替先」の決裁用の2枚が同時に作成されます。
雑部金とは、自治体が債権の担保として徴収し、あるいは法令の規定により自治体が一時的に保管しているにすぎない現金又は有価証券で、自治体の所有に属さないものををいい以下のものがあたります。
@ 保証金(例:入札保証金)
A 保管金(例:源泉徴収所得税)
B 公売代金(例:差押物件公売代金)
C 遺留金
D その他雑部(例:住民税一時仮受金)
雑部金の年度区分は、その受払を執行した日の属する年度になります。また出納整理期間の適用はありません。
雑部金とは?科目更正、振替収支などの処理方法を分かりやすく解説
支払遅延防止法の14日、30日ルール
支払遅延防止法の正式名称は「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」です。
第5条→完了&検査は、工事は14日、その他は10日以内の日。(起算日「相手方から給付を完了した旨の通知を受けた日」)
第6条→対価の支払は、工事代金は40日、その他30日以内の日。(起算日「相手方から適法な支払請求書を受理した日」)
支払の遅延により、債権者に「苦しい資金繰り」を強いることにもなり、額によっては、「経営の危機」をも有り得るためこのように定められています。
支払遅延防止法の定める「30日以内」とは、金融機関の休業日や区役所の閉庁日も含まれますので、実質的には月平均20日程度と考えておかなければなりません。
詳しくはこちら:支払遅延防止法の請求書の支払期限は?15日30日ルールの起算日
私人に資金を渡し、支出委託をすることができる場合
以下の経費については、私人に必要な資金を交付して、支出事務の委託をすることができます。 (根拠【自治令】165条の3)
ア 外国で支払をする経費
イ 遠隔の地又は交通不便の地域で支払をする経費
ウ 報償金その他これに類する経費
エ 非常災害のため即時支払を必要とする経費
オ 諸払戻金及びこれに係る還付加算金
詳しくはこちら:私人に対する支出事務の委託ができる場合とは?公務の支出の特例
口座振替で支払う場合
自治令第165条の2条により、会計管理者は口座振替の方法により支出をすることができることになっています。
債権者の指定できる振込先金融機関の範囲は、契約銀行と為替取引のある金融機関店舗です。
債権者からの申出は、支払金口座振替依頼書によって行います。また、口座振替を依頼することを確認できる書類によることもできます。
口座の指定は財務処理では支出命令書の作成時に直接入力するか、MT等で口座振替データを作成します。
詳しくはこちら:自治体が口座振替払ができる場合とは?公務の支出の特例と仕組み
窓口払いで支払う場合
地方公共団体は支出にあたり、小切手もしくは現金で支払うこともできます(自治法第232条の6)
審査が終了した支出命令書に基づいて、債権者に対して次のとおり支払を行います。
1 債権者に請求書と同一の印鑑を押した領収書を提出させ、債権者であることを確認して、支払証(番号札)を交付します。
2 小切手は、支払証と引換えで出納係窓口で渡します。
3 現金は、指定金融機関派出所が支払証と引換えに渡します。
※30万円以上の支払は小切手払を原則となります。
また官公署等に対する支払金で、所定の納入通知書、払込書、振込書などによって支払金を払込む方法を「払い込み」といいます。
支出命令書を作成する際には、支払方法を「払込み書等による支払」とし、かつ納入通知書等に記載された納期限を「執行希望日」に入力します。支出命令書に納入通知書等をクリップで留めて会計室に送付します。
詳しくはこちら:会計管理者の支払事務とは|入出金、支払証などの事務を解説
繰替払で支払う場合
繰替払とは、歳入の収納現金を経費の支出に一時繰り替えて使用する方法です。
繰替払をすることのできる経費の範囲は、収入事務を委託した経費に限定されています(自治例第164条)。具体的には以下の5つです。
1 地方税の報奨金 当該地方税の収入金
2 競輪、競馬等の開催地において支払う報償金、勝者、勝馬等の的中投票券の払戻金及び投票券の買戻金 当該競輪競馬等の投票券の発売代金
3 証紙取扱手数料 当該証紙の売りさばき代金
4 歳入の徴収又は収納の委託手数料 当該委託により徴収又は収納した収入金
5 その他、経費の性質上繰り替えて使用しなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの 当該普通地方公共団体の規則で定める収入金
詳しくはこちら:繰替払とは?地方自治法の繰り替えの使い方を分かりやすく解説!
公務員が良使う支払方法のまとめ
公務員が実務上よく使う支払方法の違いは簡単にまとめると以下の通りになります。
@資金前渡・・・・・債権者と債務金額がともに未確定か、いずれかが未確定の場合
A概算払・・・・・債務金額未確定で支払期前払いの場合
B前金払・・・・・債務金額が確定し、支払期前払いの場合
C繰替払・・・・・歳入予算からの支払
D送金払・・・・・間接払の場合
E口座振替・・・・・間接払の場合(一般的な支払方法となっていますが、法上では特例です)
F支出事務の委託・・・・・間接払の場合