金銭会計上の「収入」の意味とは
1 収入の概念
(1) 収入とは
「収入」とは、地方公共団体(普通地方公共団体及び特別地方公共団体をいいます。以下同じです。)の各般の需要を満たすための支払の財源となるべき現金を収納する一連の行為をいいます。また、この行為は、広く調定から収納までをその範囲としています。
@ 現金の外、現金に代えて納付することができる証券(※)を含みます。
A 財産の処分によって生ずる現金や各会計間の繰入れによる現金を含みます。
B 現金ではない、土地、物品や収入証紙等の受け入れは収入に含みません。
C 現金であっても、税務署に支払うために保管している源泉徴収所得税のような市の所有に属さない保管金やその年度中に償還しなければならない一時借入金は、その性質上、地方公共団体の支払の財源となるべき現金とはならないため、収入に含みません。
※ 「現金に代えて納付することができる証券」とは、原則として次に掲げる証券に限られます(地方自治法第二百三十一条の二第三項及び地方自治法施行令第百五十六条第一項)。ただし、地方税法等の規定による地方税の納付はこの限りではありません。
@ 小切手(先付小切手を除きます。)
A 無記名式の国債若しくは地方債又は無記名式の国債若しくは地方債の利札
B 振替払出証書及び為替証書
収入の概要とその権限を有する機関を表にすると、次に掲げるとおりとなります。
執行機関の事務 |
収入 |
徴収 | @調査決定 |
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A収入の通知 | |||
出納機関の事務 |
B収納 |
※ 収入には、主に次に掲げる事務があります。
@ 調査決定 収入の原因、納付義務者、納入すべき金額等を調査し、決定する事務
A 納入の通知 納付義務者に対し、その理由、金額、納入期限等を通知する事務
B 収納 現金等を実際に受領する事務
(2) 公法上の収入と私法上の収入について
収入には、公法上の収入及び私法上の収入があります。
「公法上の収入」とは、法令等公法による処分等に基づいた原因により成立し、又は発生する債権(以下「公債権」といいます。)に係る収入をいいます。例えば、地方税(地方自治法第二百二十三条)、分担金(同法第二百二十四条)、使用料(同法第二百二十五条)、旧慣使用の使用料及び加入金(同法第二百二十六条)、手数料(同法第二百二十七条)などの収入があります。
「私法上の収入」とは、民法等私法による契約等に基づいた原因により成立し、又は発生する債権(以下「私債権」といいます。)に係る収入をいいます。例えば、物品売払金、行事参加料、広告掲載料、建物借料、損害の弁償金などの収入があります。
また、公営住宅使用料等のように、公法上の収入に見えても、私法上の収入とされるものがあることには注意が必要です。
(3) 収入と歳入について
収入に良く似た言葉に「歳入」という言葉があります。
これは収入とは異なり、一定の期間を意識した意味を持ちます。つまり、その年度に含まれる全ての収入をいいます。
また、同じように「歳出」は、その年度に含まれる全ての支出をいいます。
収入と歳入、支出と歳出は、普段その意味を明確に意識して使い分けしていないことも多くあるとは思いますが、このような違いがあることは知っておいてください。
すべて「収入」 | ||
---|---|---|
@調査決定 | A納入通知 | B収納 |
地方公共団体の各般の需要を満たすための支払の財源となるべき現金を調定し、納入通知を送付し、収納されるまでの行為をいいます。
歳入 | |
---|---|
令和○年度に収納された現金全体 |
地方公共団体の各般の需要を満たすための支払の財源となるべき現金であって、その年度中に収納された現金全体をいいます。
2 歳入歳出予算と収入について
「歳入歳出予算」とは、一定期間の収入及び支出の見積り、つまり、現金(現金に代えて納付することができる証券を含みます。)の収支の予定となります。また、歳入歳出予算とは地方自治法に基づき、一定の形式により長が編成し、議会の議決を経たものをいいます。
しかしながら、同じ予算でも歳入と歳出とでは、議会の議決の効力に大きな差があります。
「歳出予算」は、議決予算に計上されていない経費又は議決予算の計上された額を超えた経費は1円たりとも支出が認められず、支出において、歳出予算は執行機関を拘束します。一方「歳入予算」は、収入の見積りであり、歳入予算に計上されていない収入であっても、全て収入可能であり、収入において、歳入予算は執行機関を拘束しません。
このため、議決により歳入歳出予算が成立することにより、初めてその地方公共団体が歳出の義務を負い、又は支払をすることができる権限が与えられたこととなります。一方で収入には、議決により特段の義務を負い、又は権限を与えられるということはありません。
以上のことを含め、収入には次に掲げる原則があります。
@ 法規、契約等による収入すべき正当な権利又は根拠なく収入することはできません。
A 地方公共団体が根拠(※)なく、自ら収入を拒否し、又は権利を放棄することはできません。
※ ここでいう「根拠」とは、自ら収入を拒否し、又は権利を放棄することができる法規(法律又はこれに基づく命令若しく条例規則等をいいます。)の特別の定めや権利を放棄する旨の議会の議決(地方自治法第九十六条第一項第十号の規定による議決)をいいます。なお、法規に特別の定めがあるものの例は、法令(法律又はこれに基づく命令をいいます。)では、民法、地方税法等の時効や免除などの規定がこれに当たります。
B 歳入予算の内容やその額には拘束されず、歳入予算額以上の額を収入できます。